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伊那の輸出専用米 海外で人気の理由とは?

  • 2024年04月22日

標高およそ900メートル。南アルプスと伊那山地に囲まれた伊那市長谷地区。
ここで、海外での販売に特化した特別なお米を作っているのは農業法人代表・細谷啓太さんと
法人のメンバーです。

皆さんが食べているのは、「カミアカリ」。
胚芽の大きさが通常の3倍ほどあり、健康志向の高い海外の人達に人気の玄米です。

2017年に始めた、輸出専門の米作り。
無農薬・無肥料。自然の恵みを最大限生かしたお米は、すぐに評判を呼びました。
アメリカ、台湾、シンガポールなどに販路を拡大。

1キロおよそ2000円と高級路線ですが、売り上げを伸ばし続けています。
さらに、白米需要の開拓も。こちらは、希少品種、ササシグレ。

さっぱりした味わいと、粒だちの良さが特徴で、香港の高級寿司店でしゃりに採用されています。

香港すし店
店長

皆さんすごいウケが良くて、他のお店と全然しゃりが違う。あと皆さんやっぱり無農薬無肥料で育てているってところにすごく着目していただいていて。
一言ズバリ「うまい!」。

世界が熱い視線を送る、メイドイン伊那のお米。
細谷さんたちは、地域の活性化にも一役買っています。

栽培の試行錯誤を続ける細谷さんたちに土地を貸し、支えてくれたのは地元の人たちでした。

ここに若い人が来て草刈ったり作業してると、やっぱりボサっとしてテレビなんか見てちゃいけんなと。真面目にやって、早く奥さんをもらってもらわにゃ。

細谷さん

どこに行っても、そのプレッシャーにさいなまれています(笑)

高齢化が進む長谷地区。
地域で暮らす人を呼び込まないと、米作りが続けられないと感じるようになった細谷さん。
街の外から人が集まるイベントを仕掛け魅力を発信してきました。

細谷さん

10年後20年後を見据えて、いかに若い世代が集落に入ってきてその集落を維持していく活動ができるかというのが、大きな鍵になると思いました。

地域に人を集めるため、新たにタッグを組むのが、料理人の長谷部晃さんです。
今年の春、細谷さんたちがオーナーとなり、ジビエ料理の食堂をオープンします。
目指すのは、地域の食の魅力を自分たちで発信する場所です。

長谷地区でジビエ料理など伊那の山の幸が売りの宿を営んでいた長谷部さん。
ここ数年はジビエや自ら採った山菜を使った料理の通信販売などをして暮らしていました。

近年人の手が入らなくなり、里山の魅力が衰えていくのを実感していた長谷部さん。
細谷さんの提案が里山の保全に繋がると感じたのです。

長谷部さん

山でお金が生み出せると言うことがあんまりないじゃないですか。
それを可能にしてる集団なので、それは希望だと思うんですよ。
そこと一緒に何かできるのは僕にとってラッキーですね。

1月下旬。この日開かれたのは、細谷さんと米作りの仲間たちを集めた試食会です。

食材は、クレソンやほうれん草など新鮮な野菜や、

鹿のもも肉など、伊那谷の山の恵みです。

さらに、あの香港の寿司店で使われていたササシグレが使われます。

薪(まき)がまでは、長谷部さんが里山保全のために間伐した薪(まき)を使います。
輸出用に作られたお米と、野性味あふれる食材のマッチング。
味わいは、いかに。

薪(まき)がまの調理で、お米の風味と、食材のうまみが最大限に引き出され、抜群の相性です。
長谷部さんは、玄米のカミアカリを使った一風変わったメニューも用意していました。

香ばしいおこげに、クレソンや熊の肉のハムがたっぷり入ったあんをかけた一皿です。

長谷部さん

こういう薪(まき)で焼くのと相性いいかもしれない。ポテンシャルをもうちょっと出してあげられる料理が作れたら。もうちょっと良くしたいなとは思っています。

細谷さん

本当に最初の一歩と思ってますので長谷部さんと一緒に成功に近づけながら、
また新たな展開を考えていけたらと思います。

世界が認めた米と、伊那の山の幸の新しい掛け合わせ。
食の魅力を発信し、過疎地域に人を呼び込む取り組みは大きな一歩を踏み出しています。

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