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滋さん死去から3年 忘れてはいけないあの日

  • 2023年06月19日

中学1年生のとき、新潟市で北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父・滋さんが亡くなって3年が経ちます。滋さんは、拉致被害者の家族会の初代代表を務めるなど、救出活動の先頭に立ってきましたが、めぐみさんとの再会を果たせぬまま、2020年に87歳で亡くなりました。早紀江さんもことし87歳になり、体調を崩し入院するなど、家族に残された時間には限りがあります。「家族が元気なうちに再会してほしい」。45年以上続く拉致事件の始まりに出くわしたかもしれない1人の女性が抱く、拉致問題解決への思いを取材しました。     
                                                                NHK新潟放送局 油布彩那

日本で発した最後の声を聞いたかも

「きゃっ!助けて」という感じの本当に一瞬。
日本で彼女が発した最後の言葉を聞いた人間かもしれないって。

山梨県で医師として働く伊藤千恵さんです。

今から46年前の1977年。
大学の医学部で学んでいた伊藤さんは、横田家の隣の家の2階に下宿していました。

忘れないように 手書きの地図

当時のことを忘れないようにと、伊藤さんが記録した自宅周辺の地図です。
伊藤さんは道路に面した家の2階に間借りしていたといいます。

部屋のそうじをしていたら 一瞬の悲鳴

めぐみさんが拉致された11月15日、夕方。
部屋で掃除をしていた伊藤さんは女性の悲鳴のような声を聞きました。一瞬のことだったといいます。

「きゃっ助けて」という声が聞こえたように思ったんですね。
「えっ」と思って窓ガラスを窓を開けて、外を覗いてそして耳を澄ましたけど、向かいは木がいっぱい生えてる大きな家で、何にも見えないし、何も動く気配がないし、音もしない。

翌日、大家さんから隣に住む女の子が昨夜家に帰らなかったという話を聞いた伊藤さん。
警察に連絡をすると、すぐに警察官が来て当時の状況を説明しました。
また、後日、警察官が部屋の窓から見える景色などを確認しに訪れたといいます。

めぐみさんの声かもしれない

捜査関係者によりますと、聞こえた時間帯や周辺で他のトラブルの事案がなかったこと、一瞬で連れ去る北朝鮮の手口などから、「めぐみさんの声ではないか」という話も出ていたということです。
しかし、真相はわからないままです。

突然知った拉致疑惑

その後、伊藤さんは、突然、めぐみさんの拉致疑惑を知ることになったのです。

1997年ですかね。2月。大学の友人から雑誌に書いてあるのは、悲鳴を聞いたかもしれないという女の子のことじゃないかと電話が朝入ったんですよ。雑誌を買ってみて、びっくりしました。
「北朝鮮なんて何なの?」と本当に驚きました。何をどう考えていいかわからなかったですね。

事件から35年 横田夫妻と対面

事件から35年たった2012年。伊藤さんは横田夫妻と初めて会いました。
伊藤さんが通う教会に夫妻が講演のために訪れ、伊藤さんは事件当日のことを話したといいます。

駅まで迎えに行って、車の中で「横田さん。悲鳴を聞いたかも知れない隣の女子学生というのは私の事です」という話をして。「えっ」とすごく驚いていましたね。

もし自分が飛び出していれば

「あのとき自分が飛び出していれば何かが変わったかもしれない」。
伊藤さんは、46年たった今でも思うことがあるといいます。

もし2階から降りて、飛び出して行ってれば何か事情が変わったかな。
でももしかしたら私も拉致されたかもしれないとも思うんですね。自分の中では誰かが助けを求めていたかもしれないのに、手を伸ばすことができなかったという思いはありますね。

1日も早い解決を 祈り続ける

拉致問題解決に向けた進展がないまま、再会を待ち望む家族の高齢化は進むばかり。
早紀江さんが元気なうちに一刻も早くめぐみさんと再会してほしい。

祈りの項目が書かれたノートに「北朝鮮」を加えて、めぐみさんをはじめとする拉致被害者の帰国を祈り続けています。

祈りのノートに「北朝鮮」という文字を手書きで加えて。拉致した人たちを返してくれるようにというのが1番ですね。

一般国民の方の力じゃどうにもできない。
政府の偉い人が動いてよって。日本の国民のことをもっと大事にしてよと思いますね。
自分の子どもがさらわれていったら、じっとしてられないでしょう。
本当に家族がみんな待っているわけで、1日も早くと思いますね

  • 油布彩那

    新潟放送局 記者

    油布彩那

    令和元年入局
    警察取材や拉致問題を担当

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