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小川村!おやき会議

  • 2024年04月16日

 

 

3月7日におやき発祥の地と呼ばれる小川村で行われた第5回信州もぐもぐmeeting。
今回のテーマはもちろん「おやき」です。
おやき事業者や料理人などおやきに関わる方々が集まり、おやきの魅力や今後の展開について語り合いました。

中央)料理人・稲田俊輔さん

今回は東京の南インド料理専門店で料理長を務めるなどしている、おやきが大好きな稲田俊輔さんをゲストに迎えミーティングがスタートしました。

目次

  1.実は高い!おやきのポテンシャル
  2.おやきを今後も残していくには?
  3.おやきの価格は安すぎる⁉
  4.おやきの魅力を発信

実は高い!おやきのポテンシャル

司会
徳谷柿次郎 さん

コロナもありましたし、インバウンドも流れてきて、若い子たちも地方の価値をもう一度見つめ直していて、長野に来たらおやきを食べたいっていうのがポピュラーになっていると思うんですね。そのあたりで変化したことはありますか?

左)権田公隆さん

小川村のおやきメーカー・代表取締役 権田公隆さん
行動制限がなくなって、どこかに行きたい、何かおいしいもの食べたいっていう部分が出てきたんじゃないかなと思います。こんな山奥にもおいしいものを探してきてくれることは非常にうれしいですね。

柿次郎さん

以前と比べていい感じに上がってきているなという感じはありますか?

権田さん

そうですね。いい感じで上がってきています。

柿次郎さん

伊藤さんは長野インターの近くにすごい建築の店舗を作られていて、オープンした後に3時間待ちとかになるそうで。すごいですよね。そのくらい話題になったといいますか…。手応えはどうですか?

右)伊藤拓宗さん

長野市のおやきメーカー代表取締役社長 伊藤拓宗さん
おやきの持っているポテンシャルをもっと県内の人にも県外の人にも理解してもらえると、更に価値が高まっていくんじゃないかと思います。インバウンドはそのきっかけになればいいなと思ってやっています。

権田さん

おやきのポテンシャルは高いですよね!

伊藤さん

中に入れる具材も色んな可能性がありますし、生地もそれぞれ特徴があって。県外の方に話してみるとおやきってそう考えると面白いですねって言っていただけるので、もっと高められるかなと思います。

柿次郎さん

おやきの中身で野菜とか、余った漬物を入れて食べるっていう元々の歴史がすごく今の時代に合っているなと思うのですが、稲田さんはまだまだいけるんじゃないかとか思ったりしますか?

右)稲田俊輔さん

南インド料理専門店 料理長 稲田俊輔さん
おやきはすごく普遍的でインターナショナル的な食べ物だと根本的に思っていまして。例えばインドや中国など、世界中の色んなところに穀物の皮で野菜だけを包んだものがあるんですよね。日本に限って言うと、色々な食べ物がうまみとコク重視でどんどん味の濃いものになっていて、そういうものがウケるという大まかな流れがあるんですけど。そんな中で一定数の人が反動的にむしろ逆のナチュラルな味わいで、僕はそれをあえて「うまみ控えめ、コク控えめ」と呼ぶのですが、それが好きな人もいて。おやきはそういう食に対して特に強い興味関心を抱いている人が求めているタイプの食べ物という風に言えると思います。肉まんやギョーザとかそういうものに比べたら決してメジャーではないかもしれないけれども、食に対して強い関心を抱いている人はむしろおやきのようなものにこれから着目していく可能性が高いのではないかと思いますし、おやきファンの一人としてそうであってほしいです。

柿次郎さん

なるほど!素晴らしいですね。
白澤さんはフランス料理からおやき業界に転職されたそうですが、おやきの魅力って何だと思いますか?

右)白澤岳士さん

大町市のおやき店 代表 白澤岳士さん
フランス料理ってちょっとハードルが高くて、なかなかふらっと入れるような感じではないじゃないですか。おやきのサッと買えて、どこにでも持っていける手軽さに魅力を感じて、自分の力を包めたらと思いました。

柿次郎さん

白澤さんは具材は何を包んでるんですか?

