花粉症 初期治療、重症治療、根本治療

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花粉症鼻水が出る目がおかしいのど

花粉症の初期治療

花粉症の初期治療

花粉症の治療で重要なのは「初期治療」です。鼻の粘膜の炎症が軽く、荒れていない時期に治療を開始することで、薬の効きが良くなり、重症化を防ぐことができるからです。初期治療の中で日本で最もエビデンスがあり、よく使われているのが「抗ヒスタミン薬」と「鼻噴霧用ステロイド薬」です。抗ヒスタミン薬は、アレルギーを引き起こすヒスタミンの作用を阻害して、くしゃみ、鼻水、皮膚の腫れ、かゆみなどの症状を抑えます。一方、鼻噴霧用ステロイド薬は強力な抗炎症作用でアレルギーによる炎症を抑え、鼻づまりにも効果があります。最近の鼻噴霧用ステロイド薬はほとんど体に吸収されないため、全身的な副作用は少ないとされています。一方で、ステロイドの筋肉注射という治療が行われることもあります。効果はありますが、糖尿病や緑内障を発症する、注射した部位の筋肉が萎縮するなどの重い副作用を生じることが報告されていて、現在では花粉症の治療としてはすすめられていません。また、抗ヒスタミン薬には強い眠気を引き起こすものもあるので注意が必要です。

長期処方やリフィル処方が可能に

現役世代の通院の負担を軽減する目的で、花粉症の薬の長期処方リフィル処方が可能になりました。リフィル処方とは1回出してもらった処方せんで3回まで薬を出してもらえるという制度で高血圧・糖尿病など長期にわたる薬の服用が必要な疾患で認められています。

市販薬の注意

花粉症を持つ会社員の約40%が市販薬を使っているという報告があります。ただ、市販薬の中には注意が必要なものもあります。たとえば血管収縮薬成分を含む点鼻薬は即効性があり、よく使われている薬なのですが、効果がなくなると、リバウンドしてかえって鼻がつまってしまい、鼻づまりが強くなることがあります。また、抗ヒスタミン薬の市販薬のなかには強い眠気を引き起こすものがあります。一方で最近はこうした副作用を抑えた抗ヒスタミン薬も登場していますので、よく確認して使うことが必要です。

重症の花粉症治療 抗IgE抗体療法

花粉症重症の治療

標準的な治療を行っても10-20%の患者さんには治療効果が十分に出ないことがあります。また、無治療であったり、不十分な治療では、多くの人が重症化すると言われています。1日のくしゃみ発作が11回以上、鼻かみ回数11回以上、鼻づまりによる口呼吸が1日のうちかなりの時間ある、このいずれかがある場合は、重症の花粉症だとみなされます。
重症の場合の治療では、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬を組み合わせて使う併用療法抗IgE抗体療法が行われます。抗IgE抗体療法は、薬剤を注射して、花粉症を引き起こすIgE抗体をブロックし、アレルギー反応を抑える治療です。1回注射を打つと数日で効果が出て、2週間から4週間、鼻、目、ほかのアレルギー症状を抑える効果が続きます。ただし、抗IgE抗体療法にも注意点があります。まず費用が高いこと。患者さんの体格やアレルギー体質の状態によって薬の投与量が変わりますが、投与量が多い場合、健康保険で3割負担の場合でも数万円かかるケースもあります。また、抗IgE抗体療法の対象となるのは、内服薬や点鼻薬などの治療をしても効果が不十分だった重症以上の人で、なおかつ現時点では12歳以上に限るという条件があります。

根治が期待できる「舌下免疫療法」

舌下免疫療法

舌下免疫療法は今までの薬剤とは違い、アレルギー体質を変える根本的な治療法です。アレルゲンを含む錠剤を1分から2分ぐらい舌の下に入れます。成分がゆっくり溶けて体内に入ることで、体がアレルゲンに慣れていき、体質を少しずつ変えていくことができます。1日1回、毎日継続して服用する必要があり、根本治療に至るまでに最低でも3年は必要とされています。この治療は花粉が飛んでいる時期には開始することができません。スギ花粉症であれば、花粉が飛んでない大型連休明けから秋くらいの間に治療を開始します。
舌下免疫療法は重症のぜんそくがある人は使用できません。重症ではなくてもぜんそくのある人は症状が悪化することもあります。また、こう原病などの治療で使われる全身性ステロイド薬を使っている人などは、舌下免疫療法が効きにくいことが報告されています。妊娠している人、高血圧などの治療で使われるβ遮断薬を服用している人にも注意が必要とされています。

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