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「茨城の時給は低い?」千葉・埼玉と最低賃金に差 人手不足実態

賃金引き上げに課題 ターゲット絞る会社も
  • 2024年03月01日

千葉や埼玉など南関東との賃金格差などを背景に、茨城県では県外への人材流出を指摘する声があり、人手不足が深刻な状況になっています。
人手の確保のためには賃上げが基本ですが、コストの上昇などでなかなか上げられない企業もあります。県内企業の実態を取材しました。
(水戸放送局 記者 安永龍平)

NHKプラスで見逃し配信 3/7(木) 午後7:00まで

時給に格差 隣県より強い“人手不足感”

こちらは茨城県と隣接する南関東の自治体の平均時給です。
民間の調査会社のまとめによりますと、1月の平均は茨城県では1065円。
これに対して千葉県は1153円、埼玉県は1143円となっています。

また、直近・去年12月の有効求人倍率を見ると茨城は1.53倍なのに対して、千葉は1.19倍、埼玉は1.14倍と茨城の方が高くなっています。

つまり、茨城県では企業が採用しづらい状況になっています。

「時給が高いので…」

実際にまちの人はどう感じているのか。県境にある取手市と守谷市で聞きました。

取手市
大学生

「千葉県柏市でアルバイトをしています。学校がそっち側なので学校の帰り道に寄れるところが良いなと思ってそっちにしました」

取手市
パート

「私は県内と県外で両方パートをしていますが、同じような内容で100円くらい違います。ちょっと橋を渡り県外に出るとこんなにも違うのかなという感覚はあります」

守谷市
大学生

「千葉のテーマパークでアルバイトをしていました。時給が高いので効率よくお給料が稼げるというところで地元よりはそっちに出ちゃうという考え方が多いのではないかと思います」

人手不足に“苦悩” 時給の引き上げも苦慮

千葉県と隣接する取手市にある米菓の製造・販売を行う会社です。

工場で働く人の確保に苦労しています。

工場近くに新設した売り場

4年前に始めた店舗販売は好調ですが、需要に見合った生産能力を確保することが課題になっています。

池田裕児代表

「取手市が千葉県と県境なのでどうしても潜在的な働き手が都内や千葉に行ってしまうということはあると思います。商品の引き合いがすごく多くなっているので、生産をしっかりさせたいと思っていますが、需要と供給のバランスがうまくいっていないのが現状です」

工場では時給960円から1000円程度でパート10人が勤めています。

人手の確保のために、さらなる時給の引き上げが必要と考えていますが、ネックになっているのが原材料や資材の価格上昇です。

もち米

特にもち米の価格は2月に購入した分は去年の1.5倍に値上がりしています。

会社では、ことし4月に商品の値上げを検討していますが、コスト増加分に対応するもので時給に反映させることは難しいとしています。

池田裕児代表

「もち米がすごく値上がりしていて、それに追い打ちをかけるように油や段ボール、袋などの資材があがっているので、賃金を上げる要素があまりないというのが正直なところです。しかし、上げないと求人にも関わってきます」

ホワイトボード

会社では、人手確保に向けて工夫を重ねています。

工場に設置したホワイトボードに名前を記入するだけで休日を取得できるようにしています。

池田裕児代表

「伝統の作り方を残していきたいですが、それを残してくれる人が足りないというのが現状なので、なんとか人を確保して、おいしい文化を残していきたいです」

子連れ出勤導入 働く環境整備で人手確保の会社も

時給の引き上げは難しくても、戦略的に働く環境を整備することで、人手確保につながっている会社もあります。

つくば市にある、授乳服の販売やカフェの運営などを行っている会社です。
採用を進めているのが顧客の気持ちを理解しやすい「子育て中の女性」。

このため、20年以上前に導入したのが子連れ出勤制度です。

子育て中の従業員

子育て中の従業員
「一緒に子どもを連れてきて、働けて、いろんな人に会えて話せるというところがとても楽しいです」

岩城尚子さん

この制度があることで、パートから正社員になった人もいます。

社員の岩城尚子さん(44)。この日は中学2年生の長女と出勤していました。

中学2年生の長女は勉強中

次女が生まれた35歳のとき、パートとして会社で働き始めましたが、
子連れ出勤ができることに魅力を感じ、正社員への転換を希望しました。

岩城尚子さん
「乳児を預けて働くというよりはもう少し一緒に居たいと思いました。今は子連れ出勤制度を導入している会社も多いかもしれませんが当時はあまりなかったので魅力に感じました」

会社では、子育て世代の従業員がいることで、新たな商品開発のアイデアにつながるなど、好循環も生まれているといいます。

光畑由佳 代表

代表の光畑由佳さんです。
働く環境を整備するにしても中小企業にとっては限度がある中、働き手のターゲットを絞ることで、効果的な対策が打てると指摘しています。

光畑由佳代表

「もちろん給料が高いことに越したことはありません。ただ、それだけでは小さい会社、地方の会社は太刀打ちできないところがあると思います。例えば、小さい子どもを育てている母親など、働く入り口に立てないような人たちに対して門戸を開くことで優秀な人が来る可能性があるとしたら、企業にとってもいい選択肢ですし、働く人にとっても幸せな働き方になると思います」

賃上げを巡る県内の動き

隣県と時給の差がある中でまずは賃金をどう上げていくかが大きな課題です。

最低賃金をめぐっては、大井川知事が、茨城労働局の審議会に対して、「経済実態の反映や近隣他県との格差是正に配慮されたものとは考えられない」と異例の公開質問状を送っています。

また、今まさに進んでいる春闘で、連合茨城は、基本給を一律に引き上げるベースアップ相当分として3%以上の賃上げを行うよう県経営者協会に要望しています。

正社員、そしてパートやアルバイトでどこまで賃上げが進むかが焦点です。

企業ごとにさまざまな戦略

一方で、賃上げだけが人手の確保の手段ではありません。

取材した会社のように獲得したい人材に狙いを絞ることも有効な手段と言えます。

中小企業庁は中小企業の人手不足への対応事例集(中⼩企業・⼩規模事業者の⼈⼿不⾜への対応事例集)を毎年公表しています。

具体的には、
▼未経験者でも働きやすいように求める業務を見直す(建設)
▼中高年にターゲットを絞り、この年齢層が多い採用説明会に参加(警備)
▼採用専門ページを作る(金属加工)
さまざまな事例が掲載されています。

人口減少が加速する中、人手不足は今後さらに深刻化していくと見られます。

「人事・労務にお金はかけられない」と中小企業ではよく言われますが、企業の持続的な成長のため必要な投資と考え、賃上げや労働環境の整備に取り組む必要があると思います。

(NHKプラスの配信終了後は以下の動画をご覧ください)

  • 安永龍平(記者)

    水戸放送局

    安永龍平(記者)

    香川県出身・2019年に入局 初任地は北九州局 現在は県政や経済を担当。県外との賃金格差は茨城にとって大きな課題なので引き続き取材します。

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