白澤さん

やたらとチーズを包んでいますね。あとは自家製のベーコンとかですね。
うちでは小麦粉に地粉とフランスパン用の小麦粉とイーストを少し入れて、よりパンっぽくしています。新しいけど懐かしいみたいな、新しいクラシックを目指しています。

稲田さん

おやきが外国人の方にもきっとうけるだろうと思った時に、真っ先にフランス人が一番喜ぶんじゃないかなと思ったんですよ。フランスの方の食に対する価値観的に合うのではないかと思いました。

柿次郎さん

瀧澤さんと太田さんは最近おやき事業を始められたそうで、どういったおやきを作っているんですか?

左)太田かずみさん     右) 瀧澤翼さん

安曇野市のおやき店 瀧澤翼さん
そうです!まだまだ新参者です。
うちは基本的には灰焼きでやっています。僕の地域だと年配の方が食べるイメージが強いので、
若者向けの味を作ってみたりとか試行錯誤をしながらやっています。

安曇野市のおやき店 店長 太田かずみさん
当店では私も大好きなおからのおやきなども作っています。

柿次郎さん

大西さんは米粉を使っているそうで、おやき界では革命じゃないですか?

中央)大西裕次郎さん

松本市でおやき販売 大西裕次郎さん
僕はおやきが好きだったり、おやきを食べる習慣がある人以外の人に食べてもらえるおやきって何だろうなって考えていて。実際に自分の中学生の娘はおやきを食べないんですよね。僕はおやきが好きでよく食べるのですが、子どもはそもそも野菜が嫌いだったり、灰焼きとかは食感がハードだったりして食べないんですね。どうしたら食べてくれるかって考えて、子どもはもちもちしたものが好きなのでもちもちしたおやきを作りました。具材もチーズやチョコレートなどスイーツ寄りのものを作っています。既においしいおやきがいっぱいあって、おやき好きの人達の中で戦うのはちょっと難しいと思ったので、おやき好きではない人達に向けて作ってみました。

大西さんの米粉を使ったおやき
権田さん

しょっぱいおやきもやっているんですか?

大西さん

やっています。野沢菜とかもあります!

柿次郎さん

小松さんは道の駅で販売を始めて23年ですか?

中央)小松はま江さん

小川村道の駅の飲食店 店長 小松はま江さん
地元の皆さんが長野オリンピックの時に売り始めてそれを途中から引き継いだので23年になります。今インバウンドのお客様が増えていて、うちの場合は観光バスが入れないので、グループの外国の方が来られます。おやきはやはり珍しいようで、食べに来てまた買いに戻ってきたりとか。


おやきを今後も残していくには?

小松さん

小川村では小中学校の給食で毎月食育でおやきの日というのがあって、おやきを出しています。

権田さん

製造所の人達がその日にどこが何個って言って作っていますね。

小松さん

中身の指定があってね。

権田さん

食べたいおやきのアンケートをとるんだよね。

小松さん

そうですね。玉ねぎやカボチャとか。色んなおやきを子供たちのリクエストで作らせていただいています。

伊藤さん

小川村は長野県内で一番おやきが文化として根付いていて、それを継承しようという動きがありますよね。

小松さん

お家で作らなくなってきたので、業者さんのおやきで…。

伊藤さん

数十年前までは基本的にはまだ家庭で作っていて、それがだんだん家庭で作るおやきと買うおやきが半々になってきて、今ではほとんどが買うおやきになっている。環境が変わっていく中でどう文化として残していくかは今までと違う課題かもしれないなと思います。

権田さん

子どもたちに食べさせるというのは大事だと思いますね。

柿次郎さん

家でおやきを作らなくなった背景には何があるんですか?

