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長崎・海星高校 宮原投手・向井投手 帽子にまつわる成長物語

  • 2022年08月05日

3年ぶり19回目の夏の甲子園に出場する長崎・海星高校。その原動力となった2枚看板の宮原明弥投手と向井恵理登投手の帽子にまつわる成長の物語をお伝えします。

NHK長崎放送局 アナウンサー 池田耕一郎

優勝の原動力 2枚看板の3年生右腕

NHKではテレビとラジオで高校野球の中継放送を行いましたが、試合前には対戦する両チームの監督取材というものがあります。そこで海星の加藤慶二監督に「今日の試合では何点のスコアを予想しますか?」と聞くと、決まって返ってくる答えがありました。

「3点取れれば勝てます」

それは言い換えると「投手陣が2点以内に抑えられる」ということ。そして、今大会の結果はまさにその言葉通り。海星は長崎大会で5試合を戦い、全ての試合で2失点以内に抑えての勝利でした。

向井投手と宮原投手

その海星の投手陣で優勝への原動力となったのが、背番号1番の宮原明弥投手と背番号11番の向井恵理登投手。3年生右腕の二枚看板です。

宮原投手は身長182cmで体重90kgというガッチリした体格。剛腕タイプのピッチャーで、最速147キロのストレートとキレの良い縦スライダーが武器です。

宮原投手

一方の向井投手は身長180cm、体重69kgでピッチャーらしいスラっとした体格。最速144キロのストレートとともに変化球のコントロールの良さが持ち味です。

向井投手

2年生で味わった二人の挫折

1年生秋から2人の試合を見てきたのですが、それぞれ印象に残るエピソードがあります。

まずは宮原投手。1年生秋から堂々とした体格でマウンドに上がっていました。そして、球場に響くほどの大きな声を張り上げてボールを投げこんでいました。躍動感あふれる投球のあまり、ボールを投げる度に帽子がマウンドに落ちます。一球投げるごとに大きな身体で帽子を拾い直す。やんちゃな投手が出てきたな、という印象でした。

宮原投手

一方の向井投手。同じく1年生秋から公式戦に出場しますが、ピンチでも落ち着いたマウンドさばきを見せます。とてもクレバーな投手という印象です。

去年夏、2年生になった向井投手は長崎大会の準決勝で先発をまかされます。対戦相手は春夏連続の甲子園を目指して勢いに乗る大崎高校。その大崎相手に6回1安打無失点の好投を見せました。しかし、7回表の投球練習中に脚がつってしまい、治療のためベンチへ。そして、まさかの降板。その後、チームは2対1で敗れました。

向井投手

季節は秋に変わります。海星は宮原投手、向井投手が新チームの主力に。秋の長崎県大会を優勝して、九州大会は初戦突破。そして準々決勝の佐賀・有田工戦。宮原投手が11奪三振を奪う快投を見せますが、8回につかまり0対2で惜敗。あと一歩、甲子園には届きませんでした。

 

悔しさを胸に迎えた3年生の夏

今年、3年生になった宮原投手と向井投手。6月のNHK杯長崎県大会を優勝して、海星は第1シードで夏の大会を迎えます。海星の加藤監督は大会前から準決勝・向井、決勝・宮原でいくと決めていました。

長崎大会準決勝   海星 vs 大崎

準決勝の相手は去年と同じく大崎。先発を任された向井投手は緩急をつけて打たせてとるピッチングで大崎打線を翻弄。去年のように脚をつることもなく、9回を一人で投げ切り5対2で勝利しました。普段は落ち着いた雰囲気の向井投手ですが、今大会はここぞという場面で見せる気迫のこもった表情が印象的でした。

向井投手

7月25日は一年前の準決勝と同じ日付。ちょうど一年後に大崎にリベンジを果たしたことになります。「先輩たちに恩返しができました」とすがすがしい表情で試合後のインタビューに答える向井投手。その帽子のつばには「7.25 vs大崎2-1」という文字が見えます。そして「恩」という漢字が大きく力強く書かれていました。

そして迎えた決勝戦の相手は創成館。海星は満を持して宮原投手が先発。3年生になった宮原投手は力まかせに投げるのではなく、落ちついた投球を見せるようになっていました。宮原投手は6回1/3を投げて2失点で創成館打線を抑えます。

長崎大会決勝   海星 vs 創成館

この試合、宮原投手は帽子を落としたのは渾身の力をこめた場面のみ。NHK長崎放送局の野球解説者の宮脇茂さんは1年生の頃の帽子をポロポロ落とす投球に苦言を呈していましたが、3年生になった宮原投手の投球を「身体の軸がぶれなくなり、帽子も落ちなくなった」と評価していました。海星は宮原投手と向井投手のリレーで9対2で勝利して甲子園出場を決めました。

宮原投手

高校野球は3年間のストーリーがあります。1年生の頃、帽子を落としてばっかりだった宮原投手。2年生の時、脚をつって悔しい思いをした向井投手。その時があって、その時があったからこそ、3年生の今がある。その過程を少しだけ伝えたくて今回のWEB記事を書きました。宮原投手や向井投手だけではありません。あらゆる選手たちが様々な思いを味わいながら、3年の間に成長してきたことと思います。

宮原投手と向井投手

海星の加藤監督は「甲子園では楽しんで野球をして欲しい」と話していました。今の3年生は入学時からコロナ禍の中で部活動を送りました。宮原投手、向井投手をはじめ海星高校野球部のみなさん、甲子園の舞台は思い切り楽しんで白球を追ってください。そして、長崎県勢の夏の最高成績ベスト4突破を期待しています!

 

NHK長崎放送局リレー日記はこちら

 

  • 池田耕一郎

    NHK長崎放送局

    池田耕一郎

    2000年入局
    静岡→沖縄→札幌→大阪→東京→長崎
    スポーツや福祉を中心に取材

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