医療的ケア児 未来を育む支援の在り方を考える
- 2023年11月27日
最近、よく聞かれるようになった、医療的ケア児。
その名の通り生活するのに人工呼吸器やたんの吸引など、
医療的なケアが必要な子どもたちのことです。
県内にはいま、460人以上の医療的ケア児がいて
新生児医療が進み、重い病気や障がいがあっても
救える命が増えたことで、
ここ5年でおよそ2倍の人数になりました。
ただ、医療的ケア児と言っても、その範囲は広く、
寝たきりの子どももいれば、ある程度、
日常生活を送ることができる子どももいます。
今回は、糸満市に住む家族の姿をお伝えし、
どのような支援が必要とされるのかを考えていきます。
(NHK沖縄放送局キャスター 仲本奈鶴季)
糸満市に住む 医療的ケア児 あかりちゃん
糸満市に住む、あかりちゃん5歳です。
うまれつき、心臓と肺の構造に異常があり、
右の肺は機能していません。
気管を切開しているため、栄養は
チューブで直接胃に送っています。
自力で呼吸を続けられないため、24時間、
人工呼吸器とつながっています。
健康に生んであげられると当たり前のように思っていたので、ショックでした。ちゃんとできるか不安でしたけど やるしかないので。頑張っています。
日常生活に医療機器のサポートが必要な
「医療的ケア児」は、県内にいま、468人います。
(令和5年4月現在)
そのほとんどが、家族が自宅でケアを行っていて
負担が外から見えづらいのが現状です。
家族の代わりに子どもたちをケア
医療的ケア児専門施設 Kukuru+
医療的ケア児を専門に支援する
全国でも珍しい施設が那覇市にあります。
ここには、年齢や疾患もさまざまな
50人の医療的ケア児が日替わりで通っています。
医師や看護師など専門のスタッフが常駐し、
宿泊にも対応しています。
代表で看護師の鈴木恵さんです。
息子に重度の障害があり、
自身も医療的ケアを続けてきました。
例えば夜泣きもだいたい1歳くらいになれば落ち着くよねという先の見通しがあるから頑張れるわけじゃないですか。でも医療的ケアをするお母さんたちというのは、先の見えない中で、毎日毎日2~3時間ごとに目覚めてケアをしなきゃいけないという生活を24時間365日していかなきゃいけない。一晩でもいいから、夜気にせず寝てほしい。
施設の役割は、家族に代わってケアを行うだけではありません。
施設にいる間は、たくさんの大人が話しかけます。
毎日が家の中で、行動の制限も多い医療的ケア児。
家族以外の大人とすごす時間が、
子どもたちの発育を刺激します。
人ってどんな子でも、成長しない子はいないんですけど、その成長させる場所というのがこの子たちにはすごく少ない。普通の子どもたちが経験するようなことを、普通にできるだけ経験させたい。
あかりちゃんにも 通いはじめて 変化があったといいます。
お話はできるようになりました。発語。最初の頃はしゃべれなかったので。気管切開しているとお話しできない方が多いので、よく「どこから声だしてるの?」と言われるほど。私以外の大人と接する機会も増えて 刺激は色々受けていると思うので嬉しいですね。
あかりちゃんのような医療的ケア児は年々増えています。
鈴木さんはいま、子どもたちの将来について
考える時期に来ていると話します。
いまや子どもたちが医療の進歩でどんどん長生きできるようになってきて親が先に死ぬ時代になってきています。そうなったとき、親がずっと守っているだけじゃだめだなって。社会にお友達がいたり知ってる人がいたりケアできる人がいるというのを作るということが、この子が世の中で生きていける唯一の自立だと思っている。
医療的ケア児の自立とは
あかりちゃん 地域の保育園へ
自立にむけた大きな一歩は、社会にふれることです。
ことし5月、施設と地域の社会福祉士が連携し
あかりちゃんは、糸満市の保育園に入園しました。
福祉施設から、看護師を日替わりで配置。
保育士と一緒に あかりちゃんをサポートします。
あかりちゃんにとって
ここに通う子は、はじめての同年齢のお友達。
子どもどうしでの育ちはとても大きいんですね。園に通ったら同年齢のお友達との関わりで、もののやりとりとか我慢する気持ちとか、色んな葛藤とかはじめて経験ができる。もともと保育園にいる子も、ほかの子と同じように優しく接していて、色んな子がいるというのを学ぶいい機会にもなったのかな。
あしたも来たい。
県内で、医療的ケア児を受け入れている保育園は
13市町村で20箇所。
(※2023年4月時点 5歳以下は197人 県障害福祉課)
「看護師の配置のハードルの高さ、そもそもの
看護師不足」がネックで、多いとは言えません。
そこで施設の代表の鈴木さんは、県から委託を受けて
ある取り組みを行っています。
医療的ケア児のたんの吸引をするのに必要な、
「喀痰(かくたん)吸引資格」の講習です。
保育士や学校の先生などが
最低限この資格を持っていれば、
必ずしも看護師がいなくても、県の認可によって
多くの子どもたちを受け入れることが
できるようになります。
ことし10月半ばには、国が、医療的ケア児を受け入れる
保育園に対し援助していく方針を発表するなど、
体制の整備は少しずつ進んでいます。
子どもたちの存在がもっと多くの人に
知られることも含めて、引き続き
社会づくりが重要だと感じました。