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岡山は酒造りに適していた!県内の酒蔵を平田キャスターが突撃

NHK「もぎたて!」もぎリサーチ
  • 2023年12月27日

あなたの疑問にお答えする「もぎリサーチ」。今回は「日本酒のおいしい季節がやってきた。杜氏さんの声、酒蔵の秘密など知りたいです」という質問です。調査してみると、岡山県は酒米・雄町米の産地で、酒造りに適した環境でたくさんの酒蔵があること、そして、おいしい日本酒を造るには杜氏の巧みな技が欠かせないことがわかりました。
(岡山放送局 キャスター:平田理奈・記者:山田俊輔)

まずは基本から調べてみると…

岡山小売酒販会館

私たちがまず向かったのは「岡山小売酒販会館」です。ここは、酒類小売業者のために酒類業組合法に基づいて設立された唯一の組合。酒税の保全・酒類行政への協力と共同利益のための事業を行うことを目的としているそうです。県内の日本酒事情を聞くには間違いないと思い、「岡山県酒造組合」の貝原康郎さんにお話を聞きました。

二つ返事で取材を快諾してくれた貝原康郎さん
平田

県内には、どのくらい酒蔵があるんですか?

県酒造組合・貝原康郎さん

組合のパンフレットを見るとわかるようにみりんを造っているところもあわせて現在39の蔵がある。150を超える蔵があった時代と比べると少なくなっているが、今も37の蔵が日本酒造りをしている

「岡山県酒造組合」のパンフレット
平田

そんなにたくさんあるんですね!多くの酒蔵が残っている理由はなんですか?

県酒造組合・貝原康郎さん

岡山の場合は良質な水があるのが非常に有利だと思う。“酒造好適米”の“雄町”とか“山田錦”とかお米作りも盛んだということ。それに加えて “備中杜氏”の技があり、それらが相まっていい酒ができていた歴史がある

貝原さんの話でわかったことは、岡山県は日本酒を造るためのお米の聖地だったこと。そして、お酒造りの職人集団“備中杜氏”の存在です。日本には4つの主要な酒米があるといいます。山田錦、五百万石、美山錦、そして、岡山が全国シェアの9割を占める雄町。豊かな日照りや温暖な気候など栽培に適した岡山の気候や風土があり、それに加えて、米が溶けやすく扱いが難しい雄町を取り扱うことができる備中杜氏の技があって、今の岡山があるそうです。そうなってくると気になってくるのは、日本酒造りの現場でした。

基礎を学んで次は・・・
平田

どこか調査をする上で、おすすめの酒蔵はありますか?

県酒造組合・貝原康郎さん

真庭市の勝山にある“辻本店”というところ。酒造りが始まっているし、社長がいろいろな取り組みをしているので、ぜひ行ってみてください!

いよいよ日本酒造りの現場へ

「私、お酒が一滴も飲めないんです」と語りながら酒蔵へ
創業200年余の老舗

ご紹介いただいた酒蔵は、真庭市勝山の旭川沿いにありました。創業200年余りの老舗で、伝統的な製法に特徴があるといいます。この日は朝早くからお米を蒸す作業が行われているということで、万全の準備をして見学させていただきました。取りしきっているのは、県内初の女性杜氏・辻麻衣子さんです。

白衣を着て手を洗い備える平田キャスター
県内初の女性杜氏・辻麻衣子さん

およそ700キログラムが入る大きなかまに岡山生まれの酒米・雄町米を入れていきます。雄町の特徴は、口当たりがよく濃厚なお酒が期待できること。柔らかく割れやすいなどの難点もありますが、地元のお米にこだわっています。蒸気を出しながら、米を平らにする“抜けがけ”も蒸す時にムラを出さないための技の1つです。

700キログラムが入る大きなかまに酒米を投入
杜氏・辻麻衣子さん

蒸気が均等に上がった方がいい。蒸し上がったところは色が変わってくるので見ていたらわかる。色を見ながらまだ蒸せてないお米の上に、別のお米をかけるようにしている

炊きあがった雄町米

そして、ふたをしておよそ50分蒸すことで、きれいに炊き上がります。1か月もすれば、おいしい日本酒になります。

県内初の女性杜氏・辻麻衣子さん

(杜氏・辻麻衣子さん)
初絞りはつくり手としては非常に緊張感がある。最初に絞ったお酒を初めて飲んでいただいたが、皆さんにすごくおいしいと言っていただけたのでひと安心。日本酒ってこんなにおいしいんだと言っていただけるような発見があるようないろんなお酒を造っていきたい

