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なぜ世界が注目? 外国人観光客が“Morioka”に求めるものとは

いま“Morioka”が外国人観光客から熱い視線を集めています。
きっかけとなったのが、ニューヨーク・タイムズの特集記事「2023年に行くべき52か所」。1番目に紹介されていたのがロンドンで、2番目が岩手県盛岡市。東京や京都といった大観光地を差し置いて選ばれたのは、なぜでしょうか?その理由を調べてみると“外国人が日本観光に求めるもの”が見えてきました。
(クローズアップ現代・取材班)

外国人が次々とやってくる盛岡

8月、取材班は盛岡の地へ。まずは老舗のおそば屋さんを訪ねると、早速外国人の姿を発見。香港から来たという男性2人組がわんこそばを楽しんでいました。「この旅で一番楽しみにしてたんです!」「香港のテレビでも特集されていて有名だったので」。

盛岡駅の観光案内所にも、アメリカから来た男性、イタリアからの家族連れなど次から次へ外国人観光客がやってきていました。

盛岡駅の観光案内所

1月にニューヨーク・タイムズで紹介されてからというもの、多いときで1日120人ほどがやってくるようになったそうです。

盛岡観光コンベンション協会 石橋浩幸専務理事
石橋浩幸専務理事

やっぱりニューヨーク・タイムズの影響力はすごくて。当初はとまどいもありましたが、最近ようやく外国人の方への対応に慣れてきました。

盛岡市では、4月に新たに臨時の観光案内所を設置。町の変化を感じ取っています。

盛岡市観光課 藤谷徹課長
盛岡市観光課 藤谷徹課長

コロナ禍の前は、どちらかというとアジア圏の方が多かったのですが、記事が出てからは、欧米の方を多く見かけるようになりましたね。

盛岡ってどんなところ?

岩手県の内陸部にある盛岡市。人口はおよそ30万人。中心部には北上川が流れ、雄大な岩手山を望めます。

東京からは新幹線で2時間あまり。ニューヨーク・タイムズでは「東京から短時間で行ける」と紹介されていました。“短時間”の感覚は人それぞれかと思いますが、外国人にとっては「アクセスが良い街」という印象のようです。

なぜいま盛岡? 理由は“Walkable Gem”

アメリカ人ライター クレイグ・モドさん

盛岡の記事を書いたのは、アメリカ人ライターのクレイグ・モドさんです。日本在住20年以上、日本中を旅して周って旅行記を出版するなど、日本人よりも日本に詳しいといっても過言ではありません。

あらゆる市町村を巡ってきたモドさんが、盛岡を選んだ理由とは?

クレイグ・モドさん

私は2021年に初めて盛岡を訪れました。町並みもよかったし、食べ物もおいしかったし、みんなやさしい。そして何と言っても、歩いて回れる。なぜ歩くかというと、町の素顔を感じられるから。私はできるだけ町中を歩いて、地元の方とお話しをします。どんな店があるのか、どういう人が住んでいるのか、できるだけ細かく聞き取るんです。


盛岡は10分歩いただけで、歴史的な町並み、おそば屋さん、喫茶店とか、だいたいすべてを味わえる。歩くだけで面白いところを見つけられるし、スッと入ると楽しいことが待っている。盛岡は“Walkable Gem”(歩いて回れる宝石スポット)なんです。

Youは何しに盛岡へ?楽しみたいのは“日常”

どうやら、外国人観光客にとっては「歩いて回れる町」というのがポイント高めなようです。それにしてもWalkable Gemっていったいなんなのでしょうか…?

その秘密を探るため、外国人の方に同行させてもらうことに。取材で出会ったのが、カナダからやってきたクリスティーンさん、タイロンさんのご夫妻です。日本に来るのは5回目(!)という、かなりの日本好き。これまでは東京、京都といった大きな観光地を巡ってきて、盛岡は今回が初めてとのこと。

タイロンさん

いつもとちょっと違うことをやってみたいと思ってね。日本の違う地域に行ってみたかった。

僕たちは現地に到着してからいろいろ探すんだ。ただ探検するんだよ。

2人の旅のスタイルは、あまり計画を立てずに町を楽しむ、というもの。彼らは行くあてもなく歩き始めました。まず訪ねたのは、レトロな雰囲気の喫茶店。コーヒーゼリーとコーヒーを楽しみつつ、店の雰囲気、特にくすんだ色の“壁”に興味をひかれた様子です。すると、おもむろに店員さんに話しかけました。

クリスティーンさん

この壁の色は昔からこのまま?

