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おにぎり専門店 なぜ今人気?東京 大塚の老舗店主に聞いてみた

  • 2023年06月09日

コメの消費が落ち込む一方、店舗やテイクアウトで味わえる「おにぎり専門店」の進出が新潟県の内外で相次いでいます。なぜ今「おにぎり」に注目が集まっているのか?
新潟市出身の名物おかみが営む都内の老舗専門店と消費者の動向を調べる民間企業の担当者を取材し、人気の背景を探りました。
(新潟放送局記者 米田亘)

放送した内容はこちら

昭和35年創業の老舗 ピーク時は8時間待ち!?

東京・豊島区のJR大塚駅前にあるおにぎり専門店「ぼんご」。こだわりの1つが「新潟県産コシヒカリ」を使ったおにぎりです。

昭和35年創業のこちらの店を切り盛りするのは新潟市出身の右近由美子さん。

客として店に通ううちに創業者の男性と結婚。以来40年以上にわたって店に立ち続けています。

おにぎり専門店 店主 右近由美子さん
おにぎりは家で作るもので、買う物ではまったくなかった。わたしが「おにぎり屋さんと結婚した」と母に報告したときに「うそうそ、そんなの絶対うそ」とまったく信じてもらえなかった。

店は連日、長い列ができるほどの人気店に。1日の売り上げはおよそ1000個。週末や大型連休中の待ち時間は8時間近くに及ぶこともあるといいます。

人気のヒミツ① 「多様な具材」

おにぎりは1個350円から650円。そうした価格設定のもと、客足が絶えない理由の1つは多様な具材です。客の要望に応えるうちにどんどん増え、創業当初20種類ほどだった具材の数は今や57種類と3倍近くになりました。

利用客
「いつも家で食べられない具をこういう有名店で食べられるのは、体験した雰囲気や経験も含めてすごくおいしい」
「サケ&すじこと、牛そぼろ&卵黄を食べました。2種類を一緒に味わえたのはよかった」

右近さん
「マヨネーズをたらこに入れて」「ツナにねぎ入れて」とお願いされて、「内緒よ」と言いながらやってたんですけど「内緒ならやっちゃえ」ということで。(客は)みんな親戚みたいになっちゃうので「願いをかなえてあげたいな」と思ううちに、1つずつ増えていきました。

人気のヒミツ② 「SNS映え」

多様な具材のアレンジに加え、人気をさらに高めた要因が、いわゆる「SNS映え」です。これにより、客層が若い世代にまで広がりました。店内ではスマートフォンを手におにぎりを写真に収める客の姿が目立ちます。

利用客
「ずっと来たかったところなので(SNSに)記念に載せたいと思います」

さらに右近さんはコメの消費量が年々減る中でも、おにぎりにはほかにはない「強み」があるといいます。

右近さん
おにぎりは日本人にとっては本当に特別なもの。だって泣かれる方もいるんですよ?若い女性が。「ああ、お母さんのおにぎりってこんな感じだったなあ」と思い出してくれることがありがたいし、うれしいし、そのためにいまも働いています。

「アレンジのしやすさ」と「国産のコメ」

「家計調査結果」(総務省統計局)を元にグラフを作成

総務省の家計調査によりますと、2人以上の世帯が去年1年間(2022年)コメにかけた金額は平均で1万9000円余り。20年前(2002年)と比べ5割近く減っています。

一方、おにぎりや赤飯などを含む「おにぎり・その他」をみると2000年以降、最も高くなりました。「コメ離れ」でもおにぎりのニーズは高まっているのです。

ホットペッパーグルメ外食総研 有木真理 上席研究員

食に関する消費者の動向を調べる民間企業の担当者はどう見ているのか聞きました。

ホットペッパーグルメ外食総研 有木真理 上席研究員
食べ物は多様化しやすい、アレンジしやすいというのがブームが起こりやすいポイントです。その上で欠かせないのがSNSでいかに発信されるか。見た目もそうですけど、ストーリーもちゃんと語れるか。こういう食材を使ってこんなふうにごはんを炊いて職人がこういう技術で握ってますみたいな。まさにおにぎりはこのストーリーをたどっているなと。

その上で、おにぎりに欠かせない材料が「コメ」であることが事業者の参入のしやすさにつながっているといいます。

物価が高騰している中、比較的コメは国内産が多いので価格が安定していて、継続して消費されている。調理の難易度が高くなくオペレーションが楽ということも店を展開しやすいポイントなのかなと。これから期待の業態だと思っています。

新潟から弟子受け入れ「新潟に心のあるおにぎりを」

2023年5月、店主の右近さんはふるさと新潟から初めて弟子を受け入れました。

新潟県に製造拠点を展開する卵の加工メーカーに勤務する皆川俊宏さんです。勤め先の企業が新潟県内に「おにぎり専門店」を展開することになり、右近さんに師事することにしたのです。

この日も朝早くからおにぎりの握り方について教わっていました。

右近さん
「なるべくご飯にさわる回数は少ない方がいい。お客さんの口に入るものだから」
記者
「きょうの時点で何点ですか?」
右近さん
「いやー、まだ50点もいかないですよ。まだまだそんな甘くないですよ」
皆川さん
「まだ手が震えるんです。おかみさんがいるからではないですけど、カウンターがそういう場所だと思うんですよ。自信持って作ることができるまでとにかく練習したいと思います」
右近さん
「ここ(店のキッチン)は私たちのステージなんですよ、たったこれだけの広さしかないけど、ここには並大抵の努力では立てないんです」

右近さん
新潟で心があるおにぎりを作ってほしい。コメだけを売るとか、形だけを売るのではなくて。いつも言うんですよ。伝えるのは「心ですよ」って。私は新潟愛強いですから。ぜひぜひおにぎり専門店が新潟にいっぱいできてほしい。

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、新潟放送局3年目。一次産業を中心とした経済取材を担当。

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