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東京・江戸川区 ひきこもり 顔の見える大規模調査

ひきこもりに関する東京・江戸川区の大規模調査の結果が、6月8日に公表されました。

専門家からは、「ひきこもり支援のあり方を考える上で画期的な調査だ」と注目されています。

どんな調査で、何が画期的なのか。専門家に聞きました。

江戸川区の大規模調査とは

人口およそ70万人の東京・江戸川区。

去年、初めてひきこもりの実態を把握する大規模な調査を行いました。

対象は、15歳以上の区民のうち、給与収入で課税がない人や介護や障害など行政サービスを利用していない人たち24万6000人あまり。

およそ18万世帯に調査票を郵送。

回答がなかった世帯には直接訪問して回答を求め、57%あまりから回答を得ました。

その結果、14歳以下の不登校の子ども1113人などと合わせると区内に、ひきこもりの人が9096人いることがわかりました。

“画期的な方法”ポイント2つ

ジャーナリスト 池上正樹さん

長年ひきこもりの問題を取材してきたジャーナリストの池上正樹さんは、この調査を「非常に画期的だ」と話しています。

<その1 推計ではなく実数調査>

画期的な点、まずは、初めて大規模に行われた実数調査だということです。

ジャーナリスト 池上正樹さん

「国の調査はこれまで抽出による推計調査で行われてきました。全世帯を対象とするような実態調査は、地方の人口の少ない地域では行われてきましたが、江戸川区のような大規模な自治体で全世帯を対象に直接行う調査は初めてだと思います。非常に画期的で、これまで見えなかった引きこもりの人たちの困りごとやニーズなどが見えてきたという意味でも非常に注目されます」

<その2 調査を通じて“つながる”>

さらに、調査に回答した「ひきこもり」の人たちと、行政側が支援に向けたつながりを持つことができたことに、大きな意味があると言います。

ジャーナリスト 池上正樹さん

全世帯調査ということは、実際に回答された方々を区が把握できたということ。これまでつながるきっかけを持てなかった人が、回答をしてくれたことで、行政との繋がりが生まれた。単なる数字ではなく“顔が見えるように”なった。これは大きな第一歩ですし、一人一人のニーズに合わせて区がこれからどうアプローチして行くか、考えることができるようになりました。

中には、調査を受けて初めて「自分はひきこもりなのか」と問い合わせをしてきた人もいると言うことで、孤立していることを自覚していなかった人たちのニーズの掘り起こしにもなっていると見られます。

江戸川区によりますと、調査を通じて、4月の時点で、54人の人たちが、区の担当課とつながったと言うことです。

そのうちの一人、24歳の女性に話を聞くことができました。

女性は、小中学校でのいじめをきっかけに不登校になり、その後高校を中退。

アルバイトをしても長続きせず、自宅に閉じこもりがちでしたが、趣味やアルバイトの面接などで外出することもあったため、自分自身ではひきこもりだという認識があまりなかったと言います。

しかし、同居する祖母が調査票を受け取り、「一緒に区役所に行ってみないか」と誘われ、それならばと、区役所とつながることができました。

女性は、区の就労支援を受け、ちょうど今日から、役所内で不要になった書類を整理するなどの短時間の仕事を始めました。

今後、少しずつ働くことに慣れていきたいと話しています。

24歳の女性

「今までのアルバイトでは、わからないことなどがあると罪悪感をおぼえてすぐにやめてしまっていました。でも区役所では“自分はひきこもり”と伝えた上で採用してもらっているので、質問もしやすくて安心して働くことができました。自信をつけていきたいと思います」

年齢別 40代が最多

そして、調査でひきこもりとされたおよそ7919人の内訳は、年齢別では40代が1196人で率にして17.1%、次いで50代が1155人で16.6%、30代が968人で13.9%、20代が813人で11.7%などとなっています。

女性が男性よりも多く

男女別では女性が3684人で51.4%、男性が3461人で48.3%と女性が男性よりも多いことがわかりました。

ひきこもりの期間は

また、ひきこもり状態の期間は、1年から3年未満が28.7%と最も多く、次いで10年以上が25.7%となっています。

当事者が求めているものとは

一方、調査では当事者の生活の状況やニーズについても聞いていて、このうち日常生活の不安について複数回答で聞いたところ、自分の健康が最も多く66%、収入・生活資金が63%などとなっています。

また、ひきこもりの当事者が求めているものについて複数回答で聞いたところ「就労に向けた準備、アルバイトや働き場所の紹介」が最も多く、21%、次いで「短時間でも働ける職場」が18%と就労に関する回答が合わせて39%となっているほか「身体・精神面について専門機関への相談」が16%「友達や仲間づくり」が15%となっています。

