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『らんまん』牧野博士ゆかりの地 六甲高山植物園を訪ねてみた

神戸市の六甲高山植物園 牧野富太郎博士ゆかりの展示や植物
  • 2023年06月13日

『らんまん』主人公のモデル、牧野富太郎博士のゆかりの地、神戸市の六甲高山植物園を訪ねてみると、博士と関西の人物との関わりが分かる展示会が開かれていました。
(高知放送局 記者 野本宗一郎)

牧野博士と関西

高知県出身の植物学者、牧野富太郎博士と神戸の関わりは、大正5年に始まります。このころ、牧野博士は、研究に熱中するあまり生活が困窮し、研究者の命とも言える植物標本を手放すことも考えていました。

そこで名乗りを上げたのが神戸の資産家・池長孟です。池長が牧野博士の植物標本を買い取り、経済的な支援に乗り出したのです。さらに池長と博士は、「博士は、月1回は神戸の池長植物研究所に来て、研究する。池長は、月々、博士を援助をする」と取り決めました。これをきっかけに博士は、25年間、神戸に通うことになったのです。

池長孟と牧野富太郎(所蔵:川崎正悦)

池長をはじめとした博士と関西との関係について、詳しく知ることができる展示会が神戸市の六甲高山植物園で開かれていると聞き、訪ねてみました。

六甲高山植物園の入り口

園の映像館では博士と関係の深かった人物の写真や博士と交わした手紙などが展示されています。(展示は、2023/07/02まで)

こちらは、博士が六甲高山植物園で植物仲間に講話をした時の写真です。植物を前に座っているのが博士です。

牧野博士と植物仲間(所蔵:日下義彦)

日下久悦(くさか・きゅうえつ)

このうち、博士から反時計回りに2番目の人物が、大阪市の薬種業の日下久悦です。日下は、大阪山草倶楽部会員で、高山植物の栽培が趣味でした。好きが高じて兵庫県宝塚市に温室が併設された別邸も持っていたそうです。

晩年の牧野博士と日下久悦(所蔵:日下義彦)

日下は、博士が訪れた際には牛肉などでもてなし、自宅に泊めるほど仲が良かったそうです。 晩年、山を歩けなくなった博士は、以前、六甲山で見たフジが新種ではないかと思い、東京に送ってくれるよう手紙でたびたび頼んでいたということです。

牧野博士が日下久悦に送った手紙(所蔵:日下義彦)

川崎正悦(かわさき・まさよし)

博士から反時計回りに5番目の人物が、現在の灘高校の教諭・川崎正悦です。博士の弟子だったそうです。

川崎正悦(所蔵:森 和男)

植物に学名がつけられるように川崎も博士によって学名がつけられていたそうです。その学名は、「Dajarea Kawasakii Makino」。川崎がダジャレが好きだったことに由来しているそうです。

川崎正悦の名刺(所蔵:森 和男)

このほか、博士が親しい人だけに送ったとされる「結網帖」などおよそ200点を見ることができます。

博士が日下に送った結網帖(所蔵:日下義彦)

六甲高山植物園の植物とは

この展示会が開かれている六甲高山植物園は、標高865メートルの六甲山の山頂付近にあり、牧野博士ゆかりの植物以外にも街なかでは見られない珍しい高山植物も観察できます。

学芸員の三津山咲子さんに、園内の植物を紹介してもらいました。

三津山さん
六甲高山植物園は、標高の高い山で育つ植物の魅力を平地で楽しんでもらうために「ロックガーデン」と呼ばれる造園形式を活用しています。牧野博士ゆかりの植物も見ることができます。

ロックガーデン

この植物園のシンボルマークにもなっている高山植物の「コマクサ」は、日本の高山植物の女王と称されています。あざやかな桃色の花が素晴らしく、高山帯に行かなければなかなか見ることができない貴重な植物です。博士が属名を変えました。

コマクサ

また、高山植物の「ミヤマムラサキ」は、背丈が10センチほどのかわいい水色の花が特徴的です。
牧野博士が学名をつけました。

ミヤマムラサキ

六甲高山植物園のほかにも、博士がおよそ30年過ごした住宅の跡地にある東京・練馬区の牧野記念庭園や博士の標本およそ16万点を保管している東京・八王子市の牧野標本館など、全国には、博士ゆかりの地がたくさんあります。こうした場所をめぐって植物学の研究に一生をかけた博士の思いに触れてみるのも良いかもしれませんね。

  • 野本宗一郎

    NHK高知放送局

    野本宗一郎

    2020年入局
    全国の牧野博士ゆかりの地めぐりをしてみたいです

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