喫茶店の店員

いえ、最初は白でしたけど、以前は喫煙できたので、たばこの煙とかで。

タイロンさん

ああ、なるほど!それでこんなに“スモーキー”でいい感じに仕上がっているんだね。

タイロンさん

僕たちはいろいろなところに行って日常を普通に過ごしている人たちと交流するのが好きなんだ。そのほうが有名な観光名所に行くより面白いんだよ。

タイロンさんとクリスティーンさんは、その後もまるで散歩をするように市内を歩き回り、中心部を流れる中津川のほとりにやってきました。夏草が生い茂る川沿いの道を歩いているとあゆ釣りをする人を発見、しばらく見入っていました。

タイロンさん

(盛岡は)それなりに大きな町なのに、自然が残っていてとてもユニークだね。歩いていると穏やかな気持ちになれる。

アメリカから来たリチャードさん

続いて出会ったのは、アメリカから来たリチャードさん。日本に来るのは初めてで、盛岡に来る前に東京、京都などを観光してきたそうです。

秋田・大曲の花火を見に行くついでに盛岡に立ち寄ったとのこと。リチャードさんもやはり歩いて盛岡市内を回り始めました。

リチャードさん

古い建物が好きでね。50年前、100年前はどんな暮らしをしていたのか、想像しながら眺めるんだ。

写真が趣味というリチャードさん。紺屋町の雑貨店や明治時代の建築物など、歴史的な町並みや建物を中心に、やはり歩いて回り、撮影を楽しんでいました。

リチャードさん

盛岡は小さなホームタウンだね。東京のような大都会のけん噪がない。歩きやすくてすばらしい町だと思うよ。

今回出会った2組の外国人の方々は、いずれも「特別な観光スポットではない場所」を「歩いて回る」というスタイルで旅を楽しんでいました。

名所旧跡やテーマパークではなく、私たちにとっては当たり前の日常的な場所や、暮らしが見える風景に心をひかれていた様子で、新しい観光の可能性を感じました。

個性的な店主とふれあえる小さな店も魅力

もうひとつ、盛岡の魅力として、クレイグ・モドさんが記事で挙げていたのが“こだわりを持って営まれている小さなお店”です。

クレイグ・モドさん

哲学の鋭い店主が多いし、本当に個性的なお店ばかり。看板からオーナーさんの哲学、こだわりが見えてくる。

古い町家が残る通りを1本奥に入った先にある小さな書店。
店主の早坂大輔さんが選んだエッセイ、アートブックをはじめ新刊本、古書など約5000冊の本を取り扱っています。カナダから来たクリスティーンさんとタイロンさんも訪れて、オススメを聞いていました。

タイロンさんと話す書店の店主 早坂大輔さん(左)

商店街の一角にあるコーヒー店では、ドイツ製のビンテージの機械を使ってコーヒー豆を焙煎しています。豆も、店主の長澤一浩さん自らボリビア、エチオピアなど世界各地を回って厳選して調達したもの。ちなみに長澤さんはアメリカのコーヒー専門メディアが選ぶ「コーヒーで世界を変えている20人」に選ばれています。

コーヒー店の店主 長澤一浩さん

盛岡駅近くの開運橋のほとりにあるジャズ喫茶は、店主の照井顯さんが選んだ“和ジャズ”だけを流すちょっと変わったお店。和ジャズとは、日本人が演奏したジャズのことで、外国人も数多く訪れています。

ジャズ喫茶のマスター 照井顯さん

こうした“人とふれあえる”場所があることも、外国人観光客に人気がある理由になっているようです。

外国人がひかれる町並み 守ってきたのは市民

外国人にとって盛岡は、観光客向けに特別に整備したスポット、というより、住民がふだん行くような場所やお店に魅力を感じるところが多い、という印象です。こうした町並みは、実は盛岡市民自らが守ってきたものなんです。