一方で、「何も必要ない、今のままでよい」とした人が32%となっています。

しかし、池上さんは、むしろ、支援を断るような人たちにこそ、周囲の目が行き届かず、命に関わるような深刻なケースが潜んでいると考えています。

ジャーナリスト 池上正樹さん

「もともとひきこもる人の特徴として、他人の力を借りずに自力で打開しなければならないという生真面目さがあります。そのため、今回の調査のように支援の必要性を尋ねても“大丈夫です”と答えてしまう人が多くなっているのではないのでしょうか。“支援が必要がない”と回答したから放っておけばいいということではなく、行政や周囲の人が、“いつでも頼っていいよ”というメッセージを出し続けることが大切だと思います」

江戸川区 今後の対策は

江戸川区は、今回把握できた当事者、7919人の7604世帯について

▼1人暮らし、
▼家族と同居している、
それに
▼支援を求めない、またはひきこもりとは別の支援を必要としているなど、それ以外の3つに分類して対応することにしています。

このうち、1人暮らしの当事者がいるおよそ350世帯に対しては、すでに相談員の個別訪問を進めていて、詳しい生活の状況などを聞き取った上、支援が継続的に必要かどうか見極めていく予定です。

また、家族と同居している当事者については、ひきこもりが1年未満であるなどの一部を除くと、およそ1850世帯でしたが、家族にも詳しい事情について知られたくないと考える人もいることから、個別にさらに詳しいアンケートを送って慎重に状況の把握を進めることにしています。

そして、支援を求めていないと回答した当事者のほか、医療などのひきこもりとは別の支援を必要とするなど、それ以外の世帯は、およそ5400世帯に上っています。

具体的な支援の内容を説明したパンフレットや当事者が集まる会、専門家による講演の予定表などを送り、少しでも役に立てて欲しいとしています。

今後、江戸川区は、当事者がオンラインで集まって語り合うことできる催しを今年度6回開催する予定で、当事者や支援者と交流ができる施設の整備も進めることにしています。

また、ひきこもりに対する理解促進を呼びかける新たな条例の制定もめざしています。

江戸川区 ひきこもり施策係 森澤昌代係長

「助けを求められずにきた人たちの存在が把握できました。今回の調査はあくまで入り口に過ぎないので、これからしっかりと要望を聞いて、一人一人に寄りそった選択肢を一緒に考えていきたいと思います」

<支援窓口>
厚生労働省 ひきこもりポータルサイト ※NHKサイトを離れます
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/

全国の相談窓口はこちら ※NHKサイトを離れます
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/support/

ニュースウオッチ9「ひきこもり 初の大規模調査」

2022年6月8日(水)放送
※放送から1週間は見逃し配信をご覧いただけます。

みんなのコメント(27件)

オフィシャル
「#となりのこもりびと」取材班
2022年6月14日
ジャーナリストの池上正樹さんからみなさんに、以下のようなコメントをいただきました。

皆さま、たくさんのコメントを寄せて頂きまして、ありがとうございました。
どなたかも書かれていましたが、1人1人のコメントに、本当にその通りだなと頷きながら読ませて頂きました。
「今のままで良い」とか「希望は緩やかな死」という状況に至るまでには、それまでさんざん頑張ってきたのに、非正規で搾取されたり、相談に行った先のことが思い出されたりして、生きていく気力のなくなるような経験をされている方がとても多いことがわかります。いじめ体験の不安が払拭できずにいる方も多く、ひきこもりになりたかったわけでもないし、何とか打開したいのに、自分でできると思える機会もないまま歳をとってしまったという思いが伝わってきます。

「事業自得」「甘え」などの辛らつな言葉を受けて心が折れたという、相談窓口の対応などは論外ですが、何でも「自己責任」にされてしまう、周りに頼りにくい空気感は何とか改善していきたい。諦めてしまっていたけど、もう一度声をあげてみてもいいかなと、これから生きていくことに希望の感じられるような場をつくり出せないか。「江戸川区の本気度に希望を感じる」と書かれている方もいましたが、調査をきっかけに社会が変わるきっかけにしていかなければいけない。改めてそう感じました。
体験談
去年父は死んだ
40代 男性
2022年6月16日
今は一人暮らしをしているが、私もひきこもりの一人になるかとは思う。

長年、実家でアルコール依存の父に罵詈雑言を追い立てられるように浴びせられ続ける生活が続いた後、今の住居に移り住んだ。その間、実家を出たいと願って仕事をしても、家計に負債が多く、それを支払わなければ家が差し押さえられるかもしれない、と言われれば差し出すより仕方なかった。そのような環境で無理を続けた結果、働けない状態に陥った。今は通院を続け、生活保護で糊口をしのいでいる。社会との接点が得られていない。

