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“直接避難”できるように

「福祉避難所」現状と課題
  • 2024年03月25日

シリーズ「被災地はいま」。1月23日からおよそ2週間、石川県珠洲市や能登町で取材した熊谷直哉記者が「福祉避難所」について解説します。

どうする?配慮が必要な人たちの避難

「福祉避難所」とは、避難所での生活に配慮が必要な高齢者や障害者などを対象に開設される避難所です。トイレや階段などのバリアフリーが徹底されていたり、介護用品が備蓄されていたりすることなどが一般の避難所との違いです。

能登半島地震では、この福祉避難所が課題となっています。石川県の奥能登地域では、建物そのものに被害が出て、職員も被災していることから、発災から1か月がたった2月1日時点で、確保されていたうちの38パーセントしか福祉避難所が開設できていませんでした。
 

 

介護が必要な母親の末子さん(右)と息子の竹中秀次さん(左)

支援が必要な高齢者とその家族の例を紹介します。珠洲市の竹中末子さんとその家族は、地震で自宅の壁が崩れ、敷地内では地割れも起きていました。応急危険度判定で「要注意」と判定されました。いったんは一般の避難所に移りましたが、その後は家で過ごしていました。末子さんの介護があるからです。末子さんは要介護度が「3」で自力で歩くことが難しく、トイレや入浴などの介助が必要です。新型コロナなど感染症の不安もあり、一般の避難所での生活は負担がより大きくなるというのです。

 

竹中秀次さん

福祉避難所があったらすごく助かります。少しだけでも福祉避難所に預けることができれば私もいろいろ動けるし、素人が介護しても大変だから、ケアがしっかりしているところに避難できたらいいなと思います。

 

福祉避難所は2種類あります。1つ目が、高齢者施設と協定を結んだりして開設する「福祉避難所」です。この場合、支援が必要な人は、まず一般の避難所に避難します。自治体の職員が施設側に状況を確認するとともに、避難所にいる人の中からより支援が必要な人を選びます。そして、施設に避難してもらいます。これだと、通常2、3日以上はかかります。

2つ目が「指定福祉避難所」です。あらかじめ要支援者の中で受け入れる対象の人が決められていて、事前に「指定福祉避難所」がどの施設なのかが公表されています。個別の避難計画などをもとに対象者は家族などとともに直接、避難することができます。「指定福祉避難所」は、これまでの災害で「配慮が必要な人が一般の避難所で過ごすのが困難だった」という声があがり、3年前、災害対策基本法が改正されてできました。

ポイントはまず、事前に施設など指定して公表し、対象者も決めておくことです。そのうえで、地域ごとに細かな違いがありますが、直接、福祉避難所に行けるようになっていることです。

「指定福祉避難所」開設の課題

鹿児島県内の状況を取材すると、「指定福祉避難所」の指定に課題があることがわかりました。1つ目のタイプの「福祉避難所」については、県内ほぼすべての市町村が確保しています。

課題が見えたのが、事前に公表される「指定福祉避難所」です。県内43市町村のうち、指定しているのは21で、半数以上の22の市町村では指定を行っていないことがわかりました。例えば、鹿児島市や日置市で指定されていないほか、高齢化率が50パーセントに迫る南大隅町などでも指定されていないのです。その理由を担当者に聞いたところ、指定福祉避難所に指定すると公表が求められるため、「対象になっていない人も避難してきて混乱を招く可能性がある」とか「対応できる職員の数にかぎりがあり、すぐに受け入れ態勢を取れるかわからない」といった声が聞かれました。

 

日本大学危機管理学部の鈴木秀洋教授

いったん一般の避難所に行って福祉避難所に移るまでの2、3日のあいだに体調を崩すことも考えられます。自治体はどのように対策していけばいいのか、災害弱者に詳しい日本大学危機管理学部の鈴木秀洋教授は、「基本的に場所が移るということは障害者や高齢者はなかなか難しい直接避難ということが大事だ」と話しています。

そのうえで、鈴木教授は自治体が課題としてあげているような混乱が生じないようにするために、事前に、誰がどこの福祉避難所に行くべきかを明らかにすること。そして、1つの市町村だけで対応が難しい場合は、ほかの自治体と協力して広域でバックアップ体制を整備することの2点を求めています。
 

日本大学危機管理学部 鈴木秀洋教授
事前にマッチングをしておけば、自治体の中でどういう人が高齢者で通常いろんなケアサービスを受けているかとか、障害者でもどのようなサービスを受けているか、ある程度、把握できているので、そういう方たちは通常の避難所ではなくて福祉避難所という形での事前の指定をしていけます。広域の福祉避難所だと県外も含めて考えていかなくてはならなくて、事前に協定を結んでおくとか、どこに移るとかそういった事前の計画が必要です。

今回の取材で被災地では、そもそも「福祉避難所の存在自体を知らなかった」という声を耳にしました。自治体がマッチングなどをより進めれば、こうした周知にもつながります。配慮が必要な人が、安心してすぐ避難できるよう、取り組みを加速させていくことが大切だと思います。

  • 熊谷直哉

    NHK鹿児島放送局 記者

    熊谷直哉

    2020年入局 事件・事故や経済を担当。

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