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災害に備え 避難場所に「個別備蓄」

  • 2024年04月17日

 

県内で進められている避難場所への「個別備蓄」について紹介します。これは災害に備えて住民が、自分が必要なものを避難場所に個別に備蓄しておこうという取り組みです。

津波避難タワーで「個別備蓄」 黒潮町

 

黒潮町の津波避難タワー

南海トラフ巨大地震で全国で最も高い34メートルの津波が想定されている黒潮町では、津波避難タワーにある防災倉庫に「個人ボックス」と呼ばれる箱を置いています。この中に住民がそれぞれ必要な食料や薬などを個別に備蓄しています。

 

必要な食料や薬が入った個人ボックス

黒潮町では早いところでは8分で津波が到達すると想定されていて、津波から逃げる際に家から持ち出すものを選んでいる時間はありません。事前に必要なものを避難場所に確保しておくことで速やかな避難につながると期待されています。

土佐清水市でも「個別備蓄」の動き

 

土佐清水市でも個別備蓄を行っている自主防災会があります。
この防災倉庫は、高台の避難場所にあって、越連合地区自主防災会が使っています。土佐清水市の市街地は南海トラフ巨大地震でおよそ10メートルの津波が想定されています。

 

10年前から防災倉庫の中に地域の住民がそれぞれ必要なものを入れたカバンを置くようにしていて
現在、およそ50世帯が自分の荷物を置いています。


 

カバンの中には衣類や歯ブラシのほかどんな薬を飲んでいるのか分かるお薬手帳のコピーなども入っています。

大切なのは「自分ごととして考える」こと

 

越連合地区自主防災会の平野貴久会長は「自分ごととして考えたときに、夜に地震が発生すると荷物を持っていくのは不可能だと思った。避難場所に、事前に自分の荷物があると安心だと思い取り組み始めた」と話しています。

県はこうした個別備蓄について、「あらかじめ避難場所などに個人の備蓄を置いておくことで手ぶらで
避難できるようになり命を守ることにもつながる。また、個人個人が災害時に必要な物を考え、季節に応じて入れ替えを行うなど、防災意識の維持、向上にもつながる。ほかの場所でも話し合いを通して地域の実情に合った取り組みを進めていってもらいたい」と話しています。

「避難場所に逃げた後、いかに生き延びるか」

 

コミュニティー防災や防災教育に詳しい高知大学地域協働学部の大槻知史 教授に話を聞きました。
大槻教授は「東日本大震災や能登半島地震でも分かるように、避難場所から1日で戻ってこられることはほとんどない。寒かったり、暑かったり、薬がなかったりするなどしたために災害関連死も出ている」と指摘し、個別備蓄を進めるべきだと話しています。

「個別備蓄」の課題

個別備蓄には課題もあります。用意した個人の荷物を避難場所に置いておくことができるかどうかという点です。例えば、大勢の人の荷物を避難場所に集めるようなケースです。
県内のある自治体の担当者は「避難場所が学校になっているところもあり、人口が多いと簡単に使ってくださいとは言えない」と話していました。

高知大学の大槻教授は、行政に求めることとして次のような点をあげています。
「まず、個人の備蓄を許可したうえで公共の場に個人の物を置くことなどについて、住民と話をしながら
進めてほしい」と話していました。

取材して感じたこと

今回の取材を通じて感じたのは、まず1人1人が自分が災害時に必要となるものを備えておく、という意識を持つことが大事だということです。さらに、避難場所に「個別備蓄」の物資を置けるようにするための環境をどう整えていったらいいのかということを考えていく必要もあるのではないかと思いました。

  • 益野 美咲

    記者

    益野 美咲

    銀行員・新聞記者を経て2023年に入局。高知県出身で「カツオのたたき」はニンニクと塩でいただく派。

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