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岡山発 日本酒の消費拡大へ 高梁市“乾杯条例”制定から10年

NHK「もぎたて!」リポート
  • 2023年12月25日

およそ10年前、全国各地の自治体で制定が相次いだ「乾杯条例」。皆さん、覚えていますか。地酒の消費拡大を図ろうと、地域の行事や宴席などで日本酒での乾杯を呼びかけるもので、この「乾杯条例」が高梁市で制定されて2023年12月でちょうど10年を迎えました。若者の日本酒離れも指摘される中、市内の酒蔵では、日本酒の消費拡大に向けた取り組みが進められています。
(岡山放送局記者 兵藤秀郷)

日本酒を取り巻く環境大きく変わる

岡山県によりますと、県内では、県を含めて6つの自治体で「乾杯条例」が制定されているということです。このうちのひとつ、高梁市で12月9日に「乾杯条例」から10年を祝う祝賀会が開かれました。地元の酒蔵3社が開催し、市内の経済界などからおよそ70人が参加しました。

(高梁市・近藤隆則 市長)
「日本酒というのは日本の食事にあうし、文化というものも伝える。ぜひ『高梁は日本酒で乾杯するんだよ』ということを広めていっていただければと思う」

祝賀会に参加した高梁市成羽町の酒造会社の社長、渡邊秀造さんは、条例が制定された10年前は、日本酒を取り巻く環境が大きく変わった時期だったと振り返ります。

(酒造会社社長・渡邊秀造さん)
「若い人の日本酒離れといいますか、アルコール飲料自体を飲む機会が少なくなっている。あるいはハイボールのような炭酸系のアルコール飲料が非常に台頭してきた時代だったので、日本酒、地酒の消費が極端に変わってきたなというような実感があった」

「海外への販路拡大」に挑戦

渡邊さんの酒造会社は明治19年創業です。成羽川の水とこだわりの米を使い、140年近くにわたって、代々、酒造りに取り組んできました。

この10年、渡邊さんの酒蔵がまず挑戦したのが「海外への販路拡大」でした。国内だけでなく海外のコンクールにも次々に挑戦し、フランスやオーストラリアなど、世界各地での受賞歴を携え、日本酒の輸出を進めました。

(酒造会社社長・渡邊秀造さん)
「『和食の世界遺産登録』というのがひとつのきっかけとなって、『日本の和食』というものに同時進行でついて動くのが日本酒だと思った」

「炭酸割り専用の日本酒」を開発

さらに、若者の日本酒離れが進む中、1年かけて新たな商品を開発し、去年から販売を始めました。「炭酸割り専用」の日本酒です。炭酸系のアルコール飲料が台頭する中、炭酸水で割ったときに、もっとも日本酒らしい味と香りが出るよう仕込みました。

(酒造会社社長・渡邊秀造さん)
「日本酒を飲むきっかけのひとつになればというのがあって、『日本酒っておいしいんだね』というところから『じゃあ、ほかの日本酒はどうだろう』と思ってもらえたらありがたい。日本酒の世界に入る入り口のお酒として、ぜひ皆さんに飲んでいただきたい」

“地酒の伝統を受け継いでいきたい”

県内の令和3年度の日本酒の消費量は4年前、平成29年度の75%にとどまるなど、厳しい状況が続いています。それでも渡邊さんは地元の酒蔵として今後も新しい挑戦を続け、地酒の伝統を受け継いでいきたいと考えています。

(酒造会社社長・渡邊秀造さん)
「『高梁の地酒で乾杯』ということを条例化していただいたというのは非常にありがたいことだと思っている。非常に厳しい時代ではあるが、いろんなことにチャレンジして、日本酒の懐の広さや幅の広さを理解していただければいいなと思っている」

  • 兵藤 秀郷

    岡山放送局 記者

    兵藤 秀郷

    札幌局岩見沢報道室などを経て2022年から新見支局 お酒は強くないものの酒蔵などを精力的に取材

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