ページの本文へ

沖縄の特集記事

  1. NHK沖縄
  2. 沖縄の特集記事
  3. 生まれ変わった”宮古島まもる君”

生まれ変わった”宮古島まもる君”

~工業高校生がお色直しで島への恩返し~
  • 2023年10月31日

 

宮古島市のさまざまな場所で島の交通安全を見守る「宮古島まもる君」。 
全国的な知名度を誇る人気のご当地キャラクターですが、 
長年の勤続によって中にはさびたり塗装がはげたりしたものもあります。 
そんなまもる君を支えたいと地元の高校生が立ち上がりました。 
              (取材:コンテンツセンター 木村祥太カメラマン)


 

『宮古島地区交通安全協会職員兼宮古島警察署交通課職員
 宮古島まもる君』

 

大きな目、太い眉、そして南国の砂浜を思わせる真っ白な顔(若干色がついたものもありますが・・・)。
直立不動で交通の要所ににらみをきかせる「宮古島まもる君」。
誕生日は宮古(385)の語呂合わせで平成3年(1991年)8月5日、ことしで32歳です。
昼夜休みなしの立番勤務、台風の強風にも耐えるため足には400kgのおもりを装着。
階級は警視待遇巡査部長です。

設置が始まったのはおよそ30年前。
街灯や信号が少ない離島で少しでも交通事故を減らしたいと、地元警察署と交通安全協会が設置しました。交通量の多い交差点や通学路などに立ち、島の交通安全を見守っています。

宮古島まもる君オールスターズ

まもる君、すすむ君、いさお君、たかや君、こうじ君、りょうぞう君、まさお君、かずき君、たくま君、ひとし君、あつし君、きよし君、いずる君、まさかつ君、てつや君、じゅんき君、としお君、いたる君、つよし君、みつお君、そして妹のまる子ちゃん

いまではその数も21体まで増え、それぞれ名前がつけられています。
 

『島の人気者 宮古島まもる君』

まもる君は観光客にも大人気。
私たちの取材中もまもる君と一緒に写真を撮るたくさんの人に出会いました。

おもしろくて、どこ行くにもまもる君がいるから記念に撮っておこうみたいな
(東京と神奈川から来た大学生2人組)

また、お土産としても人気が高く、島の土産店ではキーホルダーや泡盛のボトル、お菓子などさまざまな形をした“まもる君グッズ”と出会うことができます。

トートバック、かわいい。クッキーもまもる君のプリントが入っているやつを買いました。いろいろ守ってくれそうなので
(大阪から来た家族連れ)

 

『長年不眠不休の立番勤務 宮古島まもる君』

長年にわたって宮古島市内各地で交通安全を呼びかけてきたまもる君。
過去には身をていして車が電柱に衝突するのを防いだこともありました。

2016年 交通事故に遭遇したまもる君(画像提供:宮古島地区交通安全協会)

この事故でまもる君は両足を切断する大けがを負い、ニュースにも取り上げられました。


台風が来ても厳しい日ざしが照りつけても不眠不休で立ち続ける日々。
さびが出たり塗装がはがれるなど、その身には激務のあとが刻まれています。

 

『お色直しだ 宮古島まもる君』

そんなまもる君をきれいに生まれ変わらせ、島に恩返しがしたい。
動き出したのは、板金塗装や機械整備を専門に学ぶ宮古工業高校の生徒たちです。

中には金属塗装の技能検定3級という専門的な資格を取得している生徒も。
彼らはこれまで学んできた知識や技術を生かして、修繕に取り組むことにしました。
作業をするのは3年生。来年の春には、ほとんどの生徒が進学や就職で島を離れます。

平良玄汰さん

そのひとり、平良玄汰さん。
宮古島出身で、まもる君は子どものころから身近な存在でした。
卒業後は、県外の専門学校に進学する予定です。
卒業を前に、多くの人に親しまれてきたまもる君をきれいにすることで、自分が育った島に恩返しができればと考えています。

平良玄汰さん

小さい頃から学校に行く時とか遊びに行ったりする時、いつもまもる君を見ていました。身に付けた知識でまもる君を直し、地域に貢献できるのはすごく嬉しいです。

この修繕活動は宮古工業高校の「地域に恩返しプロジェクト」という取り組みの一環です。
これまでも地元の小学校や公民館に手作りの自転車ハンガーやベンチを寄贈するなど、もの作りを学ぶ学校ならではの活動をしてきました。
実は2年前にも、2体のまもる君が生徒たちの手によって修繕されています。

左からいさお君、まさかつ君、まさお君   

今回修繕するのは「いさお君」「まさかつ君」「まさお君」の三体。
まずはスプレー塗装で肌をきれいに整えていきます。

 

防じんマスクをつけ、ムラがでないように注意を払いながら、全身を1体ずつ丁寧に塗装していきます。 

 

作業開始から3週間。完成まであと一歩かと思いきや、思わぬトラブルが。

生徒:「えー!これはやばくない!?」
先生:「どんなして失敗しているか見てみ」
 

スプレー塗装の出来具合を確認すると、塗料がはみ出さないように行うためのマスキングがうまくできていなかったため、塗料が垂れてしまっていました。
乾燥して固まると、またやり直しです。
固まる前に急いで拭きとりました。

 

生徒たちが特にこだわったのは1体1体違う、その表情。
手書きで描くため、オンリーワン の顔ができあがるのです。
島を見守る姿をイメージして丁寧に筆を入れていきました。 

 

『職場復帰だ 宮古島まもる君』

 

作業開始から1か月、修繕が終わり3体のまもる君が職場に戻る日がやってきました。
この日は、校内で完成式が行われ、地元の人たちにきれいになったまもる君が披露されました。
生徒たちには警察署と交通安全協会から感謝状も贈られました。 
 

クレーンで運ばれ職場に復帰

ピカピカになったまもる君の職場復帰の様子を最後まで見届けた生徒たち。 
まもる君が設置される時には自然と拍手がおき、充実した笑顔が浮かんでいました。

平良玄汰さん

宮古島で自分は育ってきたので、地域に貢献できたという思いだけでなく、ずっと残るものだと思いますし、やっぱり交通の安全につながると思うのでうれしいです。

記念撮影!

島を離れる高校生の思いも背負い、宮古島まもる君はこれからも島の交通安全を守り続けます。
宮古工業高校では、今後も機会があればまもる君の修繕作業を引き受けたいということです。
 

  • 木村祥太

    沖縄放送局コンテンツセンター カメラマン

    木村祥太

    ことしの夏、沖縄に着任。
    前任地の広島では原爆やスポーツ取材などさまざまな分野を担当。沖縄では離島の話題に関心を持って発信していきたい。

ページトップに戻る