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新潟 バスの安全装置 義務化 置き去り事件受け 補助や対象は?

経過措置で新年度に入り本格化か
  • 2023年03月29日

静岡県で去年(2022年)、3歳の女の子が通園バスの車内に取り残された事件を受けて2023年4月から全国の幼稚園や保育所などの送迎バスに安全装置の設置が義務づけられます。県内の幼稚園などでは、バスへの導入が進められています。

一方、国は1年間の経過措置を設けていることから、導入が本格化するのは新年度に入ってからになりそうです。県内ではどこまで導入が進んでいるのか?現状を取材しました。
(新潟放送局 野口恭平 藤井凱大 記者)

4月から設置義務化 補助や対象は?

静岡県で2022年9月、3歳の女の子が通園バスの車内に取り残されて死亡した事件を受けて、政府は2023年4月から全国の幼稚園や保育所などの送迎バスに安全装置の設置を義務づけました。

義務化対象となっている幼稚園などに対して政府は1台につき17万5000円を補助するほか、義務化対象ではありませんが小学校や中学校でも希望すれば設置費用を8万8000円補助します。(いずれも上限)

国土交通省HPより

義務化に向けて、国土交通省はガイドラインをまとめ、
▼エンジン停止後に警報を鳴らし、運転手に車内の確認を促す「降車時確認式」や
▼置き去りにされた子どもをセンサーによって検知する「自動検知式」といった装置を指定しています。

そして、ガイドラインに適合しているかどうかは国が確認し、リストとして公表しています。

設置した新潟市の幼稚園は

設置が義務化されることを受けて、新潟市西蒲区にある認定こども園「ひのまる幼稚園」では3月24日、バスに安全装置の取り付け工事が行われました。

工事の様子

この幼稚園では去年9月の事件を受けて、対応を強化していてます。

①送迎バスの添乗員が園児が全員降りたか確認したうえで「レ点」をつけ、②園の入り口で職員が再度チェックシートで確認し「丸」を付けるなどダブルチェックを行うようにしていたということです。

「レ点」とマルで丸でチェック

今回設置された安全装置はエンジンを停止した時に車内のブザーが鳴り、後方に設置されたボタンを押して止めるという仕様で、添乗員が後ろの座席まで歩いて、園児がいないかしっかり確認できるようにしています。

バス後部のボタンを押すと音が止まる
車内に設置されたセンサー

また、車内に残った子どもの動きや振動を感知して車外へアラームを鳴らすセンサーも設置され、二重で置き去りを防ぐことができるということです。

実際にデモの音を聞きましたがかなりの大きさでした。(設置業者に確認したところ、夜中に大きな地震があった場合などは振動を感知してしまう可能性があるため、確実に子どもがいない場合は安全装置をオフにすることも考えた方がよいとのこと)

この日は業者が設置作業を終えると副園長が使い方や注意点について説明を受けていました。

今回、バス1台に設置した設備の費用は約22万円だということです。

一方、園では安全装置を設置した後も職員が2人以上でダブルチェックする体制は続けていきたいとしています。

吉藤真由美副園長

「ひのまる幼稚園」の吉藤真由美副園長
今はコロナ禍でもあるので、添乗員が1席1席、消毒しています。なので置き去りがあっても見つけることはできます。ただ人間のすることで見落としもあるかもしれないので、職員がさらに細心の注意を払って保育するとともに、機械の力も活用して子どもの安全をさらに高めていきたいです。

こんな音が鳴りました 動画↓

ガイドラインやリストはギリギリ整備 設置は新年度本格化か

送迎バスへの安全装置の導入は4月1日から1年間は経過措置がとられることになっています。

県内の私立幼稚園が加盟している「新潟県私立幼稚園・認定こども園協会」によりますと、3月、加盟している105園にメールで尋ねたところ、▼すでに安全装置を設置している、▼設置へ向けて業者に発注しているという施設は少なくとも47園だということで、本格的に導入が進むのは新年度に入ってからとみています。

と、いうのも背景には国の「ギリギリの対応」がありました。

国土交通省がガイドラインを設けたのは去年12月。

国が公表しているリスト

その後、内閣府は1月にガイドラインに適合した製品リストを公表しましたが、新年度が始まる直前の3月下旬までリストの更新は続いています。

「4月に間に合わせるにはもう少し早く情報が欲しかった」。

幼児施設関係者の多くがそう話していました。

協会の理事長「悲惨な事故防ぐ」

導入の状況について「新潟県私立幼稚園・認定こども園協会」の角谷正雄理事長に話を聞きました。

角谷正雄理事長

Q置き去りのリスクや事件を受けた対応について

幼稚園の場合原則は3歳以上がバスに乗ることになっていますが、それでも自分の意思をしっかり表示出来ない場合もあります。例えば、バスで帰宅途中に寝てしまうこともよくあります。また、いつもは乗る子が「きょうは習い事や家庭の事情で乗らない」ということも。添乗員の先生も行事が控えていて忙しい時などこそ、事故が起きやすくなり、二重三重のチェックが必要です。

静岡県の事件を受けて、協会でもバスの安全マニュアルの確認や安全確認を確実に行うよう周知徹底してきました。

Q安全装置の効果や県内の施設の導入状況について

各施設では子どもの大切な命を預かっています。バスに乗った時、降りた時、クラスについた時とチェックを徹底することがまず大事だし、これまでも実施しています。そこに上乗せで安全装置を導入することで確実にチェックすることができるはずです。

一方、どのような装置を導入したらよいか、多くの施設が見極めている状況ではないかと思います。例えば私たちの園は、園児の登園・降園を把握できるシステムを各教室に設置しているので、できればそのシステムとバスが連動できるようなものを導入したいと考えています。

2022年の静岡県での事故、2021年の福岡県での事故は夏ごろに起きているので、その前にはつけて欲しいとも思っています。何重にもめぐらせたチェックで悲惨な事故が起きないようにしていきたいです。

  • 野口恭平

    新潟放送局 記者

    野口恭平

    2008年入局 徳島放送局、報道局経済部を経て新潟放送局へ。幼いころから南魚沼市で年末年始を過ごす。5歳の息子がいます。体調不良などで頻繁に幼稚園バスの乗車予定が変わるので先生方にはご迷惑おかけしています。

  • 藤井凱大

    新潟放送局 記者

    藤井凱大

    2017年入局。函館放送局、札幌放送局を経て、2022年夏に新潟放送局に赴任。
    現在、県政キャップとして行政の取材などを担当。

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