【能登半島地震】 被災地での取材報告
- 2024年01月18日
元日に発生した能登半島地震で、NHK熊本放送局の矢野裕一朗記者は1月4日から10日まで石川県に取材応援に入り、大きな被害を受けた能登町などで取材しました。
道路には多数の亀裂 穴も
1月5日、記者が移動中に車内から撮影した 能登町内の県道の写真です。
写真の真ん中あたりを拡大すると・・・
亀裂が入り、一部は陥没して穴が空いてしまっています。
このような状況の道路は通行できませんが、通行が可能な道路でもいたるところに段差ができていました。
ドライバーはタイヤがパンクしたり、車体が損傷しないように、終始スピードを落として慎重に運転しなければなりません。
ふだんならNHKのある金沢市内から能登町役場までは 片道2時間あまりですが、道中、片側交互通行になったり、う回をしたり、大渋滞が起こったりしたため この日は片道で6時間かかりました。
1階が押しつぶされた住宅
こちらも能登町内の写真です。
こちらの住宅ですが、見えているのは2階部分です。
1階部分は上から押しつぶされていました。
少し離れた場所では、このように押しつぶされた住宅が何軒も連なっていて、とても写真どころではなく、あまりの被害の大きさに言葉を失いました。
地震から2週間がたちますが、こうした住宅の撤去はまだ進んでいません。
避難している人たちは
甚大な被害が出た能登地方では、まだ多くの人が避難生活を余儀なくされています。
避難所ではパンなどが毎日配られていた一方、温かい食事はありません。
こちらの豚汁は、能登町の避難所の前で炊き出しを行ったボランティアの人たちが提供していたものです。
炊き出しが行われた日にはこうした食事が提供されます。
受け取った人は
何日かぶりに 温かいものが食べられて、うれしい。
と話していました。
温かい食事と支援者の「頑張って」という一言に、避難している人たちは励まされているようでした。
「災害関連死」熊本地震では直接死の4倍余
いま被災地で懸念されているのは、避難の長期化による体調の悪化などが原因とされている「災害関連死」です。
熊本県によりますと、8年前の熊本地震では県内で218人が関連死と認定され、家屋の下敷きになるなどした「直接死」の4倍あまりになりました(直接死は50人)。
今回の地震で、石川県では16日の午後2時時点で1万6070人が避難所での生活を続けています。
そして石川県は、14人が災害関連死の疑いがあると発表しています。
災害関連死の増加を防ぐ手立てとして、被災地では、避難所からホテルや旅館などに避難する「2次避難」という取り組みが進められています。
災害関連死の原因は水や食事、暖房などが不十分な避難生活による影響が大きいとされていて、石川県は、高齢者や妊婦など配慮が必要な人やその家族を優先して、2次避難先への移送を進めていく方針です。
取材を通じて感じたこと
被災した方々の心身の疲労は ピークに達している、あるいはもう越え始めているのではないかと感じました。
断水が続く石川県羽咋市で、自宅の風呂が使えなくなった人たちに 大浴場を無料で提供している施設を取材していたときのこと。
あたたかい風呂や風呂上がりのマッサージで癒やされたあと、私たちに話を聞かせてくれた人のなかで ふと緊張の糸が切れたのか、ぽろぽろと涙をこぼす人がいました。
話している表情は明るいのですが、ふとしたタイミングで涙が出てくるようで、戸惑った様子で「体は元気なんですけどね。」と話していました。
日々奮闘している病院や自治体の職員のなかにも、被災した人たちがいます。
「何か支援をしたい」と考える人もいるかと思います。
ただ、石川県は現在、個人からの支援物資の提供は受け付けていません。
ボランティアについても、県の特設サイトから事前登録を行い、活動の依頼が来るのを待ってほしいとしています。
このほか、被災した地域の社会福祉協議会が 災害ボランティアセンターを設置していますが、いずれも募集の時期や対象は未定です。
多くの支援の手が必要な時期は、必ず来ます。
受け入れ態勢が整うまでは義援金など、いまできる支援を検討してほしいと思います。
また、自治体はいまも災害対応に追われていますので 問い合わせは控えて、ホームページや特設サイトの情報の更新を待つようにしましょう。
今回の地震は元日の家族の団らんの時間を突然、襲いました。
被災した方に伺ったところ、
まさか正月にこんな災害が起こるとは思わなかった。
元の生活に早く戻りたい。
と、やりきれない思いを語ってくれました。
災害はいつ起こるかわからないと あらためて実感しました。
災害時の持ち出し品などいま一度、ご自身の“備え”を見直してほしいと強く思います。