
大人に聞いてほしいこと 令和の小学生の本音、聞きました
「お父さんとお母さん忙しそうだから…気を遣わせたくない」
そう教えてくれたのは、小学4年生の女の子。毎日、放課後は学童保育に通っています。
親の共働きが7割に上る昨今、学童を利用する児童は過去最多の139万人。家庭の代わりに多くの時間を過ごす学童に、子どもたちは何を求めているのか。思わずはっとさせられる言葉ばかりでした。
(クローズアップ現代 学童保育取材班)
全力で駆け回ることすら貴重な令和の放課後

取材で訪ねたのは東京多摩市内の学童です。
取材班のカメラに写ろうと集まってくれた小学生たちに「放課後に何したい?」と尋ねると、やっぱり多かったのは、思いっきり体を動かして遊びたいという声です。

この日、小学校の体育館では、子どもたちのリクエストが多かったドッジボールが行われました。学童では、学年を問わず一緒になって遊びます。汗を流し、悔し涙も流し、まさに全力少年少女。「スポーツ好きはみんな友達!」と教えてくれました。


ドッジボールが大好きです!

サッカーとドッジボールと、あと走るのも好き。毎日学童が楽しい。
実は、日本では学童が必ずしも小学校の施設を利用できるわけではありません。自治体や学区によって、学校施設の運用ルールは全く異なり、学童を利用する児童が下校後も体育館を利用するには、学校ごとの許可が必要です。
ただドッジボールをする子どもたちを見て思ったのは、このエネルギーを思いっきり発散させてあげる場所はきっと必要だということです。小学校の許可を得て、校庭や体育館を使用することができるこの学童では、思いっきり汗をかける子どもたちの笑顔が印象的でした。

友達と遊ぶときはだいたいドッジボール。それで絆が深まっている感じがする。

みんなで遊ぶのが好き! 学童は人がいっぱいいて、楽しいことがいっぱい。

学童やってなかったらこんなに友達できていなかったから、学童って、本当に大切なんだ。
夢中になれる“静かな空間”は必要

同じ頃、室内では、読書や折り紙、絵を描くことに夢中になって取り組む子どもたちがいました。

昨日は鉄棒の気分だったけど、きょうは本を読む気分。

折り紙が好きです。さっきかっこいいのできました。目玉焼き。これからの趣味は折り紙になるかも。

おままごとが好き。1人でいるより楽しいから、学童に来ます。
この学童では、自由時間におもちゃなどで遊ぶスペースと、静かに本を読む図書館スペースが区切られています。子どもは元気に走り回るもの…と思い込んでいた私にとって意外だったのは、かなり多くの子どもが、読書、写し絵、イラスト、折り紙など、黙々と机に向かう時間が好きだと教えてくれたことです。
「1人になるとほっとする」子ども意外と多い

