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新潟 住宅ローン 子育て世代向けに金利優遇 不安解消なるか?

南魚沼 塩沢信用組合で新たな取り組み
  • 2023年04月25日

国が少子化対策の強化を掲げるなか、南魚沼市の金融機関が子どもの人数に応じて金利を引き下げる住宅ローンの取り扱いを5月から始めることになりました。こうした住宅ローンは他県の金融機関でも取り扱っていて、子育て世代を金融面から支援する動きが広がるか注目されます。 (新潟放送局 野口恭平 記者)

 子どもの人数に応じて金利が下がる 

5月から新たな住宅ローンの取り扱いを始めるのは南魚沼市に本店がある塩沢信用組合です。

 具体的には、現在2.2%に設定している固定金利を子ども1人につき0.05%引き下げるほか、借り入れ期間中に子どもが生まれた場合も対応し、最大で6人、0.3%引き下げます。

 ローンを利用できるのは18歳から39歳までで、借り入れ期間は最長で51年です。 

借り入れにあたっては信用組合が営業する地域に住宅を建てることなどが条件で、地元の工務店を通じて断熱性を高めた住宅を建てた場合はさらに金利を引き下げます。 

南魚沼市ではこの10年間で10%以上人口が減っていて、信用組合としては国が少子化対策の強化を掲げるなか地域への若い世代の定着を後押しする狙いもあります。

塩沢信用組合 小野澤一成理事長

小野澤一成理事長 
このところの原材料高で若い世代の負担は増えている。この地域でも少子化に加えて東京や新潟市など大都市への流出が続いていて、地域の金融機関としても危機感を感じています。子育て世代への支援を通じて地域の人口の維持につながるお手伝いをしたいと思っています。また、これは金融機関としてのアプローチですが、業界を問わず、子育てや子どもに目を向けるようになれば、少子化の現状は変わっていくのではないかと思います。

この信用組合では、同年代の働く人たちが集まる会合を開いて、若い世代の「出会いの場」も増やしていきたいと考えています。 

金融機関が開いた会合の様子

先行する金融機関 フラット35でも検討の動き

 子どもの人数に応じて金利を引き下げる住宅ローンは、北九州市の「福岡ひびき信用金庫」や愛媛県四国中央市の「川之江信用金庫」でも取り扱っています。

 このうち、北九州市の信用金庫は平成18年に地域貢献の一環でこの商品の取り扱いを始めていて、2022年度は95件、2021年度は141件の利用があったということです。

 担当者に話を聞いたところ「少子化対策にどこまでつながっているか、データで表現するのは難しいので何とも言えないです…」と話していましたが、子育て支援をしている地域としての認知度は高まっていると手応えを感じているようでした。

 このほか、岸田総理大臣が「次元の異なる少子化対策」を掲げる中、政府も住宅金融支援機構などが扱う「フラット35」で多子世帯などに配慮した金利の軽減策を検討しています。

固定金利を選ぶ人も増えている

一方、もう一つ注目したいのは固定金利の動向です。 

金融をめぐっては、日銀は黒田前総裁時代の2022年12月、長期にわたる金融緩和策の副作用として課題になっていた金利水準のゆがみを是正するため政策を修正し、長期金利の変動幅の上限を引き上げました。 また、欧米などの中央銀行は相次いで利上げを実施しています。

 日銀は植田和男新総裁が4月に就任。いまの大規模な金融緩和について「継続することが適当だ」と述べ、当面、政策の枠組みの修正は考えていないという認識を示しましたが、出口戦略をどう考えるのかも課題になります。 

住宅ローンを借りる場合、市場の短期金利を指標に設定される変動金利と、融資を受けた際の金利が続く固定金利に分かれます。

 住宅金融支援機構が2022年10月に行った住宅ローンの借り入れをした人を対象にした調査では、変動金利の割合は69.9%と、4月の調査の73.9%より低下しています。

 日銀の大規模緩和策によって短期金利は低い水準に抑えられていて多くの人が変動を選択していますが、固定金利を選ぶ人も増えているのです。

 これについて南魚沼市の信用組合の小野澤理事長はこのように指摘しました。

小野澤一成理事長 
世界の中央銀行が利上げに踏み切り、日銀も今後出口(戦略)が見えてくるかもしれない。そうすると、変動金利は上昇していく可能性がある。固定金利であれば設定した期間の金利は変わらないので生活設計も立てやすくなるのではないか。

 子育て世代を金融面から支援する動きがどこまで広がるか注目されるとともに、住宅ローンを検討する人たちにとっては支援の動きや金融をめぐる状況を丁寧に追っていく必要がありそうです。

  • 野口恭平

    新潟放送局 記者

    野口恭平

    2008年入局 徳島放送局、報道局経済部を経て新潟放送局へ。幼いころから南魚沼市で年末年始を過ごす。金利もさることながら住宅価格の高騰も若い世代にとっては課題だと感じています。

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