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台風14号 早期避難で犠牲者減少か?平成17年台風と比較・検証

  • 2022年09月28日

今回の台風14号について、専門家は13人が死亡するなどした平成17年の台風14号と同じか、それ以上の雨が山間部で降った可能性を指摘します。それでも平成17年と比べて被害を抑えられた要因について、専門家に取材しました。

平成17年と比べて犠牲者が少なかった理由は?

防災工学が専門の宮崎大学の村上啓介教授に話を伺いました。

村上教授はアメダスの観測地点では、山間部でも平成17年の雨量のほうが多くなっているものの、諸塚村の浸水の状況やダムへの水の流入量などから山間部の観測されていない場所では平成17年の台風より、雨量が多くなった可能性があり、浸水被害につながったのではないかと指摘しています。

村上啓介 教授(宮崎大学・防災工学が専門)
諸塚村の周辺で耳川の下流から上流に向かって視察したが、河川整備でかさ上げされたところも浸水しているし、下流側ではより広い範囲で浸水しているところもあり、平成17年と同じかそれ以上の被害が起きている。

一方、平成17年に宮崎県を襲った台風14号では今回を上回る13人が死亡し、26人が重軽傷を負ったほか、住宅の損壊や浸水の被害が9000棟以上に上りました。今回の台風では、死者やけが人が平成17年と比べて減っていることについて村上教授は避難のハードルが下がったことが大きいのではないかと話します。

具体的には、台風の勢力やルートなどの予測で「備え」が可能なため情報などをもとにした避難への事前の準備ができたことや、自治体によっては避難所のデジタル化が進み、避難状況がリアルタイムで確認できたことが早めの避難につながったと考えられるということです。

村上教授は「今後は雨の降り方もより厳しいものになり、災害のリスクは高まっている。ふだんから備えることはもちろん、命を救う上では早期避難をすることが極めて重要だ」と指摘しています。

都城が取り組んだ避難所のデジタル化

こうした中、今年度から避難について新たな取り組みを始めたのが都城市です。この結果、都城市では大雨特別警報が出される前に、市民の中で避難した人のおよそ3分の2がすでに避難を終えていました。

早めの避難が実現した要因には、市内全域に避難指示を前日の夕方から出していたこともありますが、それ以上に市民の避難へのハードルを下げる取り組みを始めたからです。

それがこちら。避難所に用意されているタブレットです。

受付時間を短縮するため、避難した人は運転免許証やマイナンバーカードを提示するだけで避難所を利用できるようにしました。身分証明書の情報をこのタブレットで読み取ることで、住所や氏名などを手書きで記入する必要がなくなりました。

そしてこのシステム、実は自治体側にもメリットがあります。市が避難者の情報をリアルタイムで把握できるため、避難所の混雑状況をすぐにホームページなどで伝えられるようになりました。

どこが満員になっているのかインターネットを見れば分かるので「近くの避難所では避難している人が増えてきている」など避難する際の判断材料にもなります。
定期的に、このシステムの住民向け説明会を行っていて高齢者などをはじめ、この新たなシステムへの理解を深めてもらうことで、今回の台風のような、いざというときに市民が活用できない状況に陥らないようにしています。

久保昌之 主査(都城市危機管理課)
最寄りの避難所の避難者数など自治体に問い合わせないと分からない状態に比べて避難への敷居を下げられたのではないかと思います。

こうした避難所の情報のデジタル化について、専門家は早めの避難を後押しする多様な情報をさらに自治体などが提供していくことが求められていると指摘します。

村上啓介 教授(宮崎大学・防災工学が専門)
最近の避難行動を見てみると車での避難は非常に増えています。しかし、やっぱり車での避難は危険を伴います。ですが早めの避難が実現できるのであれば車での避難も、選択肢の中に入ってきます。システムの中に、例えば車での避難が可能か不可能かなどの情報が付加されていけば、より避難しやすい状況になっていくのではないかと思います。避難しやすいような情報を出していくことで、まだまだ避難のハードルは下がると思います。

今回の台風14号の教訓を今後にどう生かしていくのか、考えていくべき課題は多いと感じます。

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