幕末土佐の絵師 絵金が再び脚光!
- 2023年06月06日
幕末の土佐藩で活躍した絵師、絵金。高知県でしか見られなかった作品を一堂に集めた展覧会が大阪で開かれるなど、再び脚光を浴びています。絵金好きの記者が現地を取材。
(高知放送局 記者 澄田謙人)
絵金ってなに?
みなさん、絵金をご存じですか?
高知県にゆかりがあるという方なら、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。
幕末から明治初期にかけて活躍した異彩の絵師、金蔵の通称です。歌舞伎などの名場面を描いた芝居絵びょうぶなどで知られています。
絵金が高知県外でも人気に
高知県ではある程度、知名度のあった絵金ですが、1966年に雑誌『太陽』で絵金の特集が組まれたことをきっかけに東京や大阪のデパートで展覧会が開かれるようになりました。
そして、2020年に絵金をはじめとする江戸時代の奇才の絵師を紹介する展覧会が江戸東京博物館などで開催され、再び大きな注目を集めています。
大阪で半世紀ぶりの大規模展
再び絵金が脚光を浴びる中、ことし4月22日から大阪のあべのハルカス美術館で高知県内に残っている100点近くの作品を一度に鑑賞できる展覧会が開かれています。
これほど大規模な展覧会が高知県以外で開かれるのはおよそ半世紀ぶりのことです。
修復を終えたばかりのあの作品も
会場を入ってすぐに現れるのは「浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森」です。絵金の代表作の1つです。
このほど大規模な修復が終わり、初めてのお披露目がこの展覧会となりました。この作品は、首を切られた男性の血に絵金が得意とする「血赤」が使われていますが、今回の修復によって独特の色使いがより鮮明になりました。
東京から訪れた人
「絵金というのは、名前だということもわかっていなかったので、何なんだろうと思って何も予習せずに来たんですけど、とても楽しかった」
高知の夏祭りも再現
奥に進むとちょうちんの優しい光が会場を照らしていました。
江戸時代の仙台藩のお家騒動を描いた「伽羅先代萩 御殿」など高知市の朝倉神社に保管されている8点の「芝居絵びょうぶ」が展示されています。
ふだんは、神社の夏祭りの時だけ神社の参道に飾られていますが、会場ではその様子も含めて再現されています。
東京から訪れた学生
「単に絵を飾っているというわけではなくて、実際の祭りを思い起こさせるような展示が印象的だった」
絵金の奥深さを感じて
さらに奥に進むと、青白い光に照らされている空間が広がっていました。ここでは香南市のギャラリーに所蔵されている絵馬ちょうちんなどが展示されています。
注目は、安土桃山時代の盗賊、石川五右衛門の生涯を描いた「釜淵双級巴」です。24枚の連作で、釜ゆでの処刑にされた石川五右衛門の遺体を役人が処理する様子を描いた最後の1枚は絵金の創作だと言われています。人間の悲哀が描かれているのも絵金の作品の特徴です。
展覧会は大盛況
取材したのは5月9日。この日は平日でしたが、幅広い世代の人でにぎわっていて、関西だけでなく関東から訪れた人もいました。美術館によりますと、大型連休の期間中、連日1000人近くが訪れたということです。
大阪府八尾市から訪れた人
「高知県室戸市出身なので楽しみにしていました。色彩がすごくはっきりとしているし、表情の表現もすばらしかった」
あべのハルカス美術館では、開館当初からこの展示会を開催したかったそうで、担当の学芸員などが高知県内の神社を説得してようやく開催にこぎ着けたそうです。海外から訪れる人もいるなど予想以上の人気だということです。
藤村忠範上席学芸員
「絵金の本当によい作品を高知県内の神社の協力も得て集めることができました。
高知県内でもこれだけの数の作品を見られるのは珍しいと思うので、大阪に来る機会があったらぜひご覧いただきたい」
やっぱり絵金はすごい
高知県にゆかりがある方は絵金というとおどろおどろしいというイメージがあるかもしれません。その一方で、作品に「隠し落款」を入れるなど、遊び心のある表現もあり、見れば見るほどその魅力に引き込まれます。
この展覧会はことし6月18日まで大阪の「あべのハルカス美術館」で開かれています。5月23日からは一部展示品が変わっています。今まで絵金の作品に触れたことがある人も、そうでない人も一度訪れてみてはいかがでしょうか。