茨城県 令和6年度予算案 いくら? 人口減少対策が柱
- 2024年02月26日
茨城県が公表した新年度・令和6年度の当初予算案。私たちの生活にも密接に関わっています。
人口減少対策を大きな柱に、基幹産業である1次産業への支援や茨城の国際化に関する事業が盛り込まれました。具体的な事業の内容や財政状況について詳しく見ていきます。
(水戸放送局 記者 安永龍平)
NHKプラスで見逃し配信 3/4(月) 午後7:00 まで
一般会計の総額は過去4番目の規模
まずは一般会計の総額です。
1兆2511億9000万円と過去4番目の規模になっています。
新型コロナウイルス関連の経費が減少したことで、今年度より3.2%減少しました。
続いて歳入です。
歳入のうち多くを占めるのが県税で4180億円となっています。
今年度と比べると2.1%減少しました。
国が物価高騰対策として行う定額減税で個人県民税が減少することや、資源価格の上昇が落ち着いたため資源輸入額が減り地方消費税も減少することなどが主な要因です。
続いて、歳出。
人件費が定年退職者の増加で退職手当が増えるため今年度と比べ6.5%増えています。
▼障害者支援施設である「県立あすなろの郷」の老朽化に伴う再編整備、
▼新たな産業廃棄物処分場関連、
▼牛久沼の越水対策などに費用がかかるため、投資的経費も2.8%増えました。
予算編成4つの方針
県は予算編成にあたり、「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現のためとして「4つのチャレンジ」を掲げています。
人口減少対策が大きな柱
具体的な事業を見ていきます。大きな柱が「人口減少対策」です。
特に外国人との共生に重点を置いていて、外国人材の確保・育成や生活支援についての事業が多く盛り込まれています。
具体的には、
▼留学生に県内企業への就職を促すため企業の視察ツアーやインターンを行う事業を実施。
▼外国人を支援するサポーターがそれぞれの出身国のことばで、生活相談をする事業。
▼介護人材の受け入れ支援も強化します。
こうした事業に3億7500万円を計上しています。
1次産業への支援
このほか、目立ったのが基幹産業となる1次産業への支援策です。
新しく漁業を始める人に対して、漁船や設備などの導入を支援する事業。これは東京電力・福島第一原発の処理水放出による、国の風評対策の予算を活用しています。
▼また、ブランドとして新たに打ち出している「常陸牛 煌」の販路拡大や生産者への支援も強化します。
このほか、食を通じて観光の底上げを図ろうと実施する「シン・いばらきメシ総選挙2024」の事業。
全国でも収穫量が最も多いくりの付加価値を高めるため、「笠間栗ファクトリー」に県が出資して、原料の生産から加工・販売まで地域で行う取り組みを強化します。
「茨城の国際化」へ
さらに、「茨城の国際化」も大きなテーマです。
国内市場の縮小が見込まれる中、海外への販路拡大に力を入れ、稼ぐ力をつけてもらおうという狙いがあります。
具体的には、
▼農産物の輸出を支援するため、海外でのプロモーション活動を強化。加工食品も現地のコンサルタントなどの専門家を通じてニーズ把握などを進めます。
▼また、県内の製造業が海外の展示会に出展することも支援します。
大井川知事は、今回の予算案について、次のようにコメントしています。
令和6年度当初予算案は、「挑戦」「スピード感」「選択と集中」の基本姿勢を徹底しながら、戦略的な企業誘致や本県観光の新たな魅力と価値の創出など、過去の延長線上にはない、新たな一歩を着実に踏み出してきたことで生まれた確かな「変化」を軌道に乗せ、その成果を更に引き上げていくための施策を取りまとめたものであります。
深刻な人手不足や国内市場の縮小が進む中、外国人材の確保や県産品の海外販路開拓など、海外の力を取り込むことで本県経済を発展させながら、保健所機能の強化やマル福制度の拡充など、県民の安心安全の確保に向けた取り組みなどを一層促進していきたいと考えております。
こうした施策を推進することにより、加速度的に進む人口減少などに伴う様々な困難を乗り越えられる「新しい茨城」づくりに挑戦してまいります。
茨城県の懐事情は・・・?
どれも大事なテーマですが、県財政はどのような状況にあるのでしょうか。
県は県政運営の基本方針となる「総合計画」で財政運営に関して3つの目標を掲げています。
1つずつ見ていきます。
まずは「①収入に占める借金の返済割合」。
行政では「実質公債費比率」と呼ばれる借金返済に関する指標を見ています。
基本的には、低いほどいい数字で、目標は「全国中位以下」です。
直近の令和4年度は9.3%、全国の都道府県中35位という低い水準で目標は達成できています。
続いて、「②借金を減らせているかどうか」。
県は毎年度、借金の総額を減らすことを目標にしています。
一方、ことしは増えていて、目標は達成できませんでした。
理由は県内最大の障害者支援施設である「県立あすなろの郷」の老朽化に伴う再編整備などに費用がかかるためとしています。ただ、県は、これは一時的なものとしています。
そして、「③黒字かどうか」。
県の目標では、「借金による歳入」や「借金の返済費用」などを除いた収支、いわゆる「プライマリーバランス」で黒字を目指しています。
こちらは来年度も黒字を維持する見込みとしていて、目標は達成です。
さらなる行財政改革は?
総じて言えば、ほかの自治体と比べても、茨城県の財政状況に現状大きな問題があるという状況ではありません。
ただ、今後も問題が無いかというと、そうではありません。
茨城県では15年ほど前に茨城県では主要な貯金と言える「一般財源基金」が底をつきかけたことがあり、その後、行財政改革を進めてきました。
今後、人口減少に伴い県税が減少していく可能性もあります。こうした将来も見越して、大井川知事は支出の見直しに取り組んでいます。
例えば、県が出資する第三セクターが運営する神栖市の「鹿島セントラルホテル」の売却など県有施設などのあり方の見直しを進めています。
また、介護福祉士を目指す外国人に対して、日本文化を学んでもらう取り組みに補助金を出していましたがこちらは取りやめ、受け入れそのものの支援に注力します。
このように、既存の事業を徹底的に見直して、効率的・効果的な予算を組み立てていく必要があります。
入院中の大井川知事 3月5日から登庁
大井川知事は転倒して頭を打った影響で入院していて、今回の予算案について記者会見などでの説明の機会がありませんでした。
一連の予算案は2月29日に開会する県議会に提案されます。
大井川知事の健康状態に問題はなく、3月5日から登庁し、県議会の代表質問には出席するということで、予算案について議員との論戦に臨むものと見られます。
アフターコロナによる社会の変化や人手不足の深刻化など茨城をとりまく環境は大きく変わっています。県の発展や豊かさの実感、そして、規律ある財政についてどうバランスを取っていくか。
引き続き取材をしていきます。
(NHKプラスの配信終了後は以下の動画をご覧ください)