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拉致を知らない世代が伝える

  • 2022年12月24日

およそ半年間、教師を目指す学生たちが拉致問題について学ぶ様子を取材してきました。
拉致被害者5人が帰国し、大きな衝撃を与えた当時を知らない学生たちは自分たちが授業をすることを目標に、現場を訪れるなどして拉致問題と向き合ってきました。
そして、ついに小学生に授業を行いました。
どんな言葉で伝えたらよいのか、学生たちの思いや葛藤を取材しました。新潟放送局 油布彩那

自分たちの言葉で伝える

ある日ある人の安心が突然奪われてしまった。
拉致という問題です。

(みんなの)倍以上の人生を北朝鮮で過ごすことになったんだよ。

小学生に授業を行っているのは教師を目指す学生たち。

拉致被害者5人が帰国した2002年はまだ幼く、当時の衝撃は知りません。

しかし、地元で起きたことをきちんと伝えられるようになりたいと学び始めた学生たち。

ことしの夏には、拉致被害者の曽我ひとみさんから直接話を聞くこともできました。

母からもらった腕時計

曽我さんは母・ミヨシさんからもらった腕時計を見せながら、一緒に拉致され、その後44年間会えていない母への思いを語りました。

この時計は母であり、私が何かにくじけそうになると叱ったり励ましてくれる宝物です。
使っているうちにあちこち傷がついたり電池切れで止まったりもしました。
その度に母に何かあったのではないかと心配したりもしました。

学んだことをどう伝えるか

学生たちは、グループに分かれて授業づくりを始め、それぞれが案を出し合います。

あしたは必ず来るわけではない。
当たり前が当たり前でなくなるという(曽我さんの)言葉が自分の中で結構刺さったので。

手紙を書くことで、子どもたちの中で感謝とか、周りの人への気持ちを言葉にする機会になるかなと思って。

『お母さんと再会するまでは(腕時計を)つけ続けていたい』と。
自分がいいなと思ったところだったので。

授業にする難しさも

子どもたちに伝えたいことがたくさんある一方で、「拉致問題」そのものを理解してもらうことや、
1つの授業として成立させる難しさに直面します。

曽我さんのことも伝えたいし、
やっぱり教科としても拉致だけで終わったら、教科としても成り立たないし。

教授
『家族とか友達への感謝』が狙いなわけだよね。
曽我さんの話から、当たり前が実は当たり前じゃないということに気づいていくストーリーがしっかりあると子供は感謝の方に気づくかもしれないし。

待ちに待った授業

学生たちを指導する教授にもアドバイスをもらい、
ついに授業の日を迎えました。

みんなで一回読んでみましょう!
せーの『ひとみさんのうで時計』

学生たちがテーマの1つに選んだのは、曽我さんから聞いた腕時計の話です。

心の支えは母からもらったうで時計です。
しかし、このうで時計は北朝鮮の生活の中で止まってしまいます。

拉致問題について伝えるとともに腕時計を通して子どもたちに曽我さんや母・ミヨシさんの気持ちを想像させ、家族の大切さについて考えられるよう導きます。

『止まった腕時計をなぜ持ってきたのか』
みんなで一緒に考えていきたいと思います。

拉致される前にお母さんと一緒にいたときとか、学校にいるときにつけた思い出があって、
とても大切で大事なものだから。

腕時計=母親。だから止まっても捨てられない。

学生
『母と再会出来るまでずっとつけ続けていたい』。
腕時計をこの先どうしたいか聞いたとき、
曽我さんが答えてくれました。

授業を受けた子どもたちは。

お母さんは自分の娘のひとみさんを大切にしてるんだと思うし、その腕時計を大切にするひとみさんもお母さんを思ってるんだなと。

こんなに拉致された人がいることがわかったから、家族を大事にしたいと思いました。

曽我さん「正しく伝えていってほしい」

曽我さんにも授業の様子を見てもらい、感想を送ってもらいました。

曽我さん
私から聞いた話をもとに、子供たちに少しでも
拉致問題のことを伝えようとする強い気持ちが
表れていたように思いました。
テーマを決め話の中身を精査し、私の伝えたかった事柄にまで持って行けたのは、流石でした。
教師になった時、一つでも多くのことを学び、
子どもたちには正しく伝えていってほしいと思います。

自分たちと曽我さんの方向性が一緒になったということを改めて感じることができて、
よかったと思いました。

学生たちは、貴重な経験をした自分たちだからこそ、教師として子どもたちに伝えることで、
拉致問題を知ってもらうきっかけを広げていきたいと話します。

曽我さんが経験したことを自分の中で落として、言葉で伝えるというところが、
自分自身授業をやっていて難しいと感じた。
今回が完成じゃないというのを心に留めて、これから何回も授業をしたとしても何回も振り返りしなきゃいけないと思いました。
言葉選びを大事にしていけたら子どもたちも『自分ならこういうことできるな』と考えやすくなるかなと思いました。

  • 油布彩那

    新潟放送局 記者

    油布彩那

    令和元年入局
    警察取材や拉致問題を担当

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