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相次ぐ高齢ドライバーの事故 その対策はどうすれば?

  • 2023年08月04日

相次ぐ高齢ドライバーの事故…
その対策は?

高齢ドライバーの操作ミスによる事故が後を絶ちません。
“そうは言っても車は生活の足だ”という方も多く、
すぐには手放せないという声も聞きます。

どうすれば事故を防げるのか。対策を紹介します。

この記事のポイント!
① 操作ミス なぜ起こる?
② 衰えの自覚が必要「運転技能検査」
③ 事故を未然に防ぐには
  (1)安全運転サポート車
  (2)急発進防止装置
④ 最後は自身の選択で

操作ミス なぜ起こる?

2023年2月 行橋市の事故現場

ことし2月に行橋市で起きた事故。建物に車が突っ込み、
入り口のガラスが大破しています。

車を運転していたのは74歳の女性でした。
警察の調べでは、「アクセルの踏みすぎ」を理由に挙げ、
「慌ててハンドルを操作したら、誤った方向に進んでしまった」と話したといいます。

このような高齢者の操作ミスによる事故は、なぜ起こってしまうのでしょうか。

長年、福岡県警の交通部門で勤務してきた黒木郁子次席は、“認知機能”“運転技能”という2つのキーワードを挙げています。

勝海記者

そもそも“認知機能”“運転技能”は運転にどんな関係があるのでしょうか?

黒木次席

▼認知機能は、適切な判断ができるかどうか。例えば道路標識を正しく
認識して、判断できるかどうかに関わります。
▼運転技能は、加齢に伴う身体機能の衰えによって、運転技能が低下していないかどうかに関わります。
運転技能が低下すると踏み間違えたときに瞬時にペダルを踏み替える
ことができません。

勝海記者

どちらも大切なんですね。

黒木次席

そのとおりです。これまで高齢者の免許更新では認知機能だけをテストしてきました。でもこれまでの事故を分析したところ高齢運転者による死亡事故の約6割認知機能に問題がなかったんです。

黒木次席

そこで去年から全国で始まったのが『運転技能検査』。自分の衰えを自覚してもらいながら、運転技能をテストする取り組みが始まりました。

「運転技能検査」で衰えの自覚が必要

「運転技能検査」が導入されたのは2022年5月。対象は
交通違反の記録がある75歳以上のドライバーです。

検査の内容は、一時停止や右左折など基本的な運転を行うというもの。同乗する検査員が採点します。

減点方式で合格点は70点以上。下回ると再検査の対象になり、合格するまで免許の更新ができないという仕組みです。

取材では、実際に検査を終えたばかりの75歳の男性に話を伺うことが出来ました。
この男性の採点結果は50点。再検査の対象になりました。

検査を受けた
75歳男性

検査で一時停止線を越えていると指摘されましたが、そんな感覚はありませんでした。衰えていますね。動作が遅くなっていることを実感しました。

事故を未然に防ぐには

衰えを確認したら、それにあった対策をとることが重要です。ここからは、その対策について具体的に紹介します。

(1)安全運転サポート車 

“97%”
新車に自動ブレーキがついている割合 (2021年)    (日本自動車工業会)

新しい車に自動ブレーキがついている割合は非常に高く、「安全運転サポート車」と呼ばれています。障害物を検知して自動ブレーキが作動し、アクセルとブレーキの踏み間違いの事故などを防止します。

今、販売されている新車はこの自動ブレーキ機能がついていることが当たり前になりつつあります。

ネッツトヨタ北九州 最所孝太さん 
「アクセルとブレーキを踏み間違えることに対しての不安を聞く機会は多いです。障害物を検知して自動でブレーキをかける安全運転サポート車は、そういった不安を抱える人たちをサポートできる車です。積極的に選んでもらえれば事故は減ると思います」                                          

 (2)急発進防止装置

「それでも、今から買い替えるのは予算が…」と考える方もいるのではないでしょうか。実は車を買い替えなくても後付けで出来る対策もあります。それが自動車用品店などで販売されている“急発進防止装置”です。

低スピードで走行中に、急にアクセルを踏み込むと装置が作動して、強制的にアクセル信号をカット。急発進を防止します。(※対応車種・適合車のみ取り付け可能。)
 

装置を取り付けた男性

ニュースで踏み間違いの事故を見て、自分も何か対策をしたいと思って取り付けました。新車に買い替える余裕はありませんでしたが、これは思ったより値段も高くないし自分にもできるんじゃないかと思い取り付けることにしました。

急発進防止装置の設置にかかる時間は60分程度

最後は自身の選択で

ここまで事故の対策について紹介しました。

しかし、最後は自分で運転するかどうか判断する必要があるとして、福岡県警の黒木次席は次のように話します。

黒木次席

まずは体の状態を知っていただきたい。動きが鈍くなったとか、視力が落ちたとか、運転に少しでも支障が出てきたら安全運転相談係が警察署や運転免許試験場にいるので、相談してほしい。

1人1人抱える事情は異なります。運転を続けるのかやめるのか、運転免許証を自主返納するのかなど、家族と話し合って判断してほしい

行政は、運転免許の自主返納を後押しする対策も進めています。

例えば、福岡県飯塚市では、運転免許証を返納すると、タクシーの乗車券や市内の巡回バスの交通回数券、ICカード乗車券といったサポートが受けられます。

このほか、北九州市では、運転免許証を返納したときに受け取ることができる「運転経歴証明書」を提示をすることで、▼タクシー料金10%割引き▼電動自転車の割引▼飲食店でのドリンク無料などのサービスを受けることができます。(※対象店舗に限る)

まとめ              

相次ぐ高齢ドライバーの運転操作ミスによる事故。自分は大丈夫と思ったり、生活する上で車を手放せないなどそれぞれ事情はあるかもしれません。しかし命より大事なものはありません。自身の運転技能などを定期的に見直し、
▼「安全運転サポート車」への買い替え
▼「急発進防止装置」の購入
▼「運転免許証の自主返納」など、
自分にできる対策を検討してみてはいかがでしょうか。

  • 勝海光太朗

    NHK北九州放送局 記者

    勝海光太朗

    北九州に来て1年
    事件・事故の取材を担当
    祖父母も80代の高齢ドライバーです。

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