中央)小出陽子さん

信州おやき協議会会長 小出陽子さん
おやきは作るのに手間がかかるんですよね。中の具材を刻んで味をつけて、そこからまたお粉をこねて、包んで焼いたりふかしたり…。昔は食べるものがお粉と野菜しかなくて、作らなければ食べられなかったんですけど、お米の品種改良で寒冷地でもお米が栽培できるようになったりとか。電化製品が普及してきて、主婦が外へ働きにでられるようになると、こういう手間がかかるものは作らなくなってしまった。おやきは買うものという風になってきて。今の若い人たちは手作りするよりも100円~150円出して買う方が早いという風潮になりつつある。やっぱりそれはよくないということで、おやき作りを親子で体験できるような講座を開いたり、色んな所で講座をやらせていただいています。一定数お子さんでもおやき大好きで、自分で作りたいという子たちもいるので、そこをもっと育てていくことが業界としても大事かなと思います。

柿次郎さん

そもそもおやきは、このあたりではお米が作れなかったから代わりに小麦を育てていたからなんですね。

小松さん

昔はみなさん いろりを持っていてね。それで焼くのが当たり前だったんですよね。

柿次郎さん

日常生活の中でついでにできる工程が多かったのがどんどん利便性が上がっていって、今の家の形になったら結果的に工程が増えて手間がかかるものになってしまったということですね。

伊藤さん

家庭で作られなくなったけど、長野県では当たり前にスーパーやコンビニにおやきが売っていて、例えばお盆におやきを買ってみんなで食べる文化はまだ残っているというのは県外の人から驚かれたりしますね。

小出さん

年中行事の中でも必ずおやきを食べる日ってあるんです。今でも残っているのはお盆ですね。なのでお盆はおやき屋さんに行列ができます。

稲田さん

年越しそばみたいなものですね!

伊藤さん

日常食でありながら晴れの日の食べ物でもあったんですね。

小出さん

それがあるから他の郷土食とは違って現在まで続いてきています。

稲田さん

特別な日のおやきは中身に何を入れるんですか?

小出さん

中身は昔はごちそうだったあずきと旬の野菜のもの。お盆はなすですね。

小松さん

今でも小川村では冠婚葬祭の時にも食べたりします。

稲田さん

これはおやきに対して抱いていた疑問なのですが、小麦粉だけのもの、そば粉だけのもの、小麦粉とそば粉をブレンドしたものがありますが、これは地域性なんですか?それとも好みなんですか?
あとブレンドするときの比率はどうやって決めているんですか?

小出さん

長野県の中で地域性があります。栄村は小麦も取れないし、米も未熟米が多かったので米粉にして作られていた。小谷村ではそれさえも作れなくて、そばとじゃがいもを混ぜた生地で作っていたそうです。

稲田さん

そんなのがあるんですか!おいしそう…

小出さん

それがあんまりおいしくないんですって。そこに小麦粉が入るとおいしくなるそうなんですが、小麦粉がないのでじゃがいもとそば粉のものを食べるしかなかったということで、小谷村ではそば粉のおやきが作られるようになった。比較的小麦のとれる中信部分では小麦粉のおやきができたということなんですね。その中で水分量で硬くこねるところとやわらかくこねるところがあって、業者さんや家庭で色々ブレンドしてオリジナルの生地ができています。

稲田さん

その中で地域ごとのしこうが生まれてきたんですね。

小出さん

善光寺平は肥沃(ひよく)で昔は二毛作が盛んで、小麦は主食でお米は換金作物ということでおやきが作られてきている。善光寺平の中心地では二毛作の結果が粉ものっていうところもあります。

権田さん

あと、皮と具材の比率もお店や地域によって違いますよね。その地域で小麦がいかに大事にされているかが分かりますね。小麦があまりとれなかった地域では、できるだけ小麦の使用量を減らすために薄皮だったりします。

稲田さん

そうなんですね!おいしくするために薄皮にしていると思っていました。

おやきの価格は安すぎる⁉

稲田さん

思ったんですけどおやきって安すぎませんか?県内消費だったらいいのかもしれないですが、県外の方が通販や旅行に来た時に買うってことを考えると、異常に安くてびっくりします。手間もかかっているだろうしあんなにぎっしり野菜も入っていて、これはお土産物のビジネスとして損をしていないだろうかと心配になりました。駅でジビエの鹿のおやきが220円程で売られているのを見て、
「いや、これは580円でしょ!」と思いました(笑) 
ジビエも野沢菜もかぼちゃもふきみそも全部ほぼ同じ値段なんですけど、ふきみそは倍でいいし、ジビエは3倍で良いし…みたいな。いやらしいけど、県内消費と観光の消費ではサイズとか価格とかは別にしないと作る人は大変だと思いましたね。

柿次郎さん

白澤さんは県内の音楽フェスに出店されてましたよね?

