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児童虐待の対応件数 東海3県でも高水準 相談するには?

  • 2023年09月11日

「子育てでいらつくのはあたり前」。その言葉に私は救われました。児童虐待の対応件数が過去最多を更新する中、当事者やその周囲の人に伝えたいことを子育て中の記者が聞きました。
(名古屋放送局 鈴木博子)

全国でも過去最多、三重・岐阜でも

こども家庭庁によりますと、昨年度18歳未満の子どもが親などの保護者から虐待を受けたとして全国の児童相談所が相談を受けて対応した件数は速報値で21万9170件で、過去最多となりました。

東海地方では◇三重県で2408件(前年度+261件)◇岐阜県で2684件(+294件)でいずれも過去最多となり◇愛知県では9676件(ー647件)と統計をとりはじめてから4番目に多くなりました。

心理的虐待が最も多い

内容別では暴言を吐いたり子どもの前で家族に暴力を振るったりするなどの「心理的虐待」が最も多く、次いで殴る蹴るなどの「身体的虐待」、子どもの面倒を見ない「ネグレクト」、「性的虐待」と続いています。

  心理的虐待 身体的虐待  ネグレクト 性的虐待
愛知県  63.6% 24.4% 11.1% 0.9%
岐阜県  51.6% 33.0% 13.7% 1.8%
三重県 48.6% 29.9% 19.4% 1.8%
全国 59.1% 23.6% 16.2% 1.1%

※愛知県は名古屋市を除く割合  

虐待の内訳について全国の割合で10年前(平成24年度)と比較すると、心理的虐待が10年前から33.6%→59.1%とほぼ2倍に増えている一方で身体的虐待やネグレクトが10%程度減っています。性的虐待の割合は1%~2%で推移しています。

相談の経路は警察などが最も多い

3県とも相談が寄せられた経路では、警察などが最も多くなりました。愛知県では6割を占めています。2番目に多い経路は愛知県と三重県で市町などの関係機関、岐阜県で学校となりました。

こども家庭庁は相談件数が増加した理由として、
◇家庭内に子どもがいる状況で家族に暴力を振るう、いわゆる「面前DV」が増え「心理的虐待」とし て警察から通告される件数が増加していること
◇関係機関の児童虐待の防止に対する意識や感度の高まりをあげています。

専門家「潜在化していたものが顕在化」

名古屋市で虐待防止に取り組むNPO法人「CAPNA」の理事長を務める岩城正光弁護士は、年々対応件数が増加していてことしも過去最多を更新した背景について、「地方は通報件数が少なかったが、啓発が進んで潜在化していた児童虐待が顕在化したことは評価できる。虐待自体の数が増えているというわけではなく、警察が家庭内暴力に積極的に介入するようになり心理的虐待などの発見も増えたのではないか」と分析しています。

その上で、「アメリカでは日本よりも『性的虐待』の割合が高いが、日本国内では1%~2%と極端に少なく、まだ発見できていないものも多い。徐々に虐待が顕在化してきているが、まだ道半ばだ」と指摘しています。

虐待の発見どうすれば?

岩城弁護士に、虐待を減らすには・早期発見するにはどうしたらいいのか尋ねました。

【地域の人や家族・知人などに向けて】
子どもの異変に気づいた人が警察や自治体にためらわずに通報することが大切だということです。

岩城弁護士

通報は告げ口ではなくて、子どもの安全確保や親子関係の修復のきっかけになる。その家族を支援するために、ためらわずに通報してほしい

また、子ども食堂や学習支援などの『子どもの居場所』づくりも大切だとしています。
子どもの貧困対策だけではなく、子どもを社会で見守っていくという視点が含まれているからです。できるだけ多くの大人の目を子どもに集めてほしいと呼びかけています。

 

【子を持つ親に向けて】
虐待を未然に防ぐため、子を持つ親に覚えておいてほしいことがあるといいます。それは「子どもに対していらつくというのは当然の感情」だということ。いらつく感情は自分のストレスが原因になっているとして、これ以上ストレスを抱え込まず深刻な虐待につながらないようにするには、いろんな人には話すことだといいます。

子どもを育てるのはすごい労力がかかり自分だけが苦しんでいるわけじゃない。心配なことがあったら児相や行政に連絡することも大事だが、民間団体には「チャイルドライン」や「CAPNA」の電話相談があるので、ぜひ遠慮なく利用してほしい。通報するための電話を受けるのではなく、少しでも気持ちがやわらぐようアドバイスをしたいという思いで作っています

相談先は?

 

・全国共通の無料の相談ダイヤル 189(いちはやく)
 全国の近くの児童相談所につながるダイヤル。匿名可。

・チャイルドライン 0120-99-7777
 18歳までの子どものための無料相談窓口。毎日・16時~21時

・NPO法人「CAPNA」 052-232-0624
 名古屋市の虐待防止に取り組むNPO。月曜日~土曜日・11時~14時

 

取材後記
 私は前に住んでいた自治体で出産後定期的に保健師さんからの電話や訪問を受けていました。子育てでストレスがたまっていないかを毎回聞かれましたが、「疲れた」という感情は伝えられても、子どもに対して「いらつく」という感情を口に出してはいけないと思っていました。今でも「これって虐待にならないだろうか」という不安を抱えながら育児をしています。子育てをしている状況はみなそれぞれですが、子どもを守るために通報の重要さや相談先の存在が広く伝わってほしいです。

  • 鈴木博子

    名古屋放送局 記者

    鈴木博子

    高松放送局で6年勤務後、ことし4月から名古屋放送局。子育てに関する話題に関心あり。

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