イヌの団体 先住権確認
求め提訴 全国初

北海道浦幌町のアイヌの団体が川でサケをとることは先住民の権利・先住権によって認められ法律などで規制されないことの確認を求める訴えを札幌地方裁判所に起こしました。代理人の弁護士によりますとアイヌの人たちによる先住権の確認を求める訴えは全国で初めてだということです。

札幌地方裁判所に訴えを起こしたのは、浦幌町のアイヌの団体、「ラポロアイヌネイション」です。漁業権を持たずに川でサケ漁を行うことは水産資源保護法や北海道の規則などで禁じられていますが、訴えによりますと原告側は、地元の川でサケをとることは先住民の権利・先住権によって認められるとして国や道に対し浦幌十勝川の河口から、4キロの間で法律などで規制されないことの確認を求めています。

さらに明治政府が漁を禁じるまでアイヌはそれぞれの集落で伝統の方法によって漁をしていたことなどを指摘し、「アイヌのサケ漁を禁止する法的な根拠は現在に至るまで全く明らかになっていない」と主張しています。

代理人の弁護士によりますとアイヌの人たちによる先住権の確認を求める訴えは全国で初めてだということです。

記者会見で、「ラポロアイヌネイション」の長根弘喜会長は「私たちアイヌがもともと持っていた権利を取り戻すための裁判だ。自分たちでとったサケで生計をたてるという目標のため頑張りたい」と述べました。

提訴について被告の国と道は、「訴状が届いていないので現時点でコメントできない」としています。

現在は行政の許可得る必要

アイヌの人たちにとってサケは大量にとれることから重要な食料であると同時にアイヌ語でカムイチェプ=「神の魚」と呼ばれるほど特別な存在とされています。

しかし、明治以降、政府により、各地で河川でのサケ漁は禁じられ、飢えに苦しむ人が出るなどアイヌの生活に大きな影響を及ぼしました。

いまでは儀式に使うため伝統的な方法で河川でサケをとることがありますが、法律と道の規則に基づき行政から許可を得なければできません。

去年、アイヌを「先住民族」と明記したアイヌ施策推進法が施行され、伝統的な漁法の継承のため、特別な配慮をするとし、手続きの緩和は図られましたが、依然として許可が必要な状況に変わりはありません。

この状況に対してアイヌの人たちからは批判する声が出てきていて先住権を訴えようと去年、紋別市のアイヌの男性があえて無許可で漁を行ったケースもありました。

その後、男性は書類送検され、不起訴処分となっています。起訴猶予とみられます。

国際社会からも指摘が出ています。おととしスイスのジュネーブで開かれた、国連の人種差別撤廃条約委員会では、日本政府に対し、天然資源や土地に関する権利が十分に保障されていないとし、改善を求める勧告を出しました。こうした中、今回の裁判は先住民の権利をどのように保障していくか、議論を呼びそうです。