下首相 外務省進言で
訪中前の靖国参拝回避

昭和63年、当時の竹下総理大臣が中国訪問を前に、外務省幹部の進言を踏まえて靖国神社への参拝を避けたうえで、その判断を絶対に口外しないよう指示していたことが、公開された外交文書で明らかになりました。

今回、外務省が公開した外交文書のうち、昭和63年3月、当時の竹下総理大臣に対する中国訪問に向けた説明の記録では、中島敏次郎・中国大使との間で中国が反発する靖国神社参拝の是非を検討したやり取りが記されています。

この中で、中島大使は「国内的に種々、困難な事情があることは十分理解しているが、訪中直前ということもあり、靖国参拝は絶対に避けていただきたい」と進言したのに対し、竹下総理大臣が、「その点はよく心得ている。ただし、絶対に外に言ってはならない」と述べています。

また、同時に公開された当時の村田良平事務次官の中国出張の報告書で、村田次官は、竹下総理大臣が中国訪問時に経済協力を打ち出す際には、「中国側が受け入れやすい表現で、謙虚な伝え方がよいと考える」と進言しています。

外交史が専門の筑波大学の波多野澄雄名誉教授は「当時、中国では、経済大国となった日本が軍事大国化するという懸念が広がっていた。靖国問題などで不安定になっていた日中関係を修復したいという意思が外務省の対応に見て取れる」と分析しています。