白澤さん

そうです!1個500円ほどで出しました。

柿次郎さん

僕も買って食べたんですけどめっちゃおいしくて。フェスに来るそんなにお金に余裕がない若者たちもおいしいおやきを食べたいということで買っていて、売り切れていましたよね。大手から価格をあげていかないと、みなさん追随できないとかそういったことはないですか?

伊藤さん

うちは比較的価格が高い方なのですが、去年400円台のおやきを作りました。
おやきというと100円~200円ほどのイメージですが、400円のおやきもあるということを発信していくことが今後のためにも必要だと思っています。

稲田さん

本当にそうですよね。全部を上げる必要はなくて、安いのもあるけど高いものもあるんだよという方がそれだけ価値のある食べ物なんだという説得力が生まれますよね。売り場に同じような大きさや形で並んでいても価格の差がある方が今っぽいですよね。それこそインバウンド向けにとんでもないやつとかね。ロブスターが入ってて、1個2800円ですみたいな…(笑)極端な話そういうのもあっていいんじゃないかと思います。

小出さん

価格については何となくおやき業者同士でも触れてはいけない部分みたいなところがあって。ターゲットがそれぞれに違うので、地元のお客さんメインのお店だと200円いっちゃったら買ってくれないみたいなこともあったりとか、顧客によっても違うというのもありますね。

稲田さん

確かに地元密着なのか観光客向けなのかによっては相場感が全然違いますよね…。
あざみのおやきとかは県外から来た人からしたらあざみはキャビアと同じくらいの価値を感じるので、いくら出しても食べたいなと思います。

伊藤さん

そこに価値を感じて頂ける方がいることはとても大事だなと思います。おやきは使っている食材の原料が安いじゃないですか。いくら手間がかかっていてもお客さんは原料に何を使っているかに価値を感じるというか。値段を高くしようとすると高い材料を使わなくてはいけないみたいな安易なことでもないですよね。

柿次郎さん

県外の人が知っている野菜の価格と地元の人の感覚は違いますもんね。作っている人もいるかもしれないし…。そこからどう抜け出すかも重要だと思います。

おやきの魅力を発信

柿次郎さん

観光の方は長野に来て、おやきというひとくくりの中から具材で選んで食べてそれで、おいしいの最大値が決まるじゃないですか。もっと色々なおやきがあることを広げる情報発信が必要だと思ったのですが…。

伊藤さん

こんなに生地や具材や作り方にそれぞれ特徴があるのに、県外の方からするとおやきってどこかで食べたものがおやきの印象になってしまうというか。色んなバリエーションがあることを発信していきたいですね。

小出さん

私、この間宇都宮ギョーザを食べに行ったんですけど、そこでは色んなギョーザ屋さんが1か所に集まっていて好きなギョーザを買って食べられるんですよ。これのおやきバージョンができたら楽しいだろうなと思いました。

稲田さん

それは絶対欲しいですね。地域ごとのおやきを食べ比べができたらいいですね。
確かに1種類のおやきしか食べずにあんまり好きじゃないなと思っている人は世の中にたくさんいそうですね。それはもったいない!

伊藤さん

駅の中とかでも色んなおやきを集めたイベントをやりたいですね。同じ具材でもメーカーさんによっても違うっていうことを発信していきたいです。


ミーティング終了時には、おやきをこれからも守り抜いていこうと一致団結する姿もみられ、
おやき事業者の方同士がつながる機会となったことが感じられました。おやきの今後の動きに注目です!(もぐしんスタッフ)

  • 川浦光流

    長野コンテンツセンター

    川浦光流

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