日銀 金融緩和政策変更 茨城 住宅ローンに影響は?経済は?
- 2024年03月19日
日銀は、19日まで開いた金融政策決定会合で、「マイナス金利政策」を解除し、金利を引き上げることを決めました。日銀による利上げはおよそ17年ぶりです。私たちの暮らしや経済への影響について取材しました。
(水戸放送局 安永龍平 小野田明 記者)
NHKプラスで配信中 3/26(火) 午後7:00 まで
17年ぶりの利上げ 正常化に大きく政策転換
日銀は、19日までの2日間、金融政策を決める会合を開き、大規模な金融緩和策を変更することを賛成多数で決めました。
具体的には、2016年1月の導入決定以来、大規模な金融緩和策の柱となってきた「マイナス金利政策」を解除します。
その上で、短期金利の操作を主な政策手段とします。
具体的には、日銀当座預金に適用する金利を0.1%とすることで、金融機関どうしが短期市場で資金をやり取りする際の金利「無担保コールレート」を0%から0.1%程度で推移するよう促すとしています。
日銀による利上げは2007年2月以来およそ17年ぶりです。
また、2016年9月に導入し、短期金利に加えて長期金利を低く抑え込んできた長短金利操作=イールドカーブ・コントロールと呼ばれる金融政策の枠組みを終了します。
ただ、これまでと同じ程度の国債の買い入れは継続し、長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に国債の買い入れ額を増額したり指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指値オペと呼ばれる措置を実施したりするとしています。
このほか、金融市場に大量の資金を供給する目的で行ってきたETF=上場投資信託とREIT=不動産投資信託の新規の購入も終了します。
企業が資金を調達するために発行する社債やCP・コマーシャルペーパーの買い入れも段階的に減らし、1年後をめどに終了するとしています。
政策変更の理由について、日銀は、賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になったとしていて世界的にも異例な対応が続いてきた日本の金融政策は正常化に向けて大きく転換することになります。
ただ、マイナス金利政策を解除しても追加の利上げは急がず当面は緩和的な環境を続ける方針です。
住宅ローンに影響は?
日銀の政策変更、私たちの暮らしにはどのような影響を与えるのでしょうか。
まず、日銀は2022年12月に「長期金利」に関する政策を修正し、これにより期間の長い、国債の金利が上昇しました。
その後、金融機関の間では、住宅ローンの固定金利や期間の長い定期預金の金利を引き上げる動きが相次ぎました。
例えば、常陽銀行の場合、10年固定の住宅ローンの金利は最も優遇する場合で2022年4月は1%でしたが、その後、上下しながら今月は1.4%に上昇しています。
一方、期間が10年の定期預金についても、去年11月に金利を引き上げ、0.2%にしています。
日銀は19日の金融政策決定会合では「短期金利」の上昇につながるマイナス金利政策の解除を決めました。
一般的に短期金利は住宅ローンの変動金利に影響を与えるため、住宅ローン利用者の7割以上が選択している変動金利を引き上げる動きが出てくる可能性があります。
常陽銀行では、変動金利のうち最も優遇する場合の利率を0.625%としていて、2009年2月以来、この水準は変わっていません。
常陽銀行では急激に変動金利が変わる可能性は低いとしつつも、市場金利や経済環境を踏まえて、金利をどのように設定するか検討していきたいとしています。
常陽銀行営業企画部の河西大輔次長は「日銀はきょうの発表で『段階的に』とか『徐々に』利上げするというニュアンスを伝えていて、経済環境が急に大きく変化するのことも考えづらいと思っている。どの水準で住宅ローンを提供するかはその都度、判断するが、住宅ローンは生活に直結するので相談に乗るなど可能なかぎり安心を提供していきたい」と話しています。
中小企業の現場 「固定金利」選択も
日銀が金融緩和政策を変更すれば今後、金利が上昇していくと考えて茨城県内の企業では返済額を確定できる固定金利で融資を受けるケースも出てきています。
守谷市の自動車部品などを製造するメーカー「宏機製作所」は、運転資金を確保するため今月、政府系金融機関の商工中金から返済期間は7年、固定金利で5000万円の融資を受けました。
商工中金では固定金利の場合は、変動金利に一定の金利を上乗せしていて、この会社ではこれまで基本的に変動金利を選択していたということです。
一方、日銀が金融緩和政策を変更すれば、今後、金利が上昇していくと考えて今回の融資では固定金利を選択したということです。
大賀奉昭会長は会社の応接室で日銀の金融政策変更のニュースを確認し、『金利のある世界』で経済がどのように変化するのか思いを巡らせていました。
大賀会長は「これからますます金利は上がると考え、変動金利だと連動して利率も上がり厳しいと思ったので固定金利でお願いした。賃上げも控えるなか、中小企業を取り巻く環境はこれからさらに厳しくなると予想している。今後、固定金利を選ぶか、変動金利を選ぶかは市場の状況を考えながら決めていくしかない」と話していました。
投資を慎重に判断する会社も
一方、追加の投資を慎重に判断するという会社もあります。
石岡市に本社を置くグランピング施設を運営する会社「アムラ」は地元の金融機関から5000万円の融資を受け、2023年5月に筑波山の中腹に施設をオープンしました。
会社では、子どもの遊び場やサウナなどの施設を整備して事業を拡大することを検討しています。
一方、日銀の金融緩和政策の変更で金利が上昇する可能性があるのではないかと、追加で融資を受けて、投資をすることには慎重になっています。
19日は経営診断の専門家が訪れ、会社の常務が今後の事業戦略や融資の必要性などを相談していました。
会社では金利の動向を見ながら子どもの遊び場は手作りにするなど適切な規模の投資を見極めていくことにしています。
グランピング施設を運営する会社の常務のチメッツェレン・アマルゾルさんは、「率直にいうと金利はこのまま上がって欲しくない。今後、金利が上がるとしても中小企業の声も聞いて根拠のある判断をしてほしい」と話していました。
茨城県よろず支援拠点の吉村千鶴子コーディネーターは「今後は資金繰りに悩む企業が出てくるかもしれない。金利が上がっていく前に何ができるか考え、支援していきたい」と話していました。
日銀は今後も緩和的な金融政策を維持することにしていますが、過去には利上げを行ったあとに景気が低迷したこともあり、金融政策がどのように県内経済に影響を与えるか注視していく必要があります。
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