町家が立ち並ぶ盛岡市鉈屋町。共同で使う井戸もあり、昔ながらの暮らしの風景が残っています。

鉈屋町

ここで活動しているのが、NPO「盛岡まち並み塾」。歴史ある建物などを次世代に残そうと、ワークショップやイベント活動を行っています。

盛岡まち並み塾・ワークショップ

理事長の海野 伸さんによると、かつて鉈屋町地区は、取り壊される危機に直面したことがあったそうです。

盛岡まち並み塾理事長 海野 伸さん
海野 伸さん

都市計画道路の事業で、盛岡駅のほうから鉈屋町を通る4車線道路。鉈屋町の道路は6~7メートルで、4車線となると28メートルまで広げないといけないから、町家はほとんど壊さないといけないと。

町家はただの古い建物というわけではなく、人々が暮らす生活の場所。住民からは反対の声が上がりました。駅のほうから道路建設が進み、鉈屋町にも工事が迫ってきた2003年、海野さんたちは「盛岡まち並み塾」を結成。町並みを残す意義を訴えるため、町家を活用したひなまつりイベントを企画したり、コンサートを開いたりしました。

海野 伸さん

月に1回勉強会を開いたり、とにかくいろんな人に来てもらって、この町を知ってもらおうと。町の住民だけのものではなく、盛岡市、市民の宝なんだよということを伝えたかった。

ただ道路計画に反対するんじゃなく、行政の方も巻き込んで。将来こんな町にして残していきたい、だから道路を変更してくれと。その結果、だんだん行政の方も、町並み・景観は大事だね、と理解してもらえた。

地道な活動が実を結び、まち並み塾結成から3年後の2006年に行われた市民アンケートでは、鉈屋町に都市計画道路を通す方針への反対意見が多数を占め、計画は見送られることに。観光客のためではなく、市民が自ら暮らしやすい町を追求した結果、外国人が訪れたくなる場所になった、ということのようです。

Authentic=本物を感じたい

アメリカ人ライター クレイグ・モドさん

いま、日本にやってくる外国人観光客は“ありのままの日本”を感じたい人が多い、とクレイグ・モドさんは指摘します。

クレイグ・モドさん

日常、暮らし、うそのない文化といいますか、Authentic(本物)を経験したい、人が多くなっています。地方都市や、日本の田舎には、独特な文化的な味わいを感じられるところがまだまだあると思います。日本に初めて来た人はやっぱりゴールデンルート(東京~富士山~名古屋~京都~大阪)に行きます。でも、2回目になると、違った日本を見たい、本物の日本が見たい、ということで、地方に向かう。地方にはまだまだ魅力があると思います。

ありのままの暮らしが残る町並みや人との出会いを求めて、“地方”に足を運び始めた外国人観光客。際だった観光名所がなくても大きな可能性がある、と感じた取材でした。

取材後記

以前、民宿を経営するあるご夫婦を取材したときに「なぜ人は旅をすると思いますか?」と聞かれたことがあります。ご夫婦いわく、「いろんな旅の人と出会って私たちが思ったのは、人は“不便さ”を求めて旅をするんだな、ということです」。

ご夫婦は若いときに海外を旅して周ったそう。言葉は通じなかったけれど、多くの人が助けてくれて、その土地の風土・文化を体で感じることができたのだとか。住み慣れた“快適な”場所を離れ、試行錯誤や苦労をしつつ、時間をかけて道のりを楽しんだと語ってくれました。
私は、どちらかというとキッチリとしたタイプで、行く場所を事前にリサーチし、スケジュールをしっかりと組んで定番の名所を巡ったり、名産物を食べたり、という旅行ばかりしていたので、なるほどそういうこともあるのか、とそのとき感じました。

ニューヨーク・タイムズの記事を書いたクレイグ・モドさんは、旅を“冒険”に例えています。「旅は少しの苦労が大事。外国人は“冒険”をして、つくられていない本物の文化を味わいたい、という人が増えている。」

次の旅は、あえて計画を立てず、苦労をして偶然の出会いを楽しむ、というスタイルで行ってみようと思います。

みんなのコメント(1件)

感想
疑問
2023年11月17日
NHKさんに限ったことではないですが
北米+西欧を「世界」と表現している気がします。
「世界」の〇〇と言う番組
内容の何%が北米+西欧なのか
計算したら高い数字になりそう。
ここでいう「世界」とはほぼ北米+西欧です
というテロップを付けちゃったりして。