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NHK熊本WEB特集 クマガジン

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青竹と生きる

~職人と暮らしに息づく竹細工~
  • 2024年02月09日

水俣川の源流である久木野川が流れ、川に沿って雄大な棚田が広がる水俣市・久木野地区。

久木野地区では竹細工を使う文化が昔からあり、その文化は今も受け継がれています。竹細工を作る職人と今でも使い続ける地域の人々に密着しました。


青竹細工職人

久木野地区で竹細工作りを25年間続けている井上克彦さん。大学を卒業後に商社に就職、海外協力隊での活動を経て、竹細工の職人となりました。自然に携わる仕事を志して全国を訪ね歩いたときに、師匠となる渕上泰弘さんと水俣で出会います。当時は竹細工職人が3人いて、その文化が根強く残っていました。

井上克彦さん
井上さん(左)と師匠の渕上泰弘さん(右)

井上さんが作る竹細工は青竹細工と呼ばれ、山から切り出したままの竹を材料としています。竹以外の材料は一切使わず、油抜きや染色などの加工もしないので、作り上げてすぐは青々と澄んだ色です。長い年月使い込むにつれて青竹は輝きを帯びたあめ色になります。

あめ色となった竹細工の数々

「竹細工は丁寧に使えば数世代に渡って使うことができます。竹は土から生まれ、土にかえるものなので地球にも優しいです」と井上さんは話していました。


竹の切り出しは年に2回

10月のとある日、井上さんは竹の切り出しに出かけました。竹の切り出しは年に2回しか行わず、1年分の竹を山から切り出します。竹を叩いたときの音と感触を頼りに、切り出す竹を選んでいきます。古くから「木六竹八」という言葉があり、木は旧暦6月(現在の6月~8月頃)、竹は旧暦8月(現在の8月~10月頃)を過ぎてから切り始めるのが適しており、この時期に切り出した竹は水分が抜けて長期間保存ができるそうです。

「竹がどうなりたいか、竹の声を聞きなさい」という師匠の言葉があります。竹の声を聞くことはまだまだ難しいと井上さんは語っていました。


竹細工と共に暮らしてきた人々

水俣では普段の生活の中で竹細工を使う文化が残っており、井上さんのもとには今でも注文や修理の依頼があります。畑仕事で竹カゴを使っている佐々木みつえさん、憲一さんご夫婦に話を聞きました。

佐々木みつえさん、憲一さんご夫婦

「使いやすい形のモノを作ってもらって、修理もしてもらいました。竹細工は環境に優しい究極のエコですね」と話していました。井上さんが作った竹カゴは、修理を経てこれからも使い続けられていきます。


感謝の想いで竹を編む

井上さんのもとに竹ざるを20個編む大仕事が入ってきました。製作を依頼したのは近所に住む中村ヨシコさん。ご自身が100歳になるお祝いのお返しの品として井上さんに竹ざるを編んでほしいと注文しました。ヨシコさんは井上さんが職人として独り立ちしてすぐの頃にも竹ざるの注文をして、駆け出し時代の支えになってくれた人です。これまでの感謝の気持ちを胸に一つ一つ丁寧に竹ざるを編んでいきます。竹ざる作りの中でも最終工程「縁巻き」は、竹ざるの完成度を左右する大事な作業です。精神を集中させて、20個の竹ざるを約1カ月かけて製作しました。

竹ざるのよしあしを決める「縁巻き」
中村ヨシコさんと井上さん

ようやく完成した20個の竹ざるは、無事にヨシコさんに手渡されます。竹の手触りを確かめながら「ありがとう。良いざるができたね」とヨシコさんは優しくほほ笑んでいました。

井上さんは「師匠たちが繋いできた竹細工を自分の力が続く限り続けていきたい」と力強く語り、これからも青竹細工を作り続けていきます。

  • 吉村聡志

    コンテンツセンター(技術)

    吉村聡志

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