ウクライナ侵攻から1年半 託児所を開設した沖縄出身男性の思い
- 2023年08月18日
ロシアによるウクライナ侵攻から1年半。先月、ウクライナの隣国のポーランドで、現地に住む沖縄県出身の男性が、避難してきたウクライナ人のための託児所を開設しました。支援に取り組んだきっかけや思いを聞きました。
(おきなわHOTeyeキャスター 仲本奈鶴季)
子どもと避難した母親 働けるように
ウクライナから避難した子どもたちを預かる託児所は、ポーランドのカトビツェにオープンしました。運営するのは、現地の大学院に通う東優悟さんです。
ロシアによる侵攻が始まった直後から、ポーランド人の婚約者とともに、避難民の受け入れや物資の支援などを行ってきた東さん。子どもと避難してきた母親が働けるようにと、託児所を始めたといいます。
東優悟さん
難民も1年以上たって政府・民間からの支援も減ってきている中で、結局お金がなくて生活できなくて、ウクライナに帰るしかない人たちを何度も見ました。子どもたちが安心して預かってもらえる場所があればお母さんたちも仕事ができる。ウクライナに残っている父親も安心できるかなと思いました。
ポーランドには、150万人を超えるウクライナ人が避難しています。多くの親子が、父親と離れ、言葉の違う慣れない土地に身を寄せました。
お母さんは子どもたちに、「人の家に行ったり、車や電車を乗り継いで、探検するゲームだよ」と、うそをついて逃げてきたそうです。ただ、大人の不安は伝わります。子どもも不安が爆発して泣いて。自分が思っていたより、子どもたちは深い傷を負っているなと、身にしみて感じています。
物件探しや支援金集めも
東さんは、託児所開設に向けNPOを設立。現地で物件を探すかたわら、SNSで支援を募りました。集まった支援金500万円あまりをかけて、開設にこぎつけたといいます。
先月の時点で、託児所では8人のこどもを受け入れています。保育士もウクライナ人を雇い、子どもたちが言葉の壁を感じることもありません。
ウクライナから避難した母親
他のこどもたちの親と会話できるし、精神的に落ち着くことができます。外国にいる自分がひとりではないと実感できる。同じ思いの人とコミュニケーションがとれるのは重要で、快適な環境で子どもを預けながら仕事ができるのではないかと思います。
子どもたちも、すぐ東さんになついたといいます。
子どもたちめちゃくちゃかわいいですよ。きのうも鶴を折ってくれて、色を塗ってプレゼントしてくれました。公園行くよと言ったら、手をつなぎたいと言ってくれたり。初日は泣いていたのに、いまではボールを持って自分の所に来て、「ゆうご」って言えないんですよ。「ユーギユーギ」ってボールを持ってきて、すごくなついてくれています。
根底にあるのは沖縄の平和教育
東さんが支援を続けられる根底には、沖縄での学びがあるといいます。
沖縄から遠く離れたポーランドで頑張れているのは、どうしてですか。
小さい頃から平和教育を受けてきているのもあるのかな。沖縄の平和教育って熱心にやるじゃないですか。おじいちゃんからも話を聞いていましたし。おじいちゃんの話だと戦争の時に、お母さん1人で子どもたちを引き連れて戦場を逃げ回ってきたという話を聞いて。全く同じ状況なんだなと思うとなかなか放っておけないです。
苦しいなと思うことはありますか。
めちゃくちゃありますよ。俺が支援しなくても誰かが代わりにやるんじゃないかと思ったり。施設探し、改装とかやってることが正しいのかなとか、いろんなこと含めて悩みましたね。
それでも支援を続けているのはどうしてですか。
始めたからにはやめられないですし。ウクライナのお母さんたちが救われているし子どもたちの笑顔を見るとやってよかったと思います。
子どもたち 安心して暮らせるように
託児所は今後、受け入れる子どもと保育士を増やす計画です。将来的には、ポーランドにいるウクライナ人の雇用にもつなげ、施設を自立させたいと考えています。
子どもたちの人数を16人に増やそうと決まっていて。きょうもウクライナ人の方と面接して、働けそうな方を探しています。いまの出費だと、保育士の給料、給食代、家賃、光熱費。だいたい月70~80万円かかります。
継続を考えると、いまがいちばん大変ですね。
多くのウクライナ人が働けて、子どもたちが安心して暮らせる自立した施設になることが理想です。
取材後記
同世代のウチナーンチュが遠く離れた場所で支援に力を尽くしている姿に、とても誇りを感じました。運営資金を確保するため、東さんは今後、託児所を使わない時間に、キャンドル作りの教室や英語教室などを行いたいと話していました。また、運営が安定するまでは、日本からも支援をお願いしたいということです。支援の方法については、東さんのフェイスブックで確認することができます。