販売促進でも工夫を

7代目蔵元 辻総一郎さん

この酒蔵では、日本酒の海外展開にも力を入れています。7代目蔵元で杜氏の麻衣子さんの弟、総一郎さんはここ2年続けて、パリのイベントで現地に足を運んでに日本酒を出店して魅力を訴えました。そのかいあって、2022年にはフランスで開催される日本酒のコンクールで金賞を授賞。日本酒は最近、世界的にすごく人気になっていて、この酒蔵では17か国に輸出しています。

パリのイベントの様子
蔵元・辻総一郎さん

すでにフランスに輸出している酒蔵もいれば、まだのところもあるので、現地にPRする場としてはいい場所だ。日本の文化を海外に伝えることにやりがいもある

さらに、これから取り組もうとしているのが、一度は途絶えてしまった昔ながらの製法で日本酒を造ることです。昔ながらの造り方は品質を安定させることが難しいということですが、あえてクラシックな造り方に挑戦し、“酒造りの難しさ”を1つのものづくりのストーリーにしたいとしています。

“オンリーワンの日本酒を造りたい”と語る総一郎さん

(7代目蔵元・辻総一郎さん)
岡山県は雄町というお米の一大産地。その雄町からできるお酒が岡山の地酒の魅力だと思うので、雄町のお酒を皆さんに楽しんでもらえれば。それに加えて、自分の蔵にしか住んでいない微生物で酒を造ることで、オンリーワンの日本酒を造りたい

岡山県立博物館では日本酒の特別展も

一升瓶などに張られている県内各所の酒蔵の銘柄
高さ2メートル近いおよそ300キロの木のおけ

岡山県立博物館では、県内の日本酒に関する歴史的な資料、およそ450点が展示されました。また、岡山の日本酒造りには欠かせない“備中杜氏”についても詳しい説明がされました。

学芸員・木下浩さん

(県立博物館 学芸員・木下浩さん)
岡山にはいろんなお酒があり、場所や地域、川によってもお酒の味は違う。県内では昨年飲まれたお酒のうちの2~3割くらいしか岡山の日本酒が飲まれていない。あとは、県外で造られた日本酒を飲んでいる。県外の日本酒も美味しいが、やはり岡山の料理はおいしい岡山のお酒でたしなんでいただけたら

国酒とされる“日本酒”。全国各地で造られる地酒には、それぞれに特徴があり、おいしさが異なります。ふだんから日本酒を飲まれる人はもちろん、あまり飲む機会がなかった人もいま一度、地元の日本酒に目を向けてみてはいかがでしょうか。背景を知ったうえでたしなむと、新しく味の違いに気が付くこともあるかもしれません。

取材後記

平田キャスター

お酒が全く飲めない私。県内の日本酒事情というと、雄町米の産地であることを知っているくらいでした。ですが、調査していくと「水、米、技術」の3拍子が揃っていることはもちろん、比較的多くの酒蔵が残っていることや代々受け継がれている“備中杜氏”の技術によって育まれていることなど、酒造りと密接に関わってきた古い歴史があることに驚きました。また、食文化の違いにより、北部では「辛口」が、南部では「甘口」の日本酒が好まれる傾向があるという味の違いがあることもとても興味深かったです。ただ、関係者からは「アルコール度数が高い、安価で手に取りやすいお酒が増えたなどの影響もあり、昔と比べると日本酒離れが進んでいるのを実感している」という声が多く聞かれました。岡山の雄町米から造られる日本酒は、口当たりがよく、食事にあいやすいお酒と言われています。まず、第一歩として、自分自身の周りの人に地酒を知ってもらうきっかけを作るところから始めたいと思います!

山田記者

僕の家族はみんながお酒好きなので、これまで出張や旅行で県外に行くたびに、両親に日本酒を買って帰っていました。これからもいろんな場所でお酒を買って帰ると思います。ただ僕を含め家族みんながちゃんと味わって飲んでいたかというとあやしいです。「まったりしているな」とか「スッキリしているな」程度の感想にとどまっていました。(お酒造りの関係者の皆様ごめんなさい…)そんな僕でも今回のリサーチで風土や歴史を学んだことで、よりお酒を楽しめるようになりました。これまでは「どの都道府県で造られたお酒なのか」ということだけしか気にしていませんでした。これからは、「山間部の地域の日本酒」とか「どの酒米からできている」とか「何年の歴史がある」とか、何かひと言でも情報を添えて家族と楽しみたいです。そのためにもまずは、県内だけでもたくさんの酒蔵があるので、すべての酒蔵の代表的なお酒を飲んでみて、比べることから始めます!

  • 平田理奈

    岡山放送局 キャスター

    平田理奈

    岡山局4年目 倉敷市出身 地元ならではの目線で取材中

  • 山田俊輔

    岡山放送局 記者

    山田俊輔

    2017年入局 岡山県政やスポーツなどを担当

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