それぞれ異なる事情があるはずだ。私自身、こんな事情を周囲に伝えることなど出来なかった。その事情は決して表に出て来ない。

助けは要る。こうなる前に助けが必要だ。助けを求める先が全くなかった。その結果が今だ。そうした一人ひとりが江戸川区だけで9000人いる。
提言
洋梨
60代 女性
2022年6月14日
ひきこもりたくて、ひきこもった人はいないです。

ひきこもりの人の人権も守ってほしいです。
提言
るーぷ
2022年6月14日
現在のひきこもりに対する支援は
「ひきこもっている状態は良くないから、外に出る手伝いをしてあげましょう」という上から目線のものです。
当事者に対しとても失礼です。
ひきこもりは違法行為ではありません。
他人にひきこもっている状態を矯正する権利などありません。
しかし支援者は「ひきこもっている状態を変えよう」とし、
世間は「ひきこもっている状態はよくない」という目で見る、
だから当事者は、自分の存在は社会から許されていないと強烈に感じ、恥ずかしく、惨めで、ひきこもり続けるより他にないのです。
これで支援の手を取るわけがありません。

ひきこもりは矯正が必要な「間違った状態」ではなく、当人の権利であることを支援者が理解し、ひきこもった状態のまま生きていきたいという人がいるなら、
在宅でできる仕事を斡旋したり、人と関わらず生活するにはどうしたらよいか、といったことを考て欲しい。
提言
すみれ
40代 女性
2022年6月12日
ひきこもりの記事を作ってくださってありがとうございます。
江戸川区の素晴らしい取り組みが全国に広まるきっかけになるように、
NHKスペシャルや日曜討論で取り上げてほしいです。
全国で苦しんでいる当事者、家族、兄弟姉妹はたくさんいます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
感想
umu
2022年6月12日
皆さんのコメント見て全てのコメントに頷いています。自分も随分あちこち頑張ったのだなと、相談行った先の事を思い出しています
皆さんと同じ様な言葉をかけられて、家族会と心療内科を紹介されてそこが行き止まりです。
子供は不登校をきっかけにひきこもっています。自分自身は難病を発症し、いくら仕事を探してもこれから先は見つからないのではないかと思い始めてます。結局たどり着く先は家族会、患者会などまだ自力で外に向かう最後の力を振り絞って生きている人達です。40~50代が1番多いというのは、なんとか仕事にありつけた人はひきこもりとは呼ばれずに頑張っているのでしょう。

ハローワークも民間エージェントも40代50代では、一般事務程度の能力しか無い人間では仕事は見つかる事は無いです。ただ簡単に本人が頑張らなかったからこの結果になったとは言えないのはここにコメントを寄せている方々は分かっていると思います
感想
40代
40代 女性
2022年6月12日
40代~30代後半にひきこもりが多いのは当然です。就職氷河期で、非正規で搾取されたり、自立する経済力を得られない社会情勢により、自分でできる!と思える機会がなかった世代です。社会が良くなり正規雇用してもらえるタイミングをつかもうと思ったらいつの間にか40過ぎ。スキルも経験もない中年をどこも採用してくれるところもなく、生きていく気力もなくなります。社会の大きな波にのまれて必死にもがいている40代にこれ以上、何を求めるのか?1人1人のニーズを丁寧に聞き取り、個人の尊厳を守ってあげて欲しいです。
感想
かに
40代 男性
2022年6月11日
本人の置かれた状況や過去の辛い経験などから来る問題として考えていくことも必要だと思います。
こちらの記事にある日常生活の不安についての項目のように、問題の原因を本人の気質ありきで考えていたり、意識のすれ違いや様々な理由で周りの人々に頼りにくい状況ができてしまったりしていること、とにもかくにも当事者の自己責任にされてしまうこと自体が生きづらいですし、私自身の経験から見ても、ひきこもりになりたかったのではなく、いじめなどの辛い経験が重荷になってひきこもりにならざるを得なかったと考えています。
感想
花カマキリ
40代 女性
2022年6月11日
江戸川区の本気度がわかる内容でした。ひきこもり支援が本格的に動き始めるのを感じました。希望を感じます。社会が変わっていくきっかけになると思いました。その後なども知りたいです。
体験談
つらい
30代 男性
2022年6月10日
ニュースではいつも行政に繋がってひきこもりから脱出出来た人の話ばかり見るが、自分は色んな支援機関を回っても、たらい回しにされ就労にも繋がらない。

これだけ動いたにも関わらず振り出しにいる自分を思うと、ひきこもり問題なんか改善に向かうわけないだろうと腹が立つ。

希望は穏やかな死というコメントにとても共感する。