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8・6水害 | 武之橋 崩落

橋に親しんだ理髪店店主の証言
  • 2023年07月20日

30年前の8・6水害。甲突川が氾濫し、市民に親しまれてきた石橋の武之橋が崩落しました。テレビニュースの映像などで、当時衝撃を受けた方も多いかと思います。武之橋の橋のそばで育った男性の証言です。(動画はこちら

(鹿児島局記者 松尾誠悟)

五石橋として長く市民に親しまれ

「過ぎてから感じたのは梅雨入りぐらいから晴れた日がなかった」

あの日も橋の上から甲突川をながめた

あの日も雨の影響で客足が鈍かった折田俊也さんが営む理髪店。鹿児島市の武之橋の近くで、父の代から60年以上続けています。1993年8月6日、武之橋の周りには、いつもと違う光景がありました。

折田さん

店の前の道路に車が詰まって並びだして動けなくなりました。『なんでかな?』と思ったら、高麗町側が水につかっていて、渡れないから車がたまりだしたんだなってことに気がついて、変だなという感じでした。

肥後の石工を招いてつくった石橋の武之橋

武之橋は150年近く前に肥後の石工を招いてつくられました。甲突川にかかる五石橋のひとつで、長く市民に親しまれてきた石橋です。橋の近くに住む折田さんにとっても、思い出のある橋でした。

折田さん

子どもの時代からここにいますから、対岸の砂地に飛び降りるとかですね。川にさおをおとしてうなぎ釣りとか、子どものころはしょっちゅうやってましたよ。

橋で聞いたことのない音が

川の水が武之橋の欄干に迫る勢いだった

その武之橋の異変をあの日は感じていました。店を出て橋の上で息抜きをしていたとき。折田さんはこれまでにない音を聞いたと振り返ります。

折田さん

相変わらずお客さんが来られないから橋の上で、水をながめていて、そのうち橋の隙間っちゅうんですかね。水位が上がっているから枯れ草とか流木がひっかかって、ゴトンゴトンと音がしたんですよ。

見回りの消防隊に橋から下りるよう促され、店に戻った折田さん。その直後に事態が急変しました。消防隊が電話を貸してほしいと、店に飛び込んできたのです。消防隊がどこかに通話をするなかで「橋が崩れた」と聞きました。折田さんも慌てて外に出て、橋を見に行くと江戸時代から続く橋がなくなっていて、信じられない思いだったといいます。

石橋の武之橋が無残な姿に
折田さん

アーチがひとアーチぐらい残っている感じですよね。真ん中らへんが全部崩れていて、やっぱりショックではありましたね。目の前にあった有名な橋ですから。

ほかの石橋も流失

幼いころからなれ親しんできた武之橋は、無残な姿に変わり果てていました。甲突川の五石橋は、武之橋のほかに新上橋も流失。昔ながらの橋が耐えられる量をはるかに上回る水が押し寄せたためでした。残った3つの橋は移設され、石橋記念公園などとして整備されました。撤去をめぐる議論を経て、昔ながらの風景をいまに伝えています。

武之橋が崩壊する直前に避難し、間一髪で難を逃れた折田さん。雨のシーズンを迎えるたびに、あの日の教訓を思い出すといいます。

折田さん

その後、いたるところで同じような災害が起こりましたよね。なかなか防ぐのって難しいのかなって思います。うちの母がよく言っていたのが“雨ふいに出てさるくな”ってことばです。出てさるとほら、災害におうどって。慣れんところに出かけるよりは、安心できるところにいたほうがいいのではないかと思います。

8・6水害特設サイトもご覧ください

NHKは8・6水害の特設サイト“わするんな(忘れるな)かんぐっど(考えよう)”を立ち上げました。   (↓リンクはこちら↓)

あの日、何が起きたのか。同じような災害が起きたとき、どうすればいいのか。自分自身や友人、家族、大切な人を守るために必要なことは。8・6水害を語り継ぐ特集のほかに、身を守るためのさまざまな情報を掲載しています。ぜひご覧ください。
 

  • 松尾誠悟

    NHK鹿児島放送局 記者

    松尾誠悟

    2020年入局。災害担当のかたわらスポーツや医療など幅広く担当。大学時代は学生記者でアメフトなど8つのスポーツを取材してきた。ギョーザとビールを愛する25歳。

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