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今が旬 チヌ=クロダイの消費拡大で岡山特産のり・かき守れ!

  • 2023年10月30日

岡山県など西日本の多くの地域で“チヌ”とも呼ばれているクロダイ。秋から春にかけてが旬の魚ですが、魚離れなどで漁獲量が減少し、海に生息する数の増加などで、岡山県特産ののりやかきを食べてしまう被害が増えています。県漁連などはチヌの消費を拡大して食害を減らそうと取り組んでいます。(岡山放送局記者 山田俊輔)

“チヌ”ってどんな魚?

クロダイ(画像提供:岡山県水産研究所)

チヌは西日本を中心にクロダイの別名として知られていて、タイ科に分類される魚の1種です。県によりますと、秋から春に旬を迎え、マダイと比べても味に遜色なく、透明感のある白身は見た目もきれいでコリコリした歯ごたえが刺身にもぴったりだということです。かつては高級魚としても広く知られていました。

左がチヌ  右がマダイ(画像提供:岡山県)

しかし、一般的に広く知られているマダイに比べて、見栄えで劣っていたり、骨が太く頭も大きいため、切り身にすると25%ほどしか食べる部分がなく、加工品に向いていなかったりするということです。また、食生活の変化で魚を食べる人自体が減っていることなどもあって漁獲しても価格がつかないため、近年、地元の漁業者はあえてチヌをとることをしていないといいます。

被害に悩む漁業者“チヌが少しでも減ってくれたら”

地元の漁業関係者の話では、瀬戸内海に生息するチヌは近年増加していて、チヌによる養殖のりの食害が多数報告されています。令和4年度ののりの生産枚数は、過去5年の平均を下回りました。さらにチヌは丈夫な歯を持っていることから、養殖かきも稚貝の段階で食べられています。温暖化の影響などもあり、かきの生産量も令和4年度は過去5年の平均を下回りました。漁業関係者は対策を講じていますが、被害は減らず、頭を悩ませています。

(養殖のり生産者 木林洋介さん)
自分たちの漁場では 去年くらいからチヌに対する食害がひどくなってきた。1年間で一番質の高い秋芽ののりは年末に刈り取るが、それがチヌによって食べられてしまって出荷できなかった。チヌが減らないことには防御しているだけでは追いつかない。チヌの数が少しでも減ってくれたら助かる

チヌを食べよう!高校生のアイデアで商品開発

チヌのおいしさを知ってもらい消費を拡大することで食害を減らそうと、県漁連は地元の高校生と連携してチヌの商品開発を行っています。9月、岡山市北区の岡山南高校では、20人余りの生徒が高校生ならではのアイディアを持ち寄り、商品化に向けた話し合いを行いました。

高校生の企画書

生徒たちが考えたのは、チヌのちくわの中心にチーズを差し込んだ「チーヌ」やチヌのスナック菓子、「ひとくちフィッシュフライ」など120余りの商品です。このアイデアを基に、地元企業と県漁連が2種類の練り物を試作。生徒たちが試食して意見交換しました。

丸めてくん製の香りを付けた試作品(左)棒状にした試作品(右)
高校生

チヌは悪い影響を与えているところもあるが、ただ減らせばいいだけじゃなくて、他のことにも活用して、どっちにもいい影響を与えるようにできたらいいなと思う

高校生

ここからいろいろな工夫をして、いいものになっていったら、自分も商品を手に取って、買って食べたいなと思った。いい商品を提案して、少しでもチヌのイメージを変えられたらなと思う

県漁連などは生徒たちの意見も踏まえ、開発する商品を練り物・ふりかけ・調味料・お菓子の4種類に絞り、今年度中の完成を目指して開発を進めていくことにしています。

(県漁連 山本和弥 次長)
すごく活発な意見や若い人たち特有の僕らが思いつかないようなアイデアを出してくれて、非常に楽しく商品開発の話を進めることができた。世の中にないような、また、若い人たちにも喜んで食べていただけるような商品作りを目指していきたい

チヌの消費拡大へ!JAも後押し

チヌの消費拡大に向けて、JAも後押ししています。「JA全農おかやま」はおよそ1万8000人が訪れたイベントで、地元の企業や商工会議所などと協力して、岡山の食材をふんだんに使った郷土味のちらしずし「晴寿司」を販売。岡山特産ののりやかきを食べてしまうチヌによる食害も説明しながら、消費を促しました。

購入した人

地産地消を進めたいという心意気にお金を払った。これからチヌを食べるのが楽しみだ。おいしければ、今後スーパーで見かけたときに家族にもおいしいと伝えたい

購入した人

チヌを食べたことはないので、楽しみにしている

(JA全農おかやま 小原久典 専任部長)
我々農業関係者も今が旬のものを晴寿司の上に乗せて食べてやろうという形で進めている。こんなにおいしい魚が瀬戸内海にいるんだということを再認識してもらえたらと思う

“おいしくチヌを食べて”レシピも用意

県はチヌのおいしさを広く伝えるため、プロの料理研究家の監修のもと、蒸し焼きやフライなど6種類のレシピを作り、県水産課のSNSで紹介したり、スーパーの海鮮コーナーで配布したりしています。さらに、料理教室を開いてさばき方を教える取り組みも行っています。

(岡山県水産課 石飛博敏 課長)
岡山で秋のチヌは、かつて“鍋割れのチヌ”とも言われ、おいしいからみんなが鍋をつつき、“鍋が割れる”と言われたぐらい県民になじみのある魚だ。チヌはマダイと比べても味に遜色はなく、価格は2分の1から3分の1ほどの安さだ。一方で、近年は養殖のりなどを食べてやっかい者という扱いをされるようになっている。この問題を多くの方々に認識していただいて、一緒に取り組むことが大事だと思っている。ぜひ皆さんでおいしくチヌを食べていただきたい

チヌの消費拡大で食害を減らすことができるのか。みなさんもスーパーなどでチヌを見かけた際には、ぜひ一度、食べてみて下さい。
 

  • 山田俊輔

    岡山放送局 記者

    山田俊輔

    2017年入局 岡山県政やスポーツなどを担当

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