与論島の星空観光 海と並ぶ代表的な観光へ
- 2024年04月04日
海の観光地として全国から観光客が訪れる、鹿児島県最南端の与論島。海と並ぶ代表的な観光資源となることを目指して、星空観光を島全体で推し進めています。その動きを取材しました。(鹿児島局 齋藤湧希)
鹿児島県最南端の与論島。夜には数多くの星が夜空にきらめき、南十字星が見える国内最北限の島とも言われています。
島では、数年前から星空ツアーとして、島の美しい星空を観光資源として生かす取り組みに力を入れています。
観光地として夏場は透き通った海が人気の与論島。50年ほど前の観光ブームでは年間15万人が訪れ観光施設などの開発が進みました。しかし、その後観光客が落ち込み廃虚となっているところもあります。そこで与論島では、いまある資源を活用した観光を模索していました。
麓)与論島は美しい海を楽しむということで夏はお客さんが非常に多いんですが、冬場がやっぱりオフシーズンになってしまうということと夜になかなか楽しめるものがない状況でした。
与論島は高い建物や山がなく空を広く見渡すことができるほか、街灯や車が少なく空が暗いこと、またハブやイノシシなどの獣がいないため夜でも安心して観察できるなど、星空観光に適した環境とされています。
さらに、島ではさらに星空観光に適した環境を整えようと、一部の街灯を空に光が漏れにくいものに改良しました。
島のリゾートホテルでも、屋外のライトを下向きのものに変更しました。島全体で星空観光に向けた環境整備に取り組んでいます。
環境省が令和3年に行った調査の数値では全国で最も星が見えやすいことが示されました。
星空ガイドの橋本康宏さんは、10年以上前にホテルの従業員として働くため埼玉県から移住。
与論の星の美しさに驚いたといいます。
プラネタリウムに行っても寝てしまっていたような何も星のことを知らない人間だったんですけど、仕事で星を見る機会があって、そのときに「なんだこれは」って。
橋本さんは2021年に星空ガイドの資格を取得。去年は1年間で250人ほどの観光客を案内しました。しかし、年々星空ツアーの参加者は増えているものの、常時ガイドとして動ける人は島全体でもまだ数人です。
星空観光を認知させにいっているのにツアーに参加できないっていうのが楽しみに来てくれる方に失礼にあたると思うので、常にちゃんとガイドとして動いている人が10人前後はいてほしいと思っています。
そこで地元の人たちに向けて観望会を開催し、島の人たちに星空への興味を持ってもらいながら
ガイド経験の浅い人の練習の場としています。
さらに橋本さんは、与論オリジナルのガイドにも挑戦しようとしています。参考にしているのは、天文観光を研究している和歌山大学の調査結果です。島の漁師が星に独自の名前をつけ、それを頼りに時間や方角、漁のタイミングを読み取っていたことなど調査でわかった星の伝承文化をガイドに盛り込めないかと考えています。
和歌山大学でも、こうした取り組みに期待しています。
尾久土教授)非常に豊かな星の伝承が残っている場所だということがわれわれの調査で分かりましたので、観光の中でそういう話を伝えていくことでガイドを通じて文化が残っていくと思っています。
星空観光の取り組みが評価され、与論島は去年10月に、オランダの国際認証団体から「持続可能な世界の観光地TOP100」に選ばれました。与論島では今後PRを行い星空が海と並ぶ与論島の代表的な観光資源となることを目指しています。
現状では、観光は海がメインで、海に入りに来たら夜に星空ガイドもやっているっていうふうに海におんぶにだっこ状態の観光のツアーなので、追いつき追い越せができるところまでいきたいなと思っています。