漫画を読むことが好きです。学童にある漫画はほぼ読み切った。
自分ひとりだとなんかほっとする。学童はうるさいけどがんばって宿題をやっています。

悲しいときとか集中したいとき1人になりたい。
そういってひとり宿題を始めた女の子がいました。
それでも、同級生が隣に座るとうれしいことがあるそうです。


一緒に宿題するとなんかね、宿題が楽しくなる。学童なかったら宿題しなかったかもしれない。

(家で)ひとりの時もあるけどいつもユーチューブみてごまかしている。家で一人はずっとはやだ。
ちょっと怖い。知らない人からピンポンきたり、窓から不審な人来たらいやだから。学童ではうんていとか、カードゲームが好き。でも私は、友達が好きなことをするのも好き。
子どもたちの答えで多かったことの1つが、「同じ空間に一緒にいたいけど、1人で好きなことに取り組みたい」ということです。家でひとりは怖いし寂しいけど、学童ではひとりで過ごす時間も好きという答えも多かったのです。自分が好きなことに正直に、自分の感性を大事にしている姿が、とても素敵でした。
こうした子どもの主体性を守るためには、実は学童側にも工夫があります。
定員80名の大所帯ですが、児童は3つのグループに分かれています。各グループに指導員を固定して配置し、一人ひとりに目が行き届くようにしているのです。国の規準では、1つの集団の規模を40人までと決めているため、この学童では少し余裕がある配置になっています。児童ひとりひとりの「これが好き」「これをやりたい」という気持ちを、できる限り尊重し、大人たちが実現させてあげる努力していること。そんな日々の努力を重ねている姿勢が伝わってきました。
やっぱり「誰かに見てほしい!」
好きな事に黙々と取り組む子どもたちですが、やっぱり“誰か大人に認めて欲しい”という気持ちが。
みんな完成した作品を「見てほしい!」という気持ちをたくさん教えてくれました。

このイラストを見せたらすごいって言われた。すごくうれしかった!
(ディレクター:もし見てくれる人がいなかったら…?)
走って探すよ!

折り紙で箱とかつくるの好きです。上手って言われた。いえーい!

ゴルフの打つ種類を全部言えるとか、自慢できる!おーすごいねって。うれしい気分だった。
ひとりぼっちはさみしいけどみんながいるといつも遊べて楽しい。
ひとりぼっちだとかまってくれる人もいないし。いつも遊んでくれてありがとうねって。

きょうはお友達とおままごとしました。たまに悲しくて泣いちゃうとき、寄り添ってくれるから友達っていいなって思います。遊ぶ人がいなかったりするときとかちょっと悲しくなります。大丈夫とか声をかけてくれて、とてもやさしいです。そんな時はとてもうれしい気分になります。学童なかったら、多分友達いないと思う。学童はいろんな人といちばん会えるところ。
学童ってどんな場所?

お話いっぱいしてくれたり、帰ってきたらこうやってくれるから。
”学童で大好きな人”を紹介してくれた女の子。学童が好きな理由を、教えてくれました。


学童に行ってドア入ったときにおかえりといってくれて、そのときにいろんな大人が挨拶してくれて、それがうれしい。お母さんとお父さんがお仕事しているし、あと自分が学童に行きたいから。お父さんとお母さん忙しそうだから、気を遣わせたくない。(私の話を)聞いてくれてうれしいとか、安心する。ドッジボール投げるのかっこよかったって言ってくれるからそれが1番うれしい。おうちの人いなくても優しい大人とか面白い人がいっぱいいるし友達もいっぱい作れるからいいなって。
大人ができることは? 子どもが「自分が自分でいられる時間」

学童を運営する社会福祉法人の中村真理子さんは、できる限り子どもの声に耳を傾ける姿勢が大切ではないかといいます。
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中村真理子さん
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大きな集団なので、その中でもできるだけ自分がやりたいように、過ごさせてあげることに、かなり気をつけています。みんなでまとまって何かをするのが、見ているほうは楽だと思いますが、ひとりひとりの気持ちにできるだけ寄り添えるように、常に心がけて。学校は先生と集団、しかも勉強するという緊張感のある場所なので、放課後はそこの緊張をほぐして、ひと息ついてから家に帰る場所だと思います。子どもたちにとっては、自分が自分でいられる場所であったらいいなと思っていて。耳を傾けてあげる人が、いること。それが多ければ多いほどいいと思いますし、複数の大人がいれば、この大人には言いにくいけど、こっちの大人の人には、言えるかもしれない。
そのために必要なことは、理想を言えば、少しグループに分けて人数を分散することです。このお子さんに関しては、この職員が見ると、担当別にしているんです。そうすることで、見えてくるものがあるので、今まで取りこぼしてきたようなことに、気がつくようになったという声が職員からも出ているんです。どんなにすごいスーパーバイザーがいても限界はあるので、それよりは、プロフェッショナルじゃなくても子どもに寄り添える気持ちがある人がたくさんいることが、とても大事なことだと私は思っています。
※2023年6月22日、その後の情報に基づき、記事を修正しました。
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