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引退まで残り1か月 「SL人吉」を支える人たち

3月23日ラストラン
  • 2024年02月22日

九州を走る最後のSLが引退へ

機関車の老朽化などで、ことし3月23日で運行を終えるJR九州の人気観光列車「SL人吉」。今月、最後の定期検査である「交番検査(こうばんけんさ)」が行われました。引退まで残り1か月。完成から100年以上たつ機関車の歴史と運行を支える人たちの思いとは。

(熊本放送局記者 藤崎彩智、山本未来)

大正から令和を駆け抜けた機関車

沿線で手をふる人たち(2009年)

「SL人吉」をけん引する旧国鉄8620形の蒸気機関車「58654号機」、通称「ハチロク」が完成したのは100年以上前の大正11年(1922年)11月18日。九州各地で活躍したあと、1975年に役割を終えて保存されていましたが、1988年に「SLあそBOY」として、豊肥本線の熊本駅と宮地駅の間で運行を始め、2005年までの17年間、走りました。その後、保守整備を終えた機関車は、2009年4月から「SL人吉」をけん引しています。営業運転するSLとしては国内最古です。
 

球磨川沿いを力強く走った

「球磨川第1橋りょう」
「第二球磨川橋りょう」

「SL人吉」は、その名の通り、肥薩線の熊本駅と人吉駅の間で運行され、吹き上げる蒸気や甲高い汽笛の音、それに球磨川の雄大な景色を楽しめることなどから、観光客や地元の人たちを魅了しました。

多くの人でにぎわう白石駅(2009年)

2020年の豪雨で肥薩線が被災、運行区間を変更

流失した「第二球磨川橋りょう」(2022年)
大きく曲がったレール(2022年)

しかし、令和2年7月豪雨で球磨川が氾濫。肥薩線は、球磨川に架かる2本の橋りょうやレールが流失するなど450か所で被害を受けて運行ができなくなりました。2021年5月からは運行する区間を変更して、鹿児島本線の熊本駅と鳥栖駅(佐賀県)との間で運行しています。これまでにのべ40万人以上が乗車するなど人気を集めてきましたが、完成から100年を超えた機関車の老朽化やメンテナンスを担う技術者の確保が難しくなったとして、JR九州はおととし、2024年3月をもって「SL人吉」の運行を終了すると発表していました。
 

運行を支える人たちの思いは

「SL人吉」を安全に運行するためには、多くの人たちが関わっています。今月20日には、引退を前に最後の定期検査である「交番検査」が熊本市西区の「JR九州 熊本車両センター」で行われました。

国土交通省の省令にもとづいて定期的に行われる検査で、整備士6人がハンマーで車両の下のほうのボルトをたたいて緩んでいないか音で確認する車輪の検査のほか、蒸気機関車ならではの、石炭を燃やした熱で水を温めて蒸気を発生させるボイラーの点検を行いました。

整備士の山田恭輔さん(左)

17年間、整備士をつとめた 山田恭輔さん
「修理が大変なSLは万全の状態でないとうまく走らず、手がかかります。運休させることなく最後まで元気に走らせることができたらと思います」

仮屋諒さん(左)、原孝祐さん(右)

8年間、機関士をつとめた 原孝祐さん

「ついに最後がきたかという気持ちです。
先輩が代々受け継いできた歴史をかみしめながら
乗客の皆さんの笑顔を最後まで運び続けたいです」

13年間、機関助士をつとめた 仮屋諒さん

「汽笛の音色に心を掴まれて機関助士を目指したので、引退を聞いた時はさみしかったです。100年以上にわたって多くの人が関わってきた運行に携わる重みを噛み締めながら最後まで走っていきたいです」

引退前の姿を見届けるには・・・

JR九州は「SL人吉」が引退することし3月の運行スケジュールを発表しました。
引退する前日の3月22日までの間、運行する日は、これまで通り熊本駅と鳥栖駅の間を1日1往復します。

ラストランとなる3月23日は熊本駅を朝出発して玉名駅などに停車して博多駅まで走り、その後、折り返して夕方に熊本駅に戻ります。当日は博多駅で記念式典が開かれ入場券を購入すると、一般の人も見学できるということです。引退の翌日の3月24日には、沿線の人たちを招待して熊本駅から八代駅まで特別に運行し、八代駅では運行終了の式典が行われます。詳しいスケジュールなどはJR九州のホームページで確認することができます。沿線から手を振ってみてはいかがでしょうか。

クマロク!「SL人吉 最後の交番検査」

2月20日(火)放送。NHKプラスの見逃し配信は2月27日(火) 午後6時59分まで!

▲画像をクリックすると見逃し配信がご覧になれます。
(2月27日(火) 午後6時59分まで)

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  • 藤崎彩智

    熊本局記者

    藤崎彩智

    2021年入局。警察・司法担当などを経て、2023年8月から熊本市政を担当。豪雨からの復旧や鉄道など経済も継続取材。

  • 山本未来

    熊本局記者

    山本未来

    2022年入局。 警察・司法担当を経て、現在は遊軍として教育や災害などの現場を取材中。

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