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#2 受け入れてくれたひいおじいちゃんへ「多様な性のあり方」

  • 2023年06月01日

From:モリタジュンタロウさん(27歳・トランスジェンダー男性)
>>>To:天国のひいおじいちゃんへ

6月は“多様な性のあり方”を考えるプライド月間。
NHK名古屋は「多様な性のあり方」を考えるキャンペーンを実施します。

“あなたでいてくれてありがとう Thanks for being you!”

東海地方にゆかりのあるLGBTQ+当事者やその家族が「あなたでいてくれてありがとう」と伝えたい人に手紙を送ります。彼らが紡ぐ言葉から、多様な性をめぐる生き方に思いをよせます。

第2回の主人公は、モリタジュンタロウさん(27)。
名古屋市出身。若き起業家として会社を経営するモリタさんは、トランスジェンダー男性です。彼が手紙を送るのは、子どもの頃から大好きだった天国のひいおじいちゃん。亡くなる直前まで、自分がトランスジェンダーであることを伝えられませんでした。葛藤の末、モリタさんはひいおじさんに会うことを決心して…。

子どもの頃、いつも一緒に遊んでくれたね。
絵の描き方や、字を書くことの楽しさを教えてくれたのはじいちゃんでした。

いつも部屋に入ると、机に向かって黙々と書き物をしていたじいちゃん。
最初は、字を書くことの何が楽しいんだろう?
って思っていたけど、27歳になった今、僕も字を書くことにハマって、最近では書道教室に通い出しました。

子どものころに知った創作の楽しさから、YouTubeや、発信活動を通じて、今でも自分なりの創作を続けています。
これは間違いなくじいちゃんからもらった大切なギフトだなと感じています。 

亡くなる直前まで、性別のことを内緒にしていてごめんね。
大好きなじいちゃんたちがこのことを知ったら、悲しむんじゃないかと思うと、なかなか言い出すことができませんでした。

言えないまま身体を男性にする治療は始まって、髭が生えたり、声が低くなったりして、ついには電話すらも避けるようになってしまって。

そんな中で、じいちゃんの体調が悪いことを知りました。
今すぐ会いに行きたいけど、この姿を見てどう思うかな?
もしかして、このまま知らない方が幸せかもしれない。
そんな考えがぐるぐる回って、そうしているうちに自分が悪いことをして生きているような気がして
胸が苦しくなりました。

それでもやっぱり会いたい。
そう思って本当にドキドキしながら、あの日、会いにいきました。

申し訳なさそうに姿を見せた僕。
じいちゃんは一眼見た瞬間に
「父さんに似てきたな。よし、こっちにおいで」
と言って抱きしめてくれたね。

じいちゃんはそれ以上何も言わなかったけど、その暖かさと力強さで、とても安心したのを覚えています。

それと同時に、男性になった自分を見てどう思われるのか不安で会いに行けなかった自分自身を、とても情けなく感じたんだよ。

もっと早く会いに行けばよかった。
もっと胸を張って生きればよかった。
どんな自分でも、愛してくれていることに気づけばよかった。

あの後、すぐじいちゃんは天国に行ってしまったね。
もしかして僕が会いに行くのを待っててくれたんじゃないかと思っています。

じいちゃんのためにみんなが集まったお葬式で、初めて親戚の皆に男性として生きていることを伝えることができたよ。
今度はもっと、堂々とありのままの自分で振る舞うことができたよ。

じいちゃん。僕はもう自分で自分を傷つけるのはやめるよ。
周りの人にどう思われるか気にするのも、誰かに罪悪感を持つこともやめるよ。

じいちゃんがくれた愛や、ギフト、思い出が僕の一部なんだから。
僕はちゃんと僕を大切にして生きていくよ。

最後になりますが、僕には今、夢があります。
それは死ぬ時に、じいちゃんみたいな生活を送ること。

絵を描いて、字を書いて過ごしたい。
その時には仕事道具は紙とペンだけ。

僕は子どもを授かることはできないけど、町のおじいちゃんになって、子どもたちにその楽しさを教えたり、遊び相手になりたいんだ。

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