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アメゴの養殖が危機 デジタルで活路

高知県梼原町
  • 2023年03月03日

塩焼きだけでなく刺身もおいしいアメゴ。そのアメゴの養殖も担い手不足が課題となっています。そこで、養殖にデジタル技術を活用して効率化を図っていこうという先進的な取り組みが、高知県梼原町で進められています。
(高知放送局 記者 田中開)

江戸時代から続く養殖に危機

 

四万十川に流れ込む梼原川

清流・四万十川の支流が流れる梼原町。
江戸時代からアメゴの養殖が盛んで、川に放流したアメゴを求めて毎年多くの釣り人が訪れます。
しかし養殖の担い手の高齢化や、施設の老朽化で生産が落ち込み、ついに去年、長年続いていた放流が行われなくなる事態となっていました。

赤や青の斑点が特徴のアメゴ

こうした中、事業の再生に手を挙げたのが、地元の集落活動センターです。
県の実証事業として、デジタル技術を活用して効率的に養殖を行う取り組みを去年秋から始めました。

デジタル技術 養殖にどう生かす?

県の職員などが養殖場を視察

2月に行われたのは、県や市町村の職員をアメゴの養殖場に招いた視察会。
養殖に取り組む集落活動センターの担当者が説明しました。
アメゴが短期間でふ化できるよう、養殖場ではヒーターを導入した上で水温や水量をセンサーで管理していて、その情報は遠隔で確認できるということです。

ことしふ化したばかりの稚魚

いま育てているのは、たね親として残っていたアメゴから繁殖させた稚魚です。
大きさはまだ数センチですが、デジタルを活用した温度管理により、従来に比べてふ化までの期間が10日ほど短縮できるようになったといいます。今後は成長に応じて、水中の酸素濃度やエサの量もセンサーで管理できるよう、準備を進めています。

温度をデジタルで管理

デジタル活用の恩恵はほかにもあります。
水温などを確認するために養殖場を1日に何度も訪れる作業の必要が無くなるほか、データを分析すれば、生育に適した環境を把握することができ、養殖の効率が上がると期待されています。

集落活動センターでは、これまで3年サイクルだった、ふ化から出荷までの期間を、2年に短縮することで収益性を高め、アメゴの養殖を持続できる産業に育てていこうとしています。

目標は若手も挑戦しやすい環境づくり

集落活動センターでアメゴの養殖を担当している、中越貴史さん。
これまで熟練の経験と勘に支えられてきたアメゴの養殖ですが、今後は経験が浅い若手でも挑戦しやすい環境を作っていきたいと話します。

集落活動センターおちめん 中越貴史さん
「川の上流近くで行う必要があるアメゴの養殖以外にも、山間部でしかできない事業の多くが存続の危機に立っています。デジタルを活用することで若い人が地元に定住して、こうした事業の担い手になってくれれば、山間部の産業を維持していく流れができていくと思います」

養殖場のスペースも増設が始まっている

順調に育っているという養殖場のアメゴ。ことし6月には、2年ぶりにおよそ6万匹のアメゴを放流する予定で、来年には成魚の出荷も目指しているということです。
江戸時代から続く人気の「梼原アメゴ」。新たな風が吹き始めています。

  • 田中開

    高知放送局 記者

    田中開

    2018年入局
    高知局で遊軍担当
    バーベキューの炭火でじっくり火を入れたアメゴやアユが好物
    ただ釣りは海がメインです

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