ゆっくり、聞く
- 2024年04月02日
シリーズ「被災地はいま」。テーマは、避難者の心のケアです。
能登半島地震の被災地で、ケアチームのリーダーとして支援にあたった精神科医の堀切靖医師に、金子晃久記者が現地の状況や鹿児島でも備えておくべき課題について聞きました。
避難した人が抱える不安
堀切医師がリーダーを務めた姶良市にある鹿児島県立姶良病院のDPAT=災害派遣精神医療チームは、第1陣として1月11日から15日まで活動しました。
石川県輪島市と珠洲市に入り、被災者の診療や医療関係者が集まる指揮所で情報収集などにあたりました。避難している人はどのような心理状態だったのでしょうか。
眠れなかったり、不安が強かったり、余震が起こるたびに地震のことを思い出して不安になる人もいました。精神的な病気がある人もいたし、悪化傾向になる人もいました。
堀切医師は避難所や自宅に向かって診療にあたりましたが、なかには、将来への不安から「死にたい」と漏らす人もいたといいます。
30分から1時間くらいかけてゆっくり話を聞いて、本人の困りごととか、どうやったら解決するかを一緒に考えていきました。「いつ、この災害から復興できるのだろうか」「自分の住んでいる街が今後どうなっていくんだろうか」。そういう不安だったのだろうと思います。
診療は車で向かいましたが、道路はところどころで寸断し、活動時間を確保することは簡単ではなかったといいます。
1、2時間で行けるところが、5、6時間かかりました。道路状況がよかったら、もう少し回れたのかなと思うし、本当であれば避難所を全部見て回ることができたらと思いました。
2次避難の必要性
この経験を通して感じたのが「2次避難」の重要性です。移動がしやすい地域に避難してもらえれば、
限られた時間の中で、より多くの人に診療できるようになると感じています。
地震の影響がないところまで避難所を設けて避難していただければ、避難者もよりよい生活が送れると思うし、医療を届けることもできるかなと思っているので、2次避難はけっこう大事だと思います。
ただ、2次避難は思うように進んでいません。石川県内では、1月31日の時点で1万4000人あまりが避難している一方、被災地から離れたホテルなどに2次避難している人は、3割程度にとどまっています。
災害に備える重要性
鹿児島県も、薩摩・大隅の半島があり離島や山間部が点在しています。堀切医師は、県内でも同じような災害が起こった場合、2次避難をどう進めるのか検討しておくことが重要だと指摘しています。
例えば、薩南方面だったら鹿児島市まで避難してもらう。大隅半島だったら鹿屋市内まで避難してもらう。そういうシミュレーションはできると思います。実際起こってみないとどの道路がどう被害を受けるかわからないので、シミュレーションはなかなか難しいと思いますが、できる範囲でやることは意義があると思います。
堀切医師は、指揮所での情報収集にも携わりました。県外の医療チームが次々に派遣されてくるなかで、人員をどう配置するか、迅速な判断が求められる場面が多かったといいます。鹿児島でも、災害が起きた時に県外からの支援をどのような体制で受け入れるのか、検討していく必要があると話していました。