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西日本豪雨5年 災害の歴史を伝える 倉敷市真備町

NHK岡山「もぎたて!」備えドキ!
  • 2023年06月19日

2023年5月、倉敷市真備町にある看板が設置されました。 
そのタイトルは
『水除堤と金刀比羅宮』です。
いま金刀比羅宮があるこの場所が水害から地域を守る堤防の役目も果たしていた水除堤(みずよけづつみ)の一部であること、
5年前の西日本豪雨や明治時代の水害で濁流が押し寄せたことなどが記されています。
災害伝承碑のように、地域の水害の歴史を伝えています。
(もぎたて!キャスター 勝呂恭佑)

看板が設置された金刀比羅宮(かつての水除堤の上に建つ)

《危機感が薄かったのではないか…》

「100年 300年 500年 未来永ごうもってもらいたい…」

そう語るのは森脇敏さん、82歳。 
真備町に生まれ、父親などから地域の水害について聞かされて育ってきました。
ただ西日本豪雨のときは、これほどまで被害が出るとは想像がつかなかったと振り返ります。  

「おやじからよく聞いていた、明治26年の水害のときの跡じゃと。
 (地域に水害の歴史があることは)知っていたが、まさかというものがなかった。
 ひざ下くらいまでは冠水するかもと思ったが、あんな水害になるとは夢にも思っていなかった」

西日本豪雨で被害にあった自宅跡で語る森脇さん

《次世代に伝えるために 若い世代とともに》 

 “水害への意識が低かったのは自分だけではないのではないか” 
森脇さんは、看板づくりに若い世代を巻き込むことで
その歴史をより多くの人そして後世にも伝えようとしています。

こちらの2人は、水島工業高校に通う高校生。
真備町に住み、5年前の西日本豪雨では2人も自宅が被害に遭いました。
学校で学ぶ専門的な技術を生かし看板に取り付けるQRコードをステンレスにつけました。

水島工業高校 2年 迫水新也さん
「西日本豪雨はすごい被害だったので後世の方にも(看板を)見てもらい
(水害が)怖いと思ってもらいしっかり対策などを進めてもらえたら」

水島工業高校 2年 大橋真さん
「西日本豪雨の時でも大半の人が逃げられていなかった。
 自分は大丈夫と(思わず) 昔あったことを忘れず、 防災・減災などのことを考えてほしい」

そして、2人が作ったQRコードを読み取ると…
地元・岡田小学校の児童が地域の歴史を紹介する動画を見ることができます。
岡山大学の学生のサポートなどを受けながら制作しました。

地域の小学生などにも看板づくりに携わってもらうことで
子どもたちはもちろん、親などにも水害の歴史に興味を持ってもらう。
さらに、子どもたちが年齢を重ねたときに子どもや孫などにこの取り組みを伝えてもらう。
そんな狙いを込めたと森脇さんは言います。

《忘れられるし、途絶える、風化する。だからこそ…》

今回は町内のもう1か所にも看板を設置しました。
水害の歴史を地域の人たちが忘れないために…
森脇さんは今後も看板を増やしていけたらと考えています。

「人は忘れる、伝承は途絶える、風化する。
 だからこそ、記憶を刻んでいかないといけない。
 いつかくるかもわからんいつかのために、いつかくるかもわからん誰かのために」

  • 勝呂 恭佑

    アナウンサー

    勝呂 恭佑

    前任地の仙台局では東日本大震災のご遺族などを取材。
    岡山局では防災・減災関連の取り組みなどを紹介する「備えドキ!」を担当。
    そのほかこれまで、パラスポーツ(車いすラグビー)やラグビー関連の話題を取材。

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