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新潟 記録的大雨から半年 避難指示続く村上 小岩内集落のいま

  • 2023年02月10日

2022年8月の記録的な大雨では、新潟県北部などで多くの住宅や農業施設に被害が出ました。2023年2月で発生から半年がたち被災地では住宅の修理や流木などの撤去が進んでいます。ただ、大規模な土石流などが発生した村上市の小岩内集落ではいまも全域に避難指示が出されていて、30世帯あまりが仮設住宅での避難生活を余儀なくされています。災害から半年がたつなか、わが家に戻る日を待ちわびる人たちを取材しました。(新潟放送局記者 米田亘)

仮設住宅で再認識した “地域のきずな”

髙野クミさん

村上市内の仮設住宅で避難生活を続ける髙野クミさん(76歳)です。3年前に夫を亡くした髙野さんは、仮設住宅で1人で暮らしています。

髙野クミさん
ただいまー。誰も言ってくれないから「ただいま」「おかえり」って1人で言っているの。

2022年8月の災害後、親戚の家に身を寄せ9月に仮設住宅に入居した髙野さん。仮設住宅での生活が長期化するなか地域の人たちを心の支えに暮らしてきました。

(地域の人が近くに)誰もいなくなって。やっぱりね、さみしかった本当に。寝れないときもあった。だけどこっち(仮設住宅に)来たら両側に誰かいるからね。安心して寝られた。

この辺に(家が)あったんですよ。どうにもならんよね。まわりの家はみんな無くなってしまった。

市の許可を得て、車で15分ほどかけ小岩内集落にある自宅の様子をたびたび見に訪れている髙野さん。髙野さんの家は大きな損壊はまぬがれたものの、大雨の被害を経験してからは地域に戻るか悩んだといいます。

12月のドカ雪でも木がだいぶ折れてね。(家の)後ろも崩れているんですよ。

避難指示が解除されたら自宅に戻ることを決めた髙野さん。決め手は、仮設住宅での暮らしで改めて感じた地域のきずなと、いまは遠方で暮らす息子のことばでした。

こうなった姿みて(息子が)「もう来ない」と言ったらどうしようかと思ったけど、「来る」と言ったから。「(一緒に)住もう」と言ったから、また(小岩内に)戻ろうと思えてね。

農業の再建めざす男性も

髙野貞昭さん

農業の再建を目指す男性もいます。仮設住宅で避難生活を続けている髙野貞昭さん(53歳)です。

大雨の前はコメとミニトマトを生産していました。

髙野貞昭さん
これが刈り取りを諦めた田んぼなんですけど、ちょうどここに積まれているのが土砂。撤去されていない土砂ですね。

写真提供:髙野貞昭さん

農業用ハウスに泥水が流れ込んだ影響でトマトを育てることができなくなってしまいました。

トマトが泥にやられて出荷できないのが2段。その2段分ぐらい捨てないといけないときは切なかったですね。

写真提供:髙野貞昭さん

もう栽培できないのではとあきらめかけていた髙野さんですが、ボランティアの人たちのほか高校時代の友人や恩師が土砂のかき出しなどを助けてくれたことで前向きな気持ちになることができたといいます。

さらに栽培設備の交換や資材を処分するためなどに必要な資金をクラウドファンディングで募ったところ、1か月あまりで目標を上回る300万円を確保することができました。

本当に1人では生きていけないんだなということが、ひしひしと。人に支えられて生きているんだなあと改めて思いました。

髙野さんは農業を通して、地元のつながりを取り戻したいと考えています。

うちはスタッフもそうなんですけど、トマト(栽培)のお手伝いに来ていただいているのも集落の方なんですよ。私がトマトをあきらめた時点で、その人たちが集まる場がだんだんなくなってしまうのではないかと。そこであきらめないぞと思ったのもありました。またここで会ってほしいなって。その輪がまた広がってくれればいいかなって思ってます。

復旧に向けた見通しは

今回、取材を通じて出会った人たちは小岩内集落に戻って生活すること望んでいました。ただ、なかには「もう同じような体験はしたくない」との思いから、別の場所に移り住むことを考えている人もいます。

一方で、今後に向けた復旧の見通しは少しずつ見え始めています。村上市によりますと、流木を取り除いたり治水を行ったりする「応急復旧工事」はほぼ完了していて、今シーズンの雪どけを待って残った作業を完了させるということです。その後、大学の専門家などの調査で安全を確認できれば避難指示を解除するということです。

さらに県は、地域の「砂防ダム」のかさ上げ工事を新たに計画していて、中長期的なリスクの解消にもつなげたい考えです。

ただ、小岩内集落の仮設住宅の入居期間は2024年の9月までとなっています。住宅が全壊した人などは避難指示が解除されたとしてもすぐには戻ることはできません。市の支援金を元手に住宅を再建するのか、市営住宅など別の場所に移り住むのか。ここでも選択を迫られることになります。

また、住宅が損壊するなどの被害が出た関川村でも復旧は進んでいますが少なくとも10世帯ほどがいまも自宅を離れ、修理が終わるまで村営住宅に身を寄せています。今後も被災した地域の現状や課題を取材し、伝えていきたいと思います。

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、新潟放送局3年目。新型コロナウイルスや災害、一次産業を中心とした経済取材を担当。

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