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空き家を減らせ!高知編

空き家率ワースト1位からの脱却
  • 2023年04月25日
  • 高知県庁に「空き家対策チーム」を設置
  • 地域をよく知るキーパーソンが空き家について学ぶ
  • 地図で色分け!地域の空き家の状態を見える化
  • キーパーソンが1軒1軒空き家の持ち主に相談
  • 空き家の持ち主と移住希望者をつなぐ「空き家マッチングツアー」を開催

高知県庁に「空き家対策チーム」を設置

総務省によると、2018年に全国の空き家は約850万戸あると発表しています。
高知県では、約5万戸。空き家率は12.8%で全国ワースト1位の数値です。
およそ8軒に1軒が、空き家という計算に…

一方で、住む家が見つからないと移住を断念する移住希望者が毎年200組以上います。
空き家はたくさんあるのに、住める空き家がないと、高知に魅力を感じてくれた人たちを受け入れられない状態が続いています。

深刻な状況を打開しようと、高知県庁は空き家専門の部署「空き家対策チーム」を住宅課に設置。住宅として使える空き家の確保に力を入れ始めました。さらに、移住促進課と連携。情報を密に共有することで、空き家をこれまで以上に移住希望者につなぐ動きが活発になっています。

空き家対策チーム長の藤田直さんに現状を尋ねました。

藤田さん

「見た目、空き家はいっぱいあるんですけど、実際住める使える空き家がない状態が県内の特に中山間地域で多く見られています」

地域をよく知るキーパーソンが空き家について学ぶ

まず、始めたのは、地域の人に空き家を理解してもらうこと。
空き家対策チームが各地域を周り、ワークショップを開きました。
この日は、中山間地域である津野町船戸地区で開催。

特に力を入れたのが、地域活動を熱心に取り組む「キーパーソン」の理解を得ること。
区長や支援員といった集落すべての人の顔と名前が分かる「キーパーソン」から、空き家の所有者に働きかけることが重要だと考えたからです。

まず、藤田さんが広げたのは、パンフレット。日本全国や高知県の空き家の現状に加えて、空き家には「売る」「貸す」「譲る」「家族で使う」「解体する」の5つの選択肢しかないことを伝えました。

5つの選択肢の中から決断したあと、どんな行動もとったらいいかも書かれています。

藤田さんは、このパンフレットを家族で見ながら、「空き家をこれからどうしていくのか」、
考えて欲しいと伝えました。
 

実際に勉強会に参加していた集落支援員の竹﨑美栄子さんに、感想を聞いてみました。

竹﨑さん

「もっと早くにこういうことを知っていたらよかった。
集落の皆さんにも知ってもらいたいので、今回来ていない人に伝えたいです!」

地図で色分け!地域の空き家の状態を見える化

次に、取り組んだのはそれぞれの地域にある空き家を確認し合うこと。
集落ごとの地図を広げ、「この家は空き家だよね?」「誰の持ち家?」などと話し合います。

参加者A

空いている家は確かにある。 けど、戻ってきて、たまに管理しているところは何軒かありますよね。

参加者B

2棟とも崩れている。 

参加者C

所有者は別ですか? 

参加者B

 知らないですが、別じゃないかな。

話すだけではなく、家の状態をひと目見て分かるように色を塗り分けます。
青色は、老朽化が激しく活用できない空き家。ピンク色は、まだ活用できる空き家です。

地域に住んでいる人でも、空き家かどうかわからない家が多いことに気づいたと言います。

参加者

「結構、空き家は、あるけど住めるところが少ないね。 貸したいけど、お盆と正月に帰るから、そのまま置いておこうと。そのうち東京で年がいって、それで順次住めないような状態になっている、そういう悪循環がある感じがしますね」

洗い出した結果、66の空き家があることが分かりました。
この1軒1軒を町から依頼を受けた地域のキーパーソンが空き家調査員として訪問。
所有者と相談して、活用へとつなげます。

キーパーソンが1軒1軒空き家の持ち主に相談

ワークショップから1か月半後、津野町船戸地区では、キーパーソンである竹﨑さんが空き家調査員として所有者を訪ねていました。

竹﨑さん

「おじゃまします!」

取材時には、3年近く前から、 空き家になっていたこちらの家。

竹﨑さんは、パンフレットを広げ、空き家の選択肢について説明し始めました。

相談の末、この空き家の所有者は、「貸す」という選択肢に決めました。
空き家を「貸す」と決めた所有者に、どうして貸すことにしたのか尋ねてみました。

空き家の所有者

「そうですね。船戸も寂しくなるきね。誰か来てくれる人がいたらいいです。
船戸は町っていわれて、はじめは家がどんどん建っていた。今では家がなくなって、寂しくなったね。 誰か来てもらえたらいいけどね」

その後、所有者は、家賃月1万円で空き家バンクに登録。
すぐに住む人が見つかりました。

竹﨑さん

「船戸地区で1軒も解体することなく、有効に使われる家が増えていったらうれしいと思い、私も頑張っています」

藤田さん

「地域の方は空き家がどこだっていうのを 分かってらっしゃるんで、 ネットワークを生かしていただきながら 空き家を掘り起こして頂いて、地域から空き家を減らしていくっていう活動を津野だけじゃなくて、他の地域にも広めていければなと思っています」

空き家の持ち主と移住希望者をつなぐ
「空き家マッチングツアー」を開催

去年1年間で高知県は、各地域のキーパーソンとつながり、空き家の認識が広がり始めています。今年度は、「空き家マッチングツアー」を実施する予定です。自治体が空き家の所有者と移住希望者を直接つなげ、実際の家を見ながら話し、お互いの了承を得て契約。これは、空き家の所有者にとって、どんな人が住むか分からない悩みを解消することに、つながると期待されています。

さらに、一部の市町村では、空き家の価格を簡単に算出できるシミュレーションソフトの導入を始めました。所有者が気になる、家の価値が短時間で分かるので、空き家をどうするか、決断しやすくなります。

空き家をそのまま放置するのは、誰のためにもならない。高知県は、これからも様々な方法に挑戦して、空き家の利活用を目指しています。
引き続きこの取り組みについて取材を進めていきます!

(この記事は、2022年11月11日放送、とさ金「こうち34の未来ー移住ー」の内容に追加取材を行い作成しています。)

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  • 柴田英徳

    高知放送局 ディレクター

    柴田英徳

    2021年入局
    高知県内の移住について取材。旅好きで県内各地を巡っています。

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