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新潟 出生率は過去最低 聖籠町は住環境で子育て支援

  • 2023年06月15日

6月に発表された2022年の合計特殊出生率、新潟県は1.27で4年連続で前の年を下回り過去最低となりました。少子化に歯止めがかからない中、国は「次元の異なる少子化対策」を進めるとしています。
こうした中、県内でいち早く少子化対策や子育て支援に取り組んできた聖籠町ではいま若い世代の住宅取得を支援する事業に力を入れています。住環境面での子育て支援、その狙いは?
(新潟放送局 野口恭平 記者)

放送した内容はこちら

合計特殊出生率 2022年は過去最低

最初に、最新のデータをもとに少子化の現状を整理します。

こちらは県内で生まれた子どもの数と合計特殊出生率をまとめたグラフです。

「令和4年人口動態統計(概数)の概要 新潟県版」より

2022年の出生数は1万1732人で前年比マイナス876人。

合計特殊出生率は1.27で前年よりもマイナス0.05ポイント。いずれも過去最低です。

聖籠町 出生率「2」超えの理由は

全県で見ると少子化傾向に歯止めがかからないように見えますが、市町村別ではまた少し違った傾向も浮かび上がります。こちらは2021年の市町村別合計特殊出生率。

2021年市町村別合計特殊出生率
「令和3年 人口動態統計(確定数)の概況 新潟県版」より
聖籠町 2.09 妙高市 1.25
佐渡市 1.5 柏崎市 1.22
魚沼市 1.44 村上市 1.22
小千谷市 1.42 南魚沼市 1.22
燕市 1.41 五泉市 1.19
十日町市 1.4 阿賀野市 1.15
上越市 1.38 加茂市 1.08
糸魚川市 1.37 津南町 1.04
阿賀町 1.37 粟島浦村 1
三条市 1.36 弥彦村 0.98
胎内市 1.36 湯沢町 0.94
長岡市 1.34 田上町 0.87
新潟市 1.33 関川村 0.73
新発田市 1.33 刈羽村 0.68
見附市 1.31 出雲崎町 0.53

県内トップの聖籠町は2.09とほかの自治体を大きく上回っています。

人口規模の小さい自治体の場合、年によって数字の「ぶれ」も大きくなりますが、聖籠町は直近10年を見ても1.6から2前後とほかの自治体と比べて高い水準で推移しています。

いち早く17年前から幼児教育無償化

聖籠町では以前から少子化対策や子育て支援に熱心に取り組んでいました。

今でこそ国の政策として「幼児教育無償化」が全国に広がりましたが、町では17年前、2006年から幼児教育の無償化を行ってきました。

また、環境も整備しています。

こちらは2022年に開設されたこども園。共働きの人が増えた結果、幼稚園での幼児教育ではなく保育のニーズが高まっていたことから、民間と連携してこども園を整備しました。

このように子育て支援に力を入れてきた結果若い住民が増え、高い出生率にもつながっているのではないかと町は見ています。

最大100万円の補助 若い世代は加算も

この聖籠町がいま力を入れているのが子育て世代向けの住宅関連の支援「聖籠町暮らし応援事業」です。2021年度に開始しました。

町内に10年以上住む意思がある人を対象に住宅の取得費用を最大100万円補助し、さらに子育て中の家庭や40歳未満の人、転入世帯にはそれぞれ20万円を加算します。

2022年度は支援策全体の約5000万円分の枠に申し込みが相次ぎ、追加で枠を拡大するほどでした。

こちらは自宅を新築し、2023年4月に転入してきた荒木祥史さん(40)です。

これまで新潟市に暮らしながら聖籠町に通い、農業を営んできました。妻の実家が聖籠町だったことや子どもたちの進学のタイミングに加え、町の子育て支援策も後押しして転入を決めました。住宅建設にあたり支援事業の利用を申請しました。

妻や3歳から16歳の子ども3人も今の環境を喜んでいます。

16歳の長男
とてものどかで夜聞こえてくる、かえるの声がすごく気に入っています。一方でいろいろな施設も整っていて住みやすいです。

13歳の長女
中学校も友達と仲良くできて、すごく楽しい。引っ越してよかった。

自宅の建設は町外の会社に頼んだため制度の規定で補助金は40万円あまりになりますが、子育て世代にとって住宅支援の効果は大きいといいます。

荒木祥史さん
住宅メーカー、工務店も含めて数年前よりも住宅の建築費用があがってきているので、そういう中で少しでも出費を抑えられるのはありがたいです。子育て支援を打ち出してる自治体に僕ら子育て世代は住みたいって気持ちは強くなってきてると思います。特に住宅をどこに建てるかはその先長く住んでいく前提になると思うので、固定資産税の軽減とか、さまざまな支援をお願いしたいです。

新潟県内で住宅価格上昇も…

荒木さんが話すように世界的な木材価格の高騰や円安による資材価格の高騰、人手不足などを背景に県内でも住宅価格は上昇が続いています。

「東京カンテイ」調べ

民間の調査会社「東京カンテイ」によれば県内の新築一戸建ての平均分譲価格は、2015年は2459万円でしたが2022年には2831万円になっています。

住宅を購入するかどうかは、どこに住むかやどのようなライフプラン描くかにも直結する子育て世代の悩みの一つです。

町内で進む宅地造成の現場

聖籠町は新潟市への通勤が可能な上、土地の価格は比較的低く、不動産会社による宅地造成が続いています。

西脇町長

西脇道夫町長は、こうした地理的な特性に加えて住宅関連の支援を強化することで若い世代が増え、結果的に子どもの数も増えると強調します。

西脇道夫町長
若い世代が家を建てる時に一番気になるのはどうしても資金の問題。国も異次元の子育て支援をすると動いていますが市町村としてもできることはある。住宅を建てやすい、そして子育てもしやすい、この2つがそろえば若い人は「じゃあそこに住んでみようかな」となるはずです。そこは我々独自で力を入れたい。

金融機関からのアプローチも

一方、子育て世代向けの住宅関連の支援は民間でも始まっています。

南魚沼市に本店がある信用組合では金融機関ならではの試みを始めています。

以前、取材した記事の内容はこちらから👇

新潟 住宅ローン 子育て世代向けに金利優遇 不安解消なるか?

今回は戸建てを中心にお伝えしましたが、賃貸に住みたい、または戸建ては購入できないという世帯もあると思います。そうした世帯を念頭に新潟市は、子育て世代に特化した市営住宅の入居枠を設けています。

こうした制度の拡充も含めて「住まい」を切り口にした効果的な支援策が普及することを期待したいと思います。

  • 野口恭平

    新潟放送局 記者

    野口恭平

    2008年入局 徳島放送局、報道局経済部を経て新潟放送局へ。幼いころから南魚沼市で年末年始を過ごす。経済や子育て支援の動きなどを取材中。

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