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ロボコン全国大会 高知高専がベスト4

「高専生の甲子園」をスポーツキャスターが取材!
  • 2023年12月14日

高専ロボコンの全国大会が11月26日に行われ、高知高専が過去最高のベスト4に食い込んだ。「高専生の甲子園」とも呼ばれる夢の舞台に挑む姿を、理系には縁がない体育会系が独自の目線で取材した。
(高知放送局 スポーツキャスター 佐藤好)

フルーツ狩りで一騎打ち

高専ロボコンのことしのテーマは「フルーツ狩り」。フルーツに見立てたボールを制限時間内にどれだけ多く収穫できるかを争う。

ミッションは大きく2つ。角材やロープといった低い位置の障害物を突破することと、ロボットよりも高い位置のフルーツを収穫すること。ここで各チームのアイデアが試される。
(詳細なルールは こちら

 

高知高専 9年ぶり全国大会出場

全国大会は「高専生の甲子園」とも呼ばれ、ロボットに青春をかける通称「ロボコニスト」たちにとっては夢の舞台。

高知高専Bチームは、10月に行われた四国大会で優勝し、9年ぶりに全国大会へ駒を進めた。
メンバーはこの3人。

ロボコン4年目。情熱と冷静さを兼ね備え、「ヤマトさん」の愛称でみんなに頼られる。
コントローラーとチームの成績を握る。クールに見えるが実は誰よりも感情表現豊か。
回路を組み立て勝利に導く。
入部1年足らずで全国出場をつかんだ運と実力の持ち主。

大会に向けて高知高専が名付けたプロジェクト名は「fruity bear(フルーティベア)」。
熊のように豪快に大量にフルーツを取りたいという思いが込められている。
フルーツは、ロボットに搭載の爪と、競技の途中から装着できる熊手のような「お助けアイテム」で収穫していく。

左:ロボットに搭載の爪で収穫
右:「お助けアイテム」で収穫

1番の特徴は足元。4足歩行の熊のように4輪で走るロボットは、障害物を越える際に変貌。
空気の力で一気に前輪を上げると、内側から小型の補助輪が出現してバランスを取る。同じ要領で後輪も上げて、障害物をまたいで越えていく。

ロープを越える様子。前輪が上がり、補助輪が出現。

 

ロボットは全国大会に向けて改良した。

フルーツを収穫しやすくするためにかごを大きく、さらに、足周りを動かすエアタンクの位置を下げ、重心を下げることで安定感も増した。

奥:四国大会用 手前:全国大会用
かごの入り口が広くなっている
奥:四国大会用 手前:全国大会用
赤いエアタンクの位置が下がっている

 

選手を支える部員たち

選手の活躍を誰よりも願っているのは、ロボット研究部の部員たち。

体育館で練習ができるのは、ほかの部活動が終わった午後6時以降。その時間になると部員が体育館に集まり、何もないところに本番さながらのフィールドを組み始める。木材や脚立などを使い、大がかりな作業を手際よく行っていく。

この日は50分ほどかけてフィールドを完成させた。これを撤収も含めてほぼ毎日やっているというから驚きだ。

 

選手を身近で支える部員もいる。選手とともに行動し、ロボットの整備などを担当する「ピットクルー」と呼ばれる5人のメンバーだ。

高知高専では、四国大会のあとにピットクルーを改めて選考。その結果、四国大会で敗れたAチームのメンバーが、Bチームのピットクルーに加わった。
自分たちが届かなかった全国の舞台へ、Bチームとともに挑むことになったのだ。

四国大会敗退の悔しい思いを胸にBチームをサポートする元Aチームの3人

 

全国大会まで1週間!しかし…

この日は全国大会までおよそ1週間。本番を想定した走りで最終調整をしたいところだ。

しかし…。

ロボットとコントローラーの接続が切れたり、ロボットの足が上がらないなど、トラブル続出。

さらに、ロープを越えようとすると後輪の右側が引っかかりやすいという、操縦面での課題も見つかった。

この日の練習はここで終了の時間が来てしまった。

 

操縦担当
三上さん

現時点で完璧な状態になっていないというのは不安ですね。ただ、僕はもう操縦するだけなので、短期間でどこまで精度を高められるか。本番でベストを出せるように頑張ります。

回路担当
大原さん

あと数日でしっかり調整します。回路のせいで動かないというのはなくしたいので、大会当日に起こりうるトラブルを想定して、持って行けるものは全部持って行って対処したいです。

リーダー
片岡さん

本番は操縦者を中心に焦りが出ると思うので、リーダーとしてみんなを引っ張りつつ、落ち着いて臨めたらと思っています。ほかの部員などたくさんの人が支えてくれているので、いい報告を持ち帰りたいです。

 

 

5日後、ロボットは東京の会場に輸送された。

 

選手たちは勝負事に御利益があるという高知市の薫的神社を参拝し、全国の舞台へ旅立った。

 

運命の日 高知の熊が爪痕を残す

迎えた全国大会。
数日前の不安がうそのように、高知高専はものすごい勢いで敵を倒していった。

ロボットの中心には薫的神社の“勝守”

1回戦を危なげなく勝ち上がり、2回戦。
対戦相手は、地区大会を全国最多得点で通過し、優勝候補と言われていた、和歌山高専。

なんと、和歌山高専がトラブルに見舞われる中、落ち着いた走りを見せた高知高専が快勝した。多くの人が和歌山高専が優勢だと思っていた中、この日一番の番狂わせとなった。

準々決勝直前。一気に注目の的となった高知高専。

準々決勝は香川高専(詫間)との四国対決。互いにフルーツを乱獲し、目視では勝敗の判定ができないほどの接戦で会場を沸かせた。みんなが固唾を飲んで見守った集計の結果、高知高専が勝利をもぎ取った。

その後の準決勝では敗れたものの、高知高専は過去最高のベスト4入りを果たした。
強豪に勝ち、四国対決を制し、この日何度も会場を沸かせた高知高専は、間違いなく全国の舞台で爪痕を残した。

リーダー
片岡さん

悔しい気持ちもありますが、高知高専初のベスト4でしっかりと爪痕を残せたので、満足しています。多くの人の協力や応援のおかげでここまで来ることができ、本当に感謝しています。

たくさんのフルーツを食べた「fruity bear」は、まもなく冬眠に入った。
高知高専にとって“収穫”の多い大会となった、ことしのロボコン。
全国での経験を経て、来年はどんな成果を実らせるのだろうか。

 

高専ロボコン全国大会の模様は12月17日(日)午後1時50分~総合テレビで放送!

  • 佐藤 好

    高知放送局 スポーツキャスター

    佐藤 好

    もともとロボコンが好きで、ことしは四国大会のリポーターを担当しました。
    試行錯誤を重ね、作戦を立てて戦う様子はスポーツにも似ていて、毎年心を動かされます。

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