宮崎学園 甲子園初戦へ 元ホークス徳永勝利さんがマウンド整備
- 2023年08月10日
熱戦が続く夏の高校野球。宮崎代表・宮崎学園は大会6日目の8月11日に栃木代表の文星芸術大学付属高校と対戦します。春夏通じて初めて甲子園に臨むチームを支えるのは学校関係者だけではありません。選手にとってこれ以上ない、“匠の技”のサポートを取材しました。
(NHK宮崎アナウンサー 道上美璃)
甲子園出場を決めた歓喜の瞬間から3日がたった7月28日。
宮崎学園のグラウンドで選手が最終調整をする横で、汗を流してある作業をしている人がいました。
徳永勝利さん。プロのグラウンドキーパーです。
宮崎学園のマウンドを高校野球の「聖地」に近づけていました。
できるだけ甲子園と同じような感触になるように作っています。「甲子園のマウンドはこういうもんだ」って、高校生にわかってもらえればと思っています。
徳永さんはプロ野球・ソフトバンクで36年間、グラウンドの整備を担当。この春、勇退しました。
常勝・若鷹軍団を足元から支えた文字どおりの縁の下の功労者です。
徳永さんには、本格的な野球経験はありません。
地元・福岡で就職活動中、たまたま誘われた仕事がホークスのグラウンド整備でした。
先輩の動きをまねて、無我夢中で技術を磨く日々。
少しずつチームの信頼を得ていきました。
徳永さんが整備したグラウンドで、ホークス日本一の原動力へと成長した選手も数多くいます。
グラウンドキーパーの肩書きはいつしか、徳永さんの誇りになっていました。
ホークスのために働く最後の日。選手にあるお願いをしました。
試合前にあいさつをさせてもらうタイミングで、「きょう僕が最後なので勝ってよ」って、言っちゃったんですよね。
ソフトバンク対楽天の試合は5回が終わって両チーム無得点の接戦。この試合が始まるまでホークスは今シーズンホームで無敗。「選手にプレッシャーをかけてしまったのでは…」徳永さんが不安な気持ちを抱える中、心揺さぶられる展開が待っていました。
栗原選手が満塁ホームランを打ってくれて、本当にうれしかったです。
サプライズには、続きがありました。
栗原選手
いつも僕たちが気持ちよくプレーできるのは徳さんのおかげです。写真撮影の時に、徳さんをここに呼んでもいいですか。
グラウンドキーパーがお立ち台とか本当にありえないです。
前代未聞ですよね…。
勇退後、徳永さんが第二の人生の舞台に選んだのは、ソフトバンクのキャンプで毎年訪れていた宮崎。
今度はアマチュアの世界で、宮崎の球児たちを支えたいと移住しました。
その初仕事が宮崎学園でのマウンドづくり。「甲子園に向けての調整に使ってほしい」とマウンドを無償で作り替えることにしたのです。
使うのは甲子園と全く同じ粘土質の土。学校の土に比べ、固さと粘りがあるこの土を土台の部分に敷き詰めます。
その上に別の土を重ねて、高さや傾斜も甲子園仕様に。
最後の仕上げとして軽トラックでしっかりと踏み固め…
高校野球の聖地“甲子園”を再現したマウンドが完成しました。
本番の感触をちょっと先取りした河野信一朗投手、思わず「おー、投げやすいっす」と声が漏れます。
河野投手
踏み込んだときに動かないところがいいです。
ついた足がぶれないので、投げ終わりの動きがちゃんとできます。
夢の舞台を悔いなく楽しんでほしい。
徳永さんの願いです。
思い切ってプレーができるグラウンドを作ると、選手たちはどんどんうまくなると思っています。いつもより少しだけいい投球ができたとか、いい送球ができたとか、いい走塁ができたとか、それが「野球がうまくなる」ことにつながるので、学校を甲子園みたいにすることで、毎日の練習場所がそういう環境になったらいいなと思います。甲子園ではなんとか1勝でも多くあげてほしいです。