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創設20年目 愛媛マンダリンパイレーツの歩み

  • 2024年04月08日

19年前の2005年4月29日。野球の独立リーグ・四国アイランドリーグ(当時)の記念すべき最初の試合が、松山市の坊っちゃんスタジアムで行われました。愛媛マンダリンパイレーツと高知ファイティングドッグスが対戦し、リーグの幕が開けました。
そしてリーグは今年(2024)20年目の節目のシーズンを迎えました。
愛媛マンダリンパイレーツの球団統括マネージャー、田室和紀(たむろ・かずのり)さん(50)は、リーグ創設時から、その運営に携わってきました。
田室さんに、これまでの歩みを振り返っていただきました。

(NHK松山局アナウンサー 荻山恭平)

特集の内容はNHKプラスで配信中の4月8日(月)放送の「ひめポン!」(NHKGTV午後6時10分~)でご覧いただけます。

画像をクリックすると見逃し配信が見られます!見逃し配信は4/15(月) 午後6:59 まで

リーグ創設の理念に共感

20年前の2004年、野球の独立リーグを創設する構想を立ち上げたのは、元プロ野球選手の石毛宏典(いしげ・ひろみち)さん。目的は、プロ野球を目指す若者の受け皿となることでした。
その構想に共感したのが田室和紀さんです。当時は、県内の広告会社に務めていましたが、ぜひ手伝わせてほしいと、石毛さんに直訴し、リーグの立ち上げに協力することになりました。

田室さん
「西武の元キャプテンの石毛さんが(独立リーグを)立ち上げるということで、もう本当に一(いち)ファンの気持ちで、何かお手伝いをさせていただきたいということで、アプローチさせていただきました。バブルの崩壊後、社会人チームがどんどん減っていた時期だったので、高校・大学を卒業して、まだプロ野球(NPB)を目指したいとなったときに、行き先がない。1つの県に1チームずつ、独立リーグを作りたい、その最初が、四国という構想を聞き、そうすれば、指導者としてプロ野球のOBの人もセカンドキャリアとして関われるという話の内容でした」

田室さんは、リーグ創設1年目は、広告会社社員の立場として、ビラ配りやポスター貼りなどをしてサポートしました。各チームの独立採算制となった2年目から、愛媛マンダリンパイレーツの球団職員になりました。
当時のマンダリンパイレーツは、練習場を転々とし、選手が住む寮もありませんでした。
田室さんは、どうやってお客さんを集め、採算を取っていくのかわからず、まさに手さぐり状態でのスタートでした。

田室さん
「スポーツチームの経営とか運営とか一切知識がなかったので、Jリーグの県外のチームに成功しているチームに勉強させていただいたり、見に行ったり、とにかく勉強と並行して、何に注力したかも覚えてないくらい必死でやってましたね」

地域に愛されるチームに

そこで田室さんが力を入れたのが、地域貢献です。選手自らが地域に出向き、地元の人に愛されるチームを目指しました。

2006年当時の田室さん

田室さん
「愛媛マンダリンパイレーツという名前も存在も、まだまだ知らない方がほとんどでしたので、野球教室を中心に、地域のお祭り、福祉施設への訪問だったり、学校訪問だったり、とにかく自分たちのPR、告知もかねて、たくさん回らせていただきました」

地道な取り組みの結果、知名度があがったマンダリンパイレーツ。県とすべての自治体からの出資など、地元の支援の輪が広がっていきます。
練習場所もその一つ。今は、地元銀行が所有するグラウンドを優先的に使えるようになったほか、選手の寮も整備されました。

田室さん
「今、全国で5つのリーグ、20数球団に広がりましたけど、その独立リーグの球団の中でも一番練習環境としては恵まれているんじゃないかなと思います。本当に不自由することなく、平日は朝から晩まで、暗くなるまで、練習させてもらえるので。NPBを目指すリーグ、チームですので、1年2年、選手たちも期間を決めて入団してくる子が多いですので、その間、精いっぱい野球だけに集中できるような環境づくりというのは球団を挙げて、取り組んでいると思います」

若手育成のリーグ創設の理念を受け継ぐ

マンダリンパイレーツからNPB・プロ野球の世界に羽ばたいたのは12人。去年(2023)は、過去最多の3人の選手が同時に指名されました。
その一人、宇都宮葵星(うつのみや・きさら)選手は、親子2代でプレーした初めての選手です。

巨人から育成3位指名された宇都宮葵星選手

田室さん
「一期生として、ピッチャーで活躍してくれた宇都宮勝平投手という選手がいたんですけれども、その子どもさんが去年、パイレーツに入団して、高卒1年で、巨人に指名されてプロに行きましたから、そういった選手も出てきた、それくらい20年目というのは、歴史を感じるなと思います」

田室さんの願いは、リーグ創設時の理念を受け継ぎ、地元の人に愛されるチームであり続けることです。

田室さん
「マンダリンパイレーツだけでも、この19年間で在籍した選手が、今プロ野球の世界でも、選手としてではなく、ブルペンキャッチャーだったり、バッティングピッチャーだったり、トレーナーだったり、裏方スタッフとして、10人以上が活躍してくれている。そういう意味でも、マンダリンパイレーツを卒業した選手たちが、こうやってプロ野球、大学野球、高校野球、少年野球の指導者含めて野球界で活躍してくれてますので、そういう意味ではやってよかったなというか、石毛さんの思いも少しは達成できてるんじゃないかなとは思います」

特集の内容はNHKプラス配信終了後、下記の動画でご覧いただけます。

取材後記

田室さんは、「四国アイランドリーグプラスは、プロ野球(NPB)を目指す場所である一方で、夢を諦める場所でもある」と言います。NPB(プロ野球)に進めるのは、1年に1人いるかどうかの狭き世界。夢を諦めて社会に出て行く選手がほとんどです。
田室さんは、地域貢献活動として、野球教室や学校・福祉施設の訪問を行っていますが、こういった活動を通じて、若手選手の社会勉強、人間力の向上につなげる狙いがあるそうです。NPBに選手を送り込むだけではない、選手の社会人教育も、球団の大事な責務だと田室さんは話していました。

20年目の節目のシーズンを迎えた、マンダリンパイレーツのホーム開幕戦は、4月13日(土)午後1時から坊っちゃんスタジアムで、香川オリーブガイナーズと対戦します。

  • 荻山恭平

    アナウンサー

    荻山恭平

    平成9年入局。愛媛県出身。
    2005年、四国アイランドリーグの創設に関わる一連の取材を担当。記念すべき開幕戦のラジオ中継にも携わった。

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