牧野富太郎博士の思いつなぐ 牧野植物園に新研究棟が完成
- 2023年05月25日
高知市の県立牧野植物園に、新たな研究棟がオープンしました。
キーワードは「開かれた植物研究」。一体、どんな施設なのでしょうか?
(高知放送局 記者 奥村敬子)
高知市の県立牧野植物園に「植物研究交流センター」が新たに完成し、今月20日、オープニングセレモニーが行われました。
高知県 浜田知事
「子どもたちがこの施設で植物に親しむ機会を得て、この施設から第2、第3の牧野博士が誕生してくれる、そんなことも期待している」
植物園に溶け込むよう段々畑をイメージした外観のこの施設。もともとあった「資源植物研究センター」の耐震性が不足していたことから、県がおよそ12億円かけてリニューアルしました。延べ床面積はおよそ1600平方メートルで以前の2.5倍の広さとなっています。
この新たな研究棟の愛称は「ラボテラス」。植物の研究を進めるだけでなく、研究者と来場者の交流を深める狙いがあります。
来園者も楽しめる施設に
「ラボテラス」には、新たにレストランも設けられました。植物園の四季折々の景色を眺めながら県産の旬の食材を使ったハンバーグや、白身魚などのランチを楽しむことができます。
また、ミュージアムショップもあり、植物学者、牧野富太郎博士が愛用した画材やルーペなども販売されています。
開かれた植物研究へ
新しくできた施設では、これまでは見学できなかった生薬の標本や、研究の様子を見ることができます。キーワードは「開かれた植物研究」。植物が私たちの生活にどう生かされているのか、広く知ってもらうのが狙いです。
牧野博士の時代は目で見て植物の種類を分類していましたが、現代ではDNAを解析し分類を行っています。こうして分類した植物を漢方薬などの医薬品や化粧品に活用しています。
植物から抽出したエキスを集めた「エキスライブラリー」もあり、2000種類以上のエキスが保管されています。牧野植物園は植物の分類の精度が高いことで知られています。「ラボテラス」を企業や研究機関により広く開放して共同研究を進めていくことを目指しています。
また、有効な成分が含まれている植物を安定的に栽培するための「栽培実験室」も新たに設けられました。ここでは光や温度などを制御できる機械を使って、さまざまな気候条件を再現し、植物が増える条件を調べます。こうした技術を絶滅危惧種の保全にも役立てる計画です。
未来の牧野博士を育てる
さらに子どもたちに植物への関心を持ってもらおうと、新たに「キッズラボ」と呼ばれるスペースもできました。
オープン初日、子どもたちが薬草を使った入浴剤作りに挑戦しました。こうした子ども向けの実験イベントも月2回開かれる予定です。
高知県立牧野植物園 川原信夫園長
「植物研究をひとつのツールと捉えていただいて、それを活用して、来ていただいたお客様であったり、いろんな方々と交流して語らっていただければありがたい」
おわりに
連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルとなった牧野博士は、植物分類学の研究を産業の振興に役立てることが重要だと説き、日本の有用植物をくまなく調査することを提唱していました。
そうした思いを引き継いだ新たな研究棟「ラボテラス」には、牧野植物園と共同研究を行っている企業の研究員も駐在し、研究のさらなる加速を図ることにしています。
「ラボテラス」をきっかけに植物研究の意義を知って、牧野博士の志を継ぐ人が増えることが期待されます。