島原半島一周「シマイチ」自転車旅行 黄色いハンカチ訪ねて
- 2022年09月06日
坂道をゆく第14回 シマイチ
「坂道をゆく」の第14回です。この連載は長崎県内の坂道を全身で体感して、長崎の歴史や文化、自然の魅力を探っていこうという企画です。どうぞお付き合いください。
NHK長崎放送局 アナウンサー 池田耕一郎
高いところがあれば登りたくなり、一周できるところがあれば一周したくなります。そんな根源的な人間の性に応えるべく、全国の自転車乗りの間では〇〇イチというサイクルイベントが人気です。〇〇イチとは〇〇一周の略で、有名なところではビワイチ(琵琶湖一周)、アワイチ(淡路島一周)、ハマイチ(浜名湖一周)、イズイチ(伊豆半島一周)などがあります。
そして長崎県にも〇〇イチがありました。島原半島一周「シマイチ」です。ということで8月某日、雨上がりで湿度が蒸すなか、島原半島一周サイクリングに出かけました。
島原半島の付け根にある雲仙市愛野町をスタート。時計回りでぐるっと巡ることにします。全長100kmのシマイチの旅、今回は「緑色」「黄色」「青色」と島原半島の色彩鮮やかなルートをご紹介します。
緑いっぱい!雲仙グリーンロード
まずは「緑色」。スタートしてしばらくは内陸にある広域農道「雲仙グリーンロード」を進みます。
その名の通り、小さなアップダウンとともに緑いっぱいの景色が広がります。
島原半島は農業が盛んで、おいしい農産物をたくさん出荷しています。特にじゃがいもの生産は全国有数の地域です。長崎に来て野菜が本当に美味しいと思いながら、毎日モリモリ頂いています。
時計回りのルート上では常に右手側に雲仙岳が見えます。その変化を見るのも楽しみです。
一方で左側には海が広がります。遠くの諫早湾に堤防道路が見えています。
大三東の黄色いハンカチ
つづいては「黄色」を訪ねる旅です。
雲仙グリーンロードを15kmほど走って国道389号線との交差点を左折、海側に降りていきます。このあたりは雲仙市国見町。そう、サッカーで有名な長崎県立国見高校がある場所です。国見高校といえば全国高校サッカー選手権で戦後最多の6回の優勝を誇る強豪。黄色と青のユニフォームが当時のサッカー界を席巻しましたね。
ということで町のあちこちにサッカーボールが存在します。国見高校最寄りの多比良駅には立派なサッカーボールが鎮座しています。
ちなみ島原鉄道のシンボルカラーは黄色と青のライン。黄色い車体とブルーの帯は稲穂と有明海をイメージしているのだそうです。
さて、島原鉄道の多比良駅を右折して国道251号線を海沿いに進みます。
有明海につきでた突堤を訪問。コンクリートむき出しの構造物がとても良い雰囲気を醸し出しています。砂浜では流木の上で大きな鳶が羽を休めていました。
この先すぐに雲仙市から島原市に入ります。そして今回の「シマイチ」島原半島一周の大きな目的地に到着。スタート地点から25kmの島原鉄道の大三東駅です。
無人駅の改札を抜けると。
黄色いハンカチが風にはためきます。雲仙普賢岳の噴火災害の大火砕流から25年後に島原鉄道が地域を活気づけようと始めた取り組みです。黄色いハンカチには願いごとを書き、ホームに吊るしています。
この日も家族連れや若い女性グループなどの観光客が訪れては写真を撮ったり、黄色いハンカチを購入して願い事を書いたりしていました。7月にNHKで全国放送した「ドキュメント72時間」でも特集されていましたね。
一つ一つの願いごとを拝見しながら、この場所で書いた人たちの状況や気持ちを想像すると心が温かくなります。「ドキュメント72時間」はそんな小さな主語の人たちが発する一つ一つの言葉を大切にする番組でした。
日本一海が近い駅とも言われている大三東駅。「黄色の線から先は有明海です」と神代みさきさんが注意していました。この時間は潮が引いていましたが、駅のホームのすぐ裏は海。海の向こうは熊本県です。旅情を掻き立てられます。
さて、大三東駅を出発してさらに南下していきます。
スタートから30km地点。島原駅に到着。立派な雲仙岳や眉山を右手に眺めながら南へ走らせます。
水無川を渡って南島原市へ入ります。
南島原の青い空、青い海
南島原市に入ると「青色」の面積が大きくなります。シーサイドロードと広い空。この日は夏らしく南風。ということで、向かい風には難儀しました。
突堤の先には小さな鳥居が現れます。なぜ、こんなところに鳥居?と、そこに住まう人々の暮らしに思いをはせる時間が好きです。
スタートから50km地点。南島原市役所の前で誰かが座っています。
なぜ、こんなところに裸の人が?思わずブレーキをかけて停車。後に調べたところ、名前は「みそ五郎」といい、地域の昔話に登場する巨人だそうです。事前知識なしで出会うとなかなか、びっくりします。
小さな祠があったので寄り道をすると、ひまわりがいっせいに海の方を向いていました。しっかり東の方角を見据えていました。
スタートから65km地点。口之津港の様子です。南に行くにつれて、どんどん南国感が増してきます。
島原半島の南端を通過して、加津佐の前浜ビーチに到着。70km地点です。
この先は西海岸。今度は南風が追い風になって、ぐんぐん飛ばせます。南島原市から再び雲仙市へ。橘湾をはさんで海の向こうには長崎半島が見えます。
小浜温泉で癒され、シマイチ達成
スタートから85km地点の雲仙小浜温泉で休憩。こちらの「ほっとふっと105」という足湯、なんと全長105mもあります。
疲れが癒され最高の気分でしたが、あまりの気持ち良さに動けなくなってしまいました。
とはいえ日が傾きつつあったので出発。千々石の坂(標高160m)を上っていきます。途中にあった鳥居は土に帰ろうとしていました。
その後、スタート地点の雲仙市愛野町に到着して、約100kmの島原半島一周「シマイチ」達成。つたない文章と写真ではありましたが、少しでも島原の風を感じてもらえたら幸いです。
今回、長崎市から自走で行きましたので、トータルでは総距離164km、獲得標高2140m、飲んだ水4ℓくらいでした。
さて、ここまで記事を読んで下さった皆さんに島原半島を舞台にした番組をご紹介します!国見高校サッカー部、大三東駅の黄色いハンカチについて、9月10日(土)11日(日)の週末にNHK長崎で放送されます。
長崎スペシャル(再)
「若者よ自信を持て!サッカー元日本代表 大久保嘉人」
2022年9月10日(土)7:35~8:00(長崎県域)
長崎セレクト
「ドキュメント72時間~長崎ハンカチなびく海辺の駅で」
2022年9月11日(日)13:05~13:35(長崎県域)
ぜひ、ご覧ください!