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岡山発・東京五輪で注目のアーバンスポーツが高校の部活動に

NHK岡山「もぎたて!」リポート
  • 2023年06月22日

東京オリンピックをきっかけに人気を集めているアーバンスポーツの部活動が岡山の高校に誕生しました。自転車のBMXやスケートボードなどに取り組む「アーバンスポーツ部」です。競技を指導する教師もいなければ、キャプテンもいません。練習するかどうかも生徒に任され、とにかく自由。これまでの部活動のイメージとはひと味違ったスタイルで、練習に励んでいます。
(岡山放送局記者 山田俊輔)。

【日本トップクラスの練習施設】

約600㎡の広さに自転車BMXのジャンプ台が9つ設置された練習施設

岡山市北区にある岡山理大付属高校に2022年5月、アーバンスポーツの日本トップクラスの練習施設が完成しました。東京オリンピックでの盛り上がりを受け、アーバンスポーツを学校の“売り”にしようと、体育館のひとつをまるごと改修。広さはおよそ600平方メートルで、高さや傾斜が違う9つのジャンプ台が設置されました。自転車のBMXだけでなく、スケートボードやインラインスケートなどでも滑ることができます。

【とにかく自由な「アーバンスポーツ部」】

部員は5人 全員が1年生

この施設で練習する「アーバンスポーツ部」の部員は、自転車のBMXが3人、スケートボードが2人のあわせて5人、全員が1年生です。その練習スタイルは“とにかく自由”。決められたルールは、安全管理のために“2人以上で練習すること”だけです。服装も決まったものはなく、各自が好きなウエアを着ています。音楽をかけるのも自由で、生徒たちがその日の気分にあわせてテンションが上がる曲を選んで流しています。練習を始める時の集合や整列もなし。キャプテンや部長もいません。さらに、練習するかどうかも自己判断。取材した日は、大きな大会の直後ということもあり、コンディション調整のため、2人は自分で決めて練習をしませんでした。

【練習施設を求めて大阪から岡山へ】

大阪出身の上村竜生選手

部員の中には県外から来て寮生活を送っている生徒もいます。そのうちの1人で、自転車のBMXの上村竜生選手は大阪出身。中学までは個人で練習場所を探していましたが、自宅の近くに本格的な施設がなく、移動時間が負担になっていました。日本トップクラスの施設が岡山の高校にできたと知り、入学を決めました。 

(アーバンスポーツ部・上村竜生選手)
「すごい楽しいです。めっちゃ練習もできますし、やっぱり環境が整っているのが、一番大きいです。これからいろんな大会に出ていくなら、やっぱりこういう環境があったほうがいい」 

自転車のBMXは屋外の施設も多く、雨が降るとコースがぬれて危険なため、練習ができません。しかし、この高校の施設は体育館を改修したため、天候に関係なくいつでも練習ができます。取材した日も雨の影響でグラウンドなどには水たまりができていましたが、上村選手は気にすることなく、練習に励んでいました。

雨が降った日も練習への影響はなし!

【顧問の役割は安全管理  競技の指導は一切なし!】

生徒に教えてもらう顧問の先生

「アーバンスポーツ部」にも顧問の先生はいますが、主な役割は安全管理。競技の経験や知識はなく、指導は一切しません。上村選手の自転車のタイヤの一部が壊れているのが見つかった時の2人のやりとりはというと・・・。 

顧問  :たっちゃんはどうした?
上村選手:スポークが折れました。
顧問  :え?何が折れた?
上村選手:スポークが。
顧問  :分からん専門用語。この棒?

「BMXを全く知らずに顧問に」と語る大家先生

(アーバンスポーツ部の顧問・大家麻理子先生)
「BMXに関して全く何も知らない状態で顧問になったので、私が指示をできるようなものではありません。全くほかの部とは違うと思います。生徒がけがをしたらすぐに携帯で救急車を呼ばないといけないとか、そういうことに気を遣って見ているだけです。でも、だからこそ、選手たちを信頼していますし、練習を楽しく見させてもらっています」

練習の様子を撮影しあう部員たち

生徒たちは互いに動画を撮影しあい、その映像を見ながら技の改良に取り組んでいました。指導者に頼るのではなく、選手どうしでアドバイスしながら、技術を高めるのは、この部活だけでなく、アーバンスポーツ全体の大きな特徴です。

【技の向上に欠かせない必須アイテムは】

映像を確認する上村選手 SNSに公開も

練習に活用するアイテムも今どきです。国内外のライバルの技をチェックするのに欠かせないのがインスタグラム。トップレベルの選手たちの技を動画で確認し、練習の参考にします。さらに、自分たちの練習の映像も積極的に発信。自分の技をSNSを通じて多くの人たちに知ってもらうことも選手の技術やモチベーションの向上につながっています。これもアーバンスポーツならではです。

福岡出身 自転車BMXの平田深恩選手

(アーバンスポーツ部・平田深恩選手)
「いろんな人に見てもらって、自分をアピールしたらスポンサーとかにもつながる。うまい人の技を見て、この技やってみようとか、形とかを見て勉強もできるので、 インスタグラムはけっこう大切」

 【「アーバンスポーツ部」これからの広がりは】
自由なスタイルで練習に励む「アーバンスポーツ部」の生徒たち。上村選手は「みんな自由に、自分のペースで、練習もやりたいことをやっている。そういう雰囲気がすごい楽しい。みんなでいい舞台に立って、いい結果を残せるようにというのが理想」と話し、自由な雰囲気を大切にしながらも、競技で結果を出すという決意も話してくれました。

上村竜生選手「みんな自由に自分のペースで」

きつくて厳しいという部活動のイメージは時代とともに変わろうとしていますが、「アーバンスポーツ部」はその象徴になるかもしれません。岡山理大付属高校だけでなく、岡山市の関西高校にも2023年4月に「アーバンスポーツ部」ができました。2024年のパリオリンピックでも実施されるアーバンスポーツ。さらに人気が高まり、部活動にする学校が今後、増えるかもしれません。

  • 山田俊輔

    岡山放送局 記者

    山田俊輔

    2017年入局 岡山市政やスポーツ、学術などを担当

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