“伝統を必ず復活させよう”
- 2024年04月03日
シリーズ「被災地はいま」。1月19日から22日まで石川県輪島市や七尾市の能登島で齋藤湧希アナウンサーが被災の状況を取材しました。
津波で被害 作付の見通し立たず
七尾市の能登島沿岸では、津波によって田んぼが被害を受けました。水が流れ込み、発災から20日たった時点でもゴミや浮きなどが残っていました。海から200mほど離れた田んぼも、排水パイプを逆流した海水が広い範囲でつかり、地元の農家の人たちからは塩害の影響が出ないか心配する声が聞かれました。
さらに、田んぼに水を送るポンプに亀裂が入って水が送れず、ことしの作付の見通しがたたない状況でした。
また、火災や建物の倒壊などで大きな被害を受けている輪島市を訪れました。輪島市まで、被災前は車で金沢から1時間45分ほどでしたが、発災直後は5、6時間ほどかかっていたということです。私が取材した1月20日の時点では車で3時間半ほどでした。発災当初より交通状況はよくなってきているようでした。
ただ、輪島市内に入ると、発災から3週間あまりがたっても倒壊して手つかずのままの建物が残っていました。倒壊した家屋で道路がふさがれ車が通れない状態になっているところも数多く見られました。
壊滅的な被害受けた伝統産業は
日々の暮らしだけでなく、伝統産業も壊滅的な被害を受けていることがわかりました。
国の重要無形文化財に指定されている石川県の伝統工芸、「輪島塗」を製造・販売する漆器店を訪れました。江戸時代から続く老舗です。
地震で漆器店の中は壁がはがれ、扉も倒れた状態です。通路の奥に漆を塗る工房がありますが、完全に通れなくなっていました。この地震では、輪島塗のほぼすべての職人が被害を受けているということです。
「大崎漆器店」の店主、大崎四郎さんによりますと、輪島塗は、器を作る職人、漆を塗る職人など大きな工程ごとに専門の職人から職人へとつないでいく“分業制”となっています。大崎さんは、これまで一緒にやって来た人たちと「必ず輪島塗を復活させようと言っている」と話していました。
輪島市の酒蔵も被害を受けました。江戸時代から続く酒蔵では、建物が崩れたり、タンクが倒れたりするなどの被害を受けました。
「白藤酒造」の蔵元、白藤喜一さんは「輪島は伝統的なものが多く残されている町です。復興したときには伝統的なものが、より魅力的に映るようにしたい。皆さんにまた来ていただけるような町になるように、焦らずにがんばります」と話していました。