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北陸鉄道石川線 存続へ 背景に2024年問題 バス転換(BRT)見送り

  • 2023年08月30日

金沢市と白山市を結ぶ北陸鉄道石川線について、財政的な支援を求められている沿線の市長などは、バスに転換する案を見送り、鉄道として存続させることを決めました。鉄道として存続させる場合、公金が投入されることになる見通しですが、それでも決断せざるを得なかった大きな理由は深刻化する人手不足でした。
(金沢放送局 記者 松葉 翼)

※映像も視聴できます(2023年9月30日まで)

北鉄石川線 存続が決まる

北陸鉄道石川線は赤字が続いていて、支援を求められた沿線の自治体などが、鉄道として存続させる案と「BRT」と呼ばれる専用道路を走るバスに転換する案を中心に議論してきました。

2023年8月30日、沿線の市長や馳知事などが参加して、今後の方針を決める会議が開かれ、事務局を務める金沢市から、「鉄道として運行を続けることが望ましい」とする案が示されました。その理由としては、「BRT」に転換した方がコストは抑えられるものの、運転手を確保するには既存の路線バスを大幅に減便する必要があることが挙げられました。この案に対して参加者から異論は出ず、鉄道として存続させることが決まりました。

石川県 馳知事

公共交通の維持や活用は重要だと捉えている。県としては補助金の適用などについて国と調整する役目を担いたい。

金沢市 村山市長

高齢化が進むと予想される中、公共交通はまちづくりに欠かせないと考えている。鉄道としての存続が決まった以上、利便性の向上に力を注ぎたい。

今後は赤字の縮小が大きな課題で、沿線の自治体などは2023年中に支援のあり方や公金投入の規模について案を取りまとめることにしています。

バスの運転手が足りない…

石川線は、年間90万人近くが利用する生活の足ですが、収支は慢性的な赤字です。北陸鉄道の経営を支えてきたバスの利用者がコロナ禍で急激に減り、北陸鉄道は沿線の自治体に支援を要請しました。そこで検討されたのが「BRT」と呼ばれるバスに転換してコストを抑える案です。

BRTは信号の少ない専用道路を走るバスです。赤字路線を廃止した場合の有力な代替交通として全国で注目されています。ただ、石川線をBRTに転換するには大きな壁がありました。深刻になっているバス部門の運転手不足です。緊張を伴う長時間労働や待遇が敬遠され、なり手を確保できないというのです。

金沢市とその周辺では、2022年9月末の時点で定員の9割にも満たず、残業が常態化していたといいます。それを是正するため、エリア全体で1割ほど減便せざるを得なくなりました。

そこに追い打ちをかけたのはいわゆる「2024年問題」による人手不足です。2024年4月から、運転手の残業時間や勤務間のインターバルに対する規制が強化されます。早朝や夜間の運転手のやりくりが難しくなるのです。試算の結果、石川線をBRTに転換した場合、その運転手を確保するには最大で1日200便を減らさなければならないことがわかりました。

残業規制が厳しくなることは、働く運転手にとってはよいことだと思います。一方、必要最低限のダイヤを維持していくには、厳しい状況になると思います。(北陸鉄道 髙橋航 自動車部長)

決断迫られる自治体は…

石川線の今後について話し合う金沢市交通政策課

北陸鉄道から支援を求められている自治体は、決断を迫られました。自治体が負担することになる維持・管理の費用などは、BRTより鉄道の方が大きくなりますが、石川線を存続させる以外に選択肢はありませんでした。今後、市民に理解を得られるかどうかが大きな課題です。

費用が安いBRTを運行しようとしても、運転手が確保できない状況では実現は出来ません。鉄道やバスをふだん使わない人もいらっしゃると思いますが、様々な背景を持ったみなさんのご理解を得ながら、大量輸送機関としての公共交通を維持していく必要があると思っています。(金沢市交通政策課 近藤陽介 課長)

赤字ローカル線のバス転換は困難に

専門家は、赤字ローカル線のバス転換は全国的に難しくなると指摘。公金の投入を含めた交通事業者への支援を拡充すべきだと話します。   

公的な資金に対して民間の特定の会社に投入することはいかがなものかという議論がありましたけど、そういっていられるような状況ではないと思います。単なる赤字補填では無く、人手不足の解消や利用者の増加につながるような税金の使い道を交通事業者と自治体が一緒になって考えていく必要があります。(計量計画研究所 牧村和彦 理事)

  • 松葉翼

    NHK金沢 記者

    松葉翼

    2020年入局。
    金沢放送局で交通の